第30.5話 未来を覗けないから直感は時に雄弁に秘密を語る。
時に俺は、
それはあの日確かに世間一般的に騒がれる勝ち組で無くなった今も顕在する気持ちで、今後この評価を変えるつもりもない。
例え常人ならざる執着心を以って無遠慮に断罪するサングラス姿の少女に出会おうと、例え確かな芯と知識を引っ
俺は自分を過小評価も過大評価もしない。
だからその認識を俺より優れた才を持った彼女たちにではなく、普通の模範生たる生徒会長に歪まされることになるとは思ってもみなかった。
「シュガーさん俺は確かめたいことができたから生徒会室に寄ってくよ」
「そう…………私は先に帰るわ」
そう残しシュガーさんは俺に背中を見せる。
先程の言い淀みと今から向かう先で決定付けられただろう俺が会長に抱いた疑念に彼女は言及することなく、俺に逃げ場を与えないようにか何も語らず俺との距離を遠ざけた。
「勘が鋭い、か……」
一人となった俺はカップル爆散同好会と出会い何度か言われた言葉を思い返す。
俺をそう評価した彼女たちには悪いが俺は俺を勘の鋭い人間だとは思っていなかった。
普通に人と向き合えば至れる結論であると度々嘆いていた。
しかし妃衣花火の思惑の通りに動いたこれまでの活動の中では感じえなかったそんな自己評価も何の偶然か独立した自分の考えを提示しろと言われた今回だからか芽吹いてしまった。
俺は勘が鋭いのかもしれないと。
「勘が鋭いというよりかは疑り深いだけな気もしなくはないが」
俺が図らずも小岩戸さんの地雷を踏み抜いてしまった違和感の正体、
俺が自身の違和感を
被害者である小岩戸さんがそう言えば加害者がどう思っていようと関係のない話というのは置いておいて、全てを改めて考え直した時俺にはどうしてもXがストーカーであるという前提に疑問を抱かずにはいられなかった。
そもそも俺たちの始まりは会長から聞かされた事件の概要からで、会長がそう話したからXをストーカーとして追っていた。
だがもしも先に小岩戸さんから話を聞き、あのメモと変わらぬXの行動を聞かされていたら俺はきっとXの存在を厄介なファン――そう定義付けしていたと思う。
小岩戸さんには生徒会で起こったとされる憤慨を再発させてしまいそうだが。
すなわちそれは生徒会長が何のためか俺たちに秘密を作ったたという憶測であり、これが馬鹿げた妄想だという烙印を押すために俺は思考しそれらしい仮説を立てた。
だが残念ながらそれらこそが見当違いだった。
「ほんと、今日会った誰かであってほしかったな」
俺が急増で建てた仮説に穴があって調べ上げられていない候補が存在する可能性は十分にある。
だが俺は会長のLINEで結論を勝手に決めつけて生徒会へと向かう。
一言で言うならこれは勘だ。
俺の直感が、違和感の先の存在を示している。
俺が俺を常人と評価していられるかはこの扉の先にいるであろう男子生徒との会話ではっきりするだろうが俺はその答えを既に知っている気さえする。
何故なら俺は鋭いらしいから。
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