第41話 合宿一日目の終了

――作戦会議をしましょう

 大胆にも男子部屋に直接やってきて俺だけを呼び出したのは神奈先輩。それぞれの部屋に分かれ休憩を取り、夕食を頂くため一階にある食堂へと向かおうとしていた時だった。


「神奈が三永を呼び出し。そんな接点あったか?」


「小陽君には話せへんことだよ~~。内緒のお話」


 隠す気も無く小陽先輩を目の前に密談を持ち掛けた神奈先輩につられて俺たちは関係者のいないであろう外まで出ていた。


「夏やとまだ明るいから助かるね~~。ご飯の時間までやし話聞いてくれる~~?」


「まぁ聞くだけなら」


 ここまで付いてきておいて話は聞きませんと言えるわけもないので俺は知人の恋模様について聞く覚悟を決める。


「それならまず質問。男の子の三永君から見て~~、小陽君は恋愛に興味があると思う~~?」


「全く興味がない事はないんじゃないんですか。どちらかというとそういった話題好きそうな感じしますし」


 この質問になんの意図があったのかは分からないがそのまま思ったことを答える。

 先輩も健全な男子高校生なわけだから無欲ということはないだろう。


「ウチもそう思うよ~~。じゃあ、小陽君は麗ちゃんの告白をOKすると思う?」


 ドンドンと踏み込んだ話題に足を突っ込んでくる神奈先輩はどこか妃衣さんと似た強引さがあり、俺に答えの強要をしてくる。

 他の同級生ならいざ知らず、同じ生徒会の後輩からの告白を生徒会長小陽洋介が受け入れるとは思えない。

 

「まず間違いなく断ると思います」


「それも同意なんよね~~。だから相談はここから。生徒会の一員としては告白が失敗してどちらかが居辛くなるような雰囲気にはしくたないの~~。だからどうしたら遺恨なく解決できるかなって~~」


 話は分かったが最後の一番重要な部分を丸投げされても正直困る。

 前述のとおり小陽先輩は間違いなく小岩戸さんから告白をされれば断るだろう。

 見えている結果のために小岩戸さんに告白の決行を留まってもらうような説得をすれば彼女も勘付いてしまうかもしれない。


「小岩戸さんが告白をする決意を固めてるならどうしようもない気がするんですが」


「そうだよね~~……」


 助っ人からは助言を貰えず神奈先輩は思わず眉をひそめた。

 神奈先輩からしても八方塞がりなのには変わりないらしく俺たちの密談は花を咲かせない。

 何も案を出せないまま夕食の時間が迫ってきた俺たちは個人間の連絡のために連絡先だけ交換すると館内へと戻った。


「小岩戸さんがいつ告白するかとかは聞いてるんですか?」


「最終日だよ。妃衣ちゃんの予定表にも書いてあったけど~~、最終日の花火大会で告白するつもりだって」


「じゃあまだ時間はありますね。俺も色々と考えてみます」


 小岩戸さんと接点が多いわけではないため彼女がいかにして小陽先輩に惹かれていったのかは分からないが、出来ることなら上手く事が収まってほしい。

 俺は妃衣さんの耳に入れば真っ先に爆散へ持っていきそうなこの案件をどうにか穏便に済ませる方法を模索することしかできないでいた。

 

「随分と長話だったな二人とも。もう料理来てるぞ! 凄い旨そうだ」


 俺たち二人を認知しても意識のほとんどが夕食に釘付けの小陽先輩は俺の心労など気づいてすらいないだろう。

 ここでテンションの上がっている小陽先輩を責めるのはお門違いもいいところだが、この後何知らぬ顔で爆散の説明を一緒に受けると思うとぼろが出そうで怖い。

 どうやら俺は考えが顔に出るタイプらしいから。


「皆さん揃ったことだしいただきましょうか」


 この合宿の発起人の合図とともに考え事は一時忘れて箸を進める。

 悲しきかな……あまり味がしない…………。

 折角の夕食を堪能しきれなかったのも束の間、一日目の予定を入浴を残すだけとなった俺たちはとうとう爆散の会議へと移った。


「入浴時間も決まっていますので手短に」


 昼間と比べてすっかり調子の戻った妃衣さんは同好会メンバー四人だけの男子部屋にて会議を始める。

 既にシュガーさん以外は知っているターゲットの話を終わらせると今後の進め方についての提案を持ち掛けた。


「この件に関してはこれまでの学生間のトラブルで済んでいた内容とは逸脱していて、黒の場合私たちだけでは対処できないです。ですので最初に森中先生からも言われたのですがあくまで黒かどうかを判断するまでに留まります」


「それがいいだろうな」


「私と三永君は今日二人の仲を見ることができませんでしたのであれなんですが、お二人はどう思いましたか?」


 確かめられなかった事実の共有のため妃衣さんは質問をする。

 俺も店主さんとはまだ会ってもいないので気になるところではある。


「爆散の話を聞くまで意識して見ていなかったからな……俺の目には何か恋愛感情的なものがあるようには見えなかった。普通に仲の良い先輩後輩って感じだったな。後単純に忙しかったし」


「私にも特別な関係には見えなかったわ」


 つく必要のない嘘をつくはずもないので実際二人の目には北川先生と店主さんの間に恋愛感情があるようには見えなかったのだろう。

 あくまで森中先生の依頼は仲の確認で本当はそんな昼ドラ展開は気のせいなのかもしれない。


「そうですか。明日からは私も確認できますし、二人ともそういう目を向けられます。三永君も参加しますし何か新たに気付くことがあるかもしれませんね」


 一日目の報告会はこちらも進展なく終了する。

 俺は女子部屋に帰る二人を見送ると今日一日に脳に入った情報を思い返す。

 頭が痛い。

 俺にはキャパオーバーな気がしてならないのだが……猫の手も借りたいとはこのことなのかもしれない。

 

 



 


 


 


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我々『カップル爆散同好会』ですがなにか? あざとアイス @saya123456

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