第5話 同好会のメンバー
作戦決行は二日後の月曜日の放課後から。
かなり多くの学校へ出向く必要があるため開始は早い方がいいとのことらしい。
アポや細かい調整は今日と明日で佐藤さんがすると
「悪いな面倒なことに巻き込む形になって。妃衣は自分に正直すぎるから結構強引に周囲を引っ張るところがあるんだ。彼女も彼女なりに考えてのことだろうし大目に見てくれ」
「いえ、自分がやりたくて参加したので会長が謝ることじゃないですよ」
「そう言ってもらえると助かるよ」
一通り会議を終えた俺たちは二手に分かれて部室? からの脱出を試みている最中だ。
女子組である妃衣さんと佐藤さんは二回の女子トイレの用具箱の奥につながっているという通路へ、男子組の俺と
物凄い地下構造だが利用しても大丈夫な施設なのだろうか。
「質問なんですが会長はどうして同好会に参加しているんですか? やってること結構グレーなんで生徒会との両立って難しいと思うんですが」
「そもそも同好会として認可されていないから形式上は参加も何もないのは置いといて、基本は首を突っ込まずに彼女たちの行動が行き過ぎないように監視するためとトラブルが起きた時の責任を取れるようにだな」
「それって……黙認せずに却下するという手もあったのでは?」
出口までのそこそこ長い抜け道を歩く途中俺はそんな疑問を投げる。
「それは俺も単純に興味があるからだな。生徒会長と言っても高々高校生なんだよ俺も。それに教員の人も一部の人は知ってるぞ」
他でもない生徒会長と先生も認知してGOサインを出しているなら問題ないのだろう。
いや、同好会としてすら認可されていないのなら問題か。
「せっかくなのでもう一つ質問いいです?」
「おう、もちろん大丈夫だ」
「この地下施設って何なんですか? 通路も結構歩いた感じあるんですけどまだ着かないですし」
階段にはしごなどかなりの距離を歩いても目的地に着かない不安感に質問をする。
地下とはいえ学校の敷地内にこんな隠された施設があっても大丈夫なのだろうか。
「これな……あんまり詳しくは知らないんだが、」
会長は嫌に神妙な顔になり言う。
暗闇にスマホのライトだけで歩いているため余計に考えた顔に見えているせいかもしれないが声音もさっきよりもワントーン低めだ。
「佐藤の実家がどうのこうのって聞いてる。あいつの家超裕福だから。爆散同好会が高校生らしからぬ調査レベルに至っているのも彼女の家柄は大きい」
佐藤さん凄い人だった。
初見で別の意味で凄い人認定してしまったことを心の中で謝罪する。
「この同好会は妃衣と佐藤が中心メンバーだからなぁ。二人とも成績も物凄くいいから何かあったら俺なんかよりもきっと頼りになるぞ」
「いや、そこは頑張って張り合ってくださいよ生徒会長」
「耳が痛い……」
初めてまともに会話した生徒会長は俺のイメージよりも砕けた人でとても話しやすい。
犬にデレデレのところも異性から見たらきっとギャップとして良い要素なのだろう。
「やっと着いたな。ちょっと中確認するから待っといてくれ」
「分かりました」
そう言い見慣れてるであろう部屋へ先行した会長の合図を待って俺も通路からの脱出に成功した。
「それにしても長かったですね、通路。毎回こんな道通ってるんですか?」
「だいたいそうだな。基本は妃衣が出入りの指示をしてるから今回の
そうして一息つくと手元のスマホに通知が出る。
『各自解散してお帰り頂いて大丈夫です。本日は御足労いただいてありがとうがざいました。』
相変わらず几帳面な文面だ。
硬さを感じるメールのすぐ後には『凍てつく炎』と描かれたスタンプが送られており、俺もありがとうございましたと軽く挨拶の分を送る。
「じゃあ解散するか。俺はまだ生徒会室で仕事していくから三永は気を付けて帰るんだぞ」
「了解です。会長もお疲れさまでした」
何だろう。ここの会話だけ切り取ればまるで生徒会メンバーにでもなった気分だ。
実際は非公認の怪しい団体の密談なのだが。
そうして初めて入った生徒会室を抜け校門へと向かう。
行き道でも感じた視線にも晒されながら学校を離れると帰宅のため駅のホームまで足早に進んだ。
「どうしたのですかフューチャー? そんなに急いで」
「あぁ~俺を噂する視線に耐えられなくて……。あとフューチャーってなに?」
同じく電車を待つ眼帯少女、
普段からあのまんまだと言った妃衣さんのことを疑っていた訳ではないが、そうか……本当だったようだ。
「何とは……あなたも存外油断なりませんね。自分の
俺の真名ってフューチャーだったんだ。初めて知った。
花火でフレイ。未来でフューチャー。なるほど、これ以上は突っ込まない方が余計なトラブルを増やさなくていいだろう。
「えと……シュガーさんでいいのかな? 同じ方向だったんだね」
「順応が早い。君は見込みがある」
どうしよう俺見込みがあるらしい。あんまり嬉しくない。
「あ。電車来た」
無理やり会話をシャットダウンさせると俺たちは電車に乗り込む。
こういう時ってどのくらいの距離で座ればいいのだろうか。満員だったらよかったものの休日の昼間ということで空席は至る所に存在している。
俺とシュガーさんは二人分ほどの席間を開けるという何とも絶妙な距離感で座るとその後下車駅まで会話が起こることはなかった。
「じゃあまた学校で」
「え、あにゃ。うん、じゃなくて……えぇ。再開を楽しみにしているわ」
閉まったドア越しの赤面する少女の姿がこの数日のドタバタを吹き飛ばし俺に可愛いという安易な感情をもたらしたのは説明する必要もないだろう。
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