第4話 1895年日本に転生しました・3
悠ちゃんの大学生活は順風満帆のようだわ。
ロシアやスロヴァキア人達との交流を深めているようね。
ただ、この時代はボルシェビズムの活動も盛んだわ。近づく人間を間違えるとマークされるから気を付けないとね。
一方の私もブリンマー大学に行くことになったわ。
日本人としては五千円札津田梅子も通った、アメリカ女子では名門大学ね。
ペンシルヴェニア大学から数キロと距離が近いのが良いことだわ。
この時代のブリンマー大学には、これというキーパースンはいないわ。
だから普通に「凄い」と思わせることにするのが得策ね。
彼女達は基本的には上流階級の御婦人となっていくはず存在。そうした存在に「日本人のとんでもない女子がいる」と思わせるのは損ではないはずよ。
「この論文はこういうことを説明しているのよ」
「ひぇぇ、物理も哲学も難なくこなすミス・ニイイは天才です」
「こんな凄い人は見たことないわ」
「日本にはこんな女の子ばかりいるのかしら?」
そうだと良いのだけどね。
残念ながら女子教育という点では日本はイマイチよ。
1914年、大学に入って2年目にサラエヴォ事件から第一次世界大戦がはじまったわ。
「何かすることはあるの?」
「1917年までやることはないわ」
「1917年というとロシア革命が起きる年だね」
「そうね」
この年の10月革命で帝政ロシアは完全に倒れ、ボルシェビキが支配するソ連邦となっていくわ。
これはこれで一大トピックでもあるけど。
「ロシアとソ連も特に相手にしなくていいわ」
「いいの? 日本にとっても結構大きな存在だけど?」
「厄介な相手ではあるけれど、行動パターンが読める相手でもあるのよ。それに、『都合の悪いことは全部ボルシェビキのせい』って持っていくこともできるから、変な相手に変わるくらいならレーニンやスターリンの方が良いわ」
レーニンやスターリンは膨大な研究がされているから、性格面も含めてよく分かっているわ。それを利用してうまく距離をとる方が良いわね。
「そんなにうまくいくかなぁ?」
「もちろん、モスクワに住んでいれば毎日ガクブルでしょうけれど、幸い私達がいるのはソ連ではないわ。離れて付き合う分には安全でしょ。もちろんソ連の人には気の毒だけど、誰がトップにいようとあの国はああいう組織になってしまうのだから諦めてもらうしかないわね」
まずは大学の卒業に専念ね。
1916年に大統領選挙があるから、そこで東欧・ロシアの有志とともにウッドロウ・ウィルソン陣営と近づいて、この後の戦争の展開を言うとともに、今後のキャスティングボートを握るのよ。
「展開というと?」
「アメリカが第一次世界大戦参戦を決めたのはルシタニア号の沈没と、ドイツ外相アルトゥール・ツィンマーマンがメキシコに送った電報にあるのよ」
この電報には、メキシコに対米参戦を願うとともに、日本にもアメリカを攻撃してもらうよう頼む内容が書かれていたのだけど、イギリスが察知していたのね。
で、これをオープンにしたことでアメリカが怒ったというわけね。
「このあたりの内容を早いうちにウィルソンに伝えて、あと二、三個何かしら戦況を言い当てたら『こいつは頼れる』と相談されることになるわ。勝負はそこからで、パリ講和会議までの間に決めてしまうのよ。だから準備期間はともかく、変えるために実質必要な期間は3年なのよ」
「それで大丈夫なのかなあ?」
悠ちゃんは不安がっているようね。
「大丈夫なのよ。これから説明するわ」
ということで、次回はドイツのことを説明することになるわ。
正直、ちょっと長いけれど、これが理解できればドイツがどうしてヒトラーを受け入れたのか腑に落ちると思うわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます