番外編・ナチスドイツとユダヤ人

※入れると言いつつ忘れていました(汗)



 最後に、ナチスドイツとユダヤ人の話もしておくわ。


 アドルフ・ヒトラーがオーストリア系ドイツ人だった、という話はしたわよね。オーストリア帝国内にあった彼のドイツ意識が、元々のドイツ地域とは若干異なっていて、それが第一次世界大戦後のドイツ人には受けたということを。

 実のところ、ユダヤ憎しの意識もまた、オーストリア帝国から持ってきたものなのよ。


 オーストリア=ハンガリー帝国の中には多くの地域があり民族も多彩だったという話は既に見たわ。

 彼らは自分達の土地を大切にし、仲間を愛し、帝国内の他の民族と競り合いながら少しでも自分達の地位を良くしたいと帝国に陳情しつづける日々を送っていたのよ。


 そんな彼らからすれば、帝国内をフラフラ動き回り、金稼ぎに精を出している(ように見える)ユダヤ人は憎たらしい存在だったわけよ。

 土地もないから他民族に縛られることもなく、儲け話があればやってきて、うまく持っていかれると。都合のいい特権階級のように見えたのね。


 ということで、帝国内のほぼ全ての民族はユダヤ人が大嫌いだったのよ。

 その代表例が有名なカール・ルエーガー・ウィーン市長ということになるわね。ヒトラーも彼の影響を受けていたと自認しているわ。


 そうした経緯があるから、ヒトラーは権力を採ると当然反ユダヤの政策をとることになるわ。

 ただ、当のドイツには反ユダヤという意識はなかったのよ。

 もちろん、好きということもなかったけれど、ドイツではドイツ人が支配的、ドイツ人以外はユダヤ人含めて全部が外国人なわけよね。敢えて区別する必要もなかったし、意味も分からなかったようね。


 哲学で有名なウィトゲンシュタインの家もユダヤ系で、彼らはヒトラーに便宜を図ってもらってアメリカに行こうとしたのだけど(成功したけど結果的にかなりの財産を取られたわ)、そのためにはベルリンに行く必要にあったのね。

 ナチスの巣窟たるベルリンだから、ユダヤ人はどんな目に遭うのかと思いきや、ウィーンの方が余程酷かったって言っていたらしいわね。

 こんな言葉もあったらしいわ。

「ドイツ人は一流のナチスだが、反ユダヤはお粗末なものである」

「オーストリア人はナチスとしてはお粗末だが、彼らは一流の反ユダヤである」


 既に見たようにドイツ人が求めたのはヒトラーがくれる大ドイツの夢だったのよ。

 ユダヤ人に恨みはなかったし、ドイツ人よりは東欧の方が、あるいはロシアの方が余程酷かったみたいだけどオーストリア出身者に政権を任せた結果、副次的な形でついてくることになったわ。

 そういう意味では気の毒と言えなくもないけど、それも含めて選んでしまったのだから仕方ないとも言えるわね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る