EX 同好会入会手続き
夕暮での
因縁もあった竿だけ竿待ちの爆散を終えた俺はカップル爆散同好会の部室へと赴いていた。
「じゃあ、一応この書類に目を通してくれるか」
軟式野球部部室からの地下通路へと
手書きで書かれたそれはいつか見た爆約と似た筆跡で、一目で誰が書いたのかが想像できた。
「妃衣さん。俺って今後も爆散に参加するの?」
カップル爆散同好会への入会の手続きのためのそれを渡されて素直に聞いてみる。
前件の参加はあくまでも妃衣さんの思惑と俺の関係性からなるもので、これまで俺は自分を同好会の一員と名乗ったことはないしメンバーもあえてそう振舞っていなかったように見える。
全く考えていなかったわけではないが、いざ書面で進展を見せつけられると何とも感慨深いものがある。
「私たちは歓迎ムードですよ。三永君は我々には足りないツッコミポジションに最適ですし、能力面で見てもかなり及第点です」
「あ、ツッコミ力を期待されてるのね」
及第点か……結構いい役回りだったと思っていたがちょっとショックだ。
手元の紙は正式に認可されている同好会が利用する加入同意書と同じもので、ただ黙認されているだけのここに必要なのかは疑問が残るが生徒会長目線でもそれらしい手続きを行っているということが大事らしい。
「貴方は私の左腕となる存在……この場で儀式を行うのもまた運命」
俺ってシュガーさんの左腕だったらしい。不便ならその包帯ほどけばいいのに。
頭の中ではそんな言葉を返して見せたが、ツッコミ要因と言われてホイホイとそれに乗っかるのも癪なのでそこで留める。
「何だ、俺も生徒会長ではあるからこういうのはしっかりしておかないといけないんだ……ゆさぴょん~中々顔出せなくてごえんね~」
「生徒会長がペット連れてきてるのはいいんですか?」
直近のシゴデキぶりに忘れていたがこの人も大概だった、そういえば。
「正式に加入してくれれば爆約もここのマニュアルでは無くてちゃんと三永君用の物を用意しますよ」
「凄い、全然そそられない……」
次から次へと雪崩れ込むジャブに思わずカウンターを返してしまったが、確かにこの同好会はツッコミ役が不足している。
だからといってそれを請け負いたいとは思わないが。
俺の返事を待つように静まり返った部屋でもう一度三人を見返す。
「分かったよ。カップル爆散同好会、入会させていただきます」
一ミリも否定される気のないような三人の自信に満ちた顔に俺は根負けする。
正直断る理由もなく、彼女らとの数日は確かに楽しかった。
正式加入で何が変わっていくのかはまだ分からないが高校生のうちに少しぐらいはっちゃけておくのも良い思い出だろう。
「ありがとうございます! 早速なんですが次のターゲットの話を初めていきたいんですけど、」
「本当に早速だな。俺が断ること考慮してなさすぎない?」
「だって、三永君は断らないでしょう?」
一体その自信はどこから出てくるのか。
俺は彼女たちとの計りえない距離感にむず痒い思いを覚えながら書類に自分の名前を記入するのだった。
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