第31話 妄言の答え合わせ
これで何度目だろうか。俺は他とは違う気品を
「どうぞ」
事前に軽く連絡をしておいたおかげか中の生徒会長は急遽用を持ち出した俺を認知するように二つ返事で承諾する。
会長には誰にも聞かれぬ場で確認したいことがあると言っておいたので彼が俺が知る以上の意地の悪さを持ち得てない限りは中には
「失礼します」
周辺には今はいない大衆の目を気にするように今更の礼儀作法で部屋へと入った俺を会長は歓迎する。
「いきなり確認したいことがあるって話だが、何かあったのか? 妃衣にならまだしも俺個人と相談とは何やら怪しい匂いがするがな」
俺が会長と対面する椅子に座るのわ見るやそんな白を切る。
思えば同学年の妃衣さんとシュガーさんと比べて一つ距離の置いた位置にいた気のする生徒会長は俺には見抜けない表情で俺に疑問の意を見せつける。
だから俺は直球で会長に俺の違和感をぶつけることにする。
「単刀直入に聞きます。会長、Xの正体を教えて下さい」
言葉通りの単刀直入。
自身の直感を頼りに至ったXと会長が無関係ではないという結論をそのまま口から空気に溶け込ませる。
それを聞いた会長は驚くように、あるいは覚悟していたかのような表情で思考の自今を作るため押し黙る。
「それは少々言葉足らずが過ぎる気もするが」
「存外的外れでないって反応が全てだと思うんですが」
ノラりと
開幕、俺の質問に対して知らぬ存ぜぬの構えを取らなかった時点で俺の妄想は俺の中で確信に変わった。
一呼吸以上の静寂が漂う生徒会室の空気は寄り道を視野に入れていない俺の直線的行動が生み出したものだ。
「はぁ~~。すまんな、こういった空気間は俺も得意じゃないんだ。やはり真似ようとしてもそううまくいくものじゃないか」
数秒前までの空気間に耐えかねたのか聞こえるように溜息を吐いた彼は続ける。
「いつ、というよりどうして俺が怪しいと思ったんだ?」
それは会長自ら告げた俺の盲説への肯定で、現時点をもって所謂自他ともに認めるというものへと昇華された。
白旗を上げるかの如く両の腕を上げら答える会長からは俺を欺こうといった雰囲気は感じ取れない。
だから俺もありのまま俺の思考回路が辿った順路を説明する。
「まず最初に変だと思ったのはXの動機と行動の差異です。俺は自分で語った仮説は持ち込まれた情報下では結構いい線言ってたと自画自賛できますが、それだとするならXの行動は中途半端すぎる。悪意で小岩戸さんに被害を被ってほしいのなら、何というかやってることが間接的に彼女のためになっている件が多すぎる。こういう言い方が適切かは分からないけどもっと彼女にダメージを与える方法なんていくらでもあったように思える」
俺の独り言に会長は違うとも言わず茶々を入れることもない。
それを勝手に肯定と捉える俺は確認するように言葉で会長を確かめる。
「Xの動機が悪意でないのなら何が行動原理なのか。これは前にも言いましたがただ好きの押し付けなら唐突にその行動を止めたのがおかしい。では何かと考えた時に思い浮かんだのがXはもっとシンプルに小岩戸さんのためを思って行動していたのではないかという説。口に出せば意外と思い至っても不思議じゃない仮説だと思います。会長が最初に俺たちにXがストーカー犯だと教えていなければ」
俺たち5人はXが悪意を持って行動しているという前提で常に動いていた。候補の調査も護衛という大層な役割もそのためだ。
疑う理由もなかったしどうであれ小岩戸さんは精神的に被害を追ったのでXは良くて偽善者なわけだが、以前のままの思考なら決してXに辿り着けはしないのだ。
「確かに三永の言う通りだ。だが俺が最初にストーカー犯と揶揄したのがたまたまだったり俺の勘違いの可能性もあるだろ? 何故そこを怪しんだんだんだ?」
会長が自虐するように最初はたまたまかとも思った。
だが、生徒会長小陽洋介がたまたまで生徒をストーカー犯だという訳がない。そんな信頼とは違う何かが俺に会長を疑わせた。
「カップル爆散同好会なんていう危険団体に属している理由に生徒会長の責任を挙げるげている人物が、確証もなく生徒を悪人と成している姿を見たくなかったってところですかね。正直俺にもよくわかりませんが、Xと会長が共犯関係かもしれないという疑念に少し期待していたのかもしれません」
何だそれと言いたげに瞬きしながら驚きを見せる会長は、それでも数刻後には未だ見たことのない声量で腹を抱えて笑っていた。
そして彼も言った。三永未来は鋭いと。
「まさか三永にそんな風に期待を向けられていたとは知らなかったよ。確かに悠々と見当違いな犯人探しを
俺自身も俺が会長に抱いた気持ちが何なのかは言葉に表しにくい。
聞こえのいい様に期待と言って見せたがその本質はもっと我儘で一方的な押し付けな気もするがそれさえも生徒会長は許容してしまう。
俺は鋭いのではなく相手にこうであってほしいという目を向けているに過ぎない。
やはり自己評価は変える必要はなさそうだと、改めて結論立てるのだった。
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