EX 可変式三段弁当
カップル爆散同好会の正式メンバーとして初めて臨んだ爆散の翌日、既に周りは中間テストのムードとなり始めていた。
「伝説を覗くならその者の
「なるほど。さっぱりわからん」
例には漏れず俺も中間テストの対策に望んでおり、今は昼休みの1年2組で昼食の片手間に日本史の勉強中だ。
先生役はシュガーさん。
昨日の別れ方はちょっとだけ意味ありげだったがLINEで勉強を教えてほしいと頼むと快く受け入れてくれた。
成績優者らしい彼女に頼めば間違いないと思っていた俺はさっそくその考えが甘かったと思い知らされる。
「感は鋭いのに伝承に触れるのは苦手…………」
「暗記科目は苦手なんだよ……。国語とかは得意だぞ結構」
入学時点で恋人にデレデレで自覚できるぐらい最初のグループ分けでハブれた俺は腐れ縁の
「未来、次は佐藤さんなのか?」
不躾な奴め。
俺は分かりやすく眉を寄せる。
本人がいる前で聞いてくる内容でもないし、この間からこいつの脳にはピンク色しか含まれていないのだろうか。
「お前なぁ、いいかげん俺を女性なら誰でもいい野獣かなんかだと思うのは止してくれ。不快だ」
「怖い怖い。ほんの冗談だって」
軽口を叩く早海にシュガーさんは興味ありげな様子。
そういえば彼女たちは一回だけ面識があったか。
図書室へ占い師を探しに行った放課後俺たちはこの三人で行動していた。
「フューチャーがこんなに悪感情を隠そうとしないのは初めて見たわ。あなたもしかして地獄の従者だったりする?」
「そんな大それたものじゃないよ。俺は安立早海。こいつ……フューチャー君のダチだよ、よろしくね」
こちらをニマニマと見ながら挨拶を交わす早海。
勘違いしないでほしいがその真名は勝手に呼ばれているだけだ。
「私はプリンセス・F・シュガー、またの名を佐藤姫華。よろしく」
「面白いセンスだな。未来が気に入ったのも頷ける」
二人ともかなりのマイペースなせいで話が混線したまま続いている。
新しい玩具を見つけた子供のような笑顔を見せる早海と、構文を言い切り満足げに眼帯を主張するシュガーさん。
忘れないでほしい、これは勉強会だ。
「早海。お前が入ってきたせいで脱線した。お前は黙ってろ」
「つれないな。折角仲良くなれそうだったのに」
席が隣なだけで今はお呼びじゃない友人に制止命令を出すと俺は彼女との勉強会を再開しようとする。
時刻は13時を回っている。
クソ。無駄話のせいで昼飯と勉強会を両立する余裕が無くなったではないか。
「昼休み終わっちゃうしご飯食べよっか。シュガーさん、また勉強見てくれる?」
「構わない。眷属を躾けるのも私の役目」
そういえばそんな設定も追加されていたな。
勉強道具をしまうと彼女は運動部顔負けのドデカイ弁当を机に出した。
「何それ……」
「でっけぇぇぇ」
三段に積まれた黒の弁当箱は、庶民の俺には似つかない高級感と重厚感が漂っている。
これを一人で食べているのか……。
「昨日料理に意識を集中しすぎた結果」
「作りすぎたんだとしても全部持ってこなくても……」
理由はあったようだが一体どうやって食べきるつもりなのだろうか。
俺と共に珍しく引き気味の早海はそんな疑念の目を向けている。
当のシュガーさんは何故か得意げな顔で弁当箱を崩すと中からは湯気が立ち込める。
「まさにパンドラの箱。業火を留めることが可能」
まさかこれを見せつけるために作りすぎた料理を詰め込んできたのか。
やはり凄いなこの人は。
「ハハッ。本当に面白いね。佐藤さんが良ければ今後も一緒にお昼を食べたいところだよ」
「そんな唐突n」
「別にいいですよ」
熱気によって姿を変える三段弁当のおかずを許可なしにお裾分けしてくるシュガーさんは俺に被せてそう返す。
「マジ!? 高校生活も二か月が終わってずっと未来のお世話ってのもあれだったから嬉しいぜ。楽しくなりそうだな」
「クラス違うけどいいの?」
俺は意外な返答をしたシュガーさんに再度確認する。
弁当のおかずを渡し続けながら構わないと一言添えたシュガーさんはどこか嬉しそうにも思える。
こうして急展開も急展開で奇妙な三人組の昼食連合が形成されたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます