第四章②『協力』
「結局、その騒ぎをきっかけに、母親は私と一緒に百合島を離れました」
要がプールで溺れた事件をきっかけに、彼女が百瀬梨花と彼女に加担した萩野太一と草部一也、森彩花の四人から受けたいじめが発覚した――はずだった。
担任の鹿島先生と山田先生は使用時期でないプールサイドへの侵入を注意したのみで、百瀬梨花達が要をいじめていたという事実を決して認めようとはしなかった。
要の母親は娘が学校のプールで溺れたという、一歩間違えれば死に繋がる事件が起きた事、それにも関わらず学校側が真摯に対応しない事にさすがに憤慨した。
また一人娘であるはずの要に対して、事件には驚いてみせたもののいじめには無関心な父親にも嫌気が差したらしい。
決心した母親は父親へ一方的に離婚届を突き付けて、そのまま要を連れて島を出た。
「辛かったでしょう、要さん……ありがとうございます……私に話してくださって……」
「いえ、気にしないでください……それに、いじめは確かに辛かったんですけど……悪いことばかりではなかったので……」
「友達……幽花さんの存在が唯一の支えとなっていたのですね……」
「はい……」
十数年前、島を出る寸前のことを話している内に思い出せた。
幽花と話せたのはあの時が最後で、あのまま説明も何も話せないまま別れたんだ……。
せめてお別れの前に、幽花にお礼や自分の気持ちをちゃんと伝えておきたかった。
幽花が言ってきた「ごめん」の言葉を「あなたは何も悪くないよ」、という返事で否定したかった。
本当は……いじめと事件のことがなければ、幽花と一緒にいたかった。
「今までの話で幽花さんと要さん、祟りで死んだ六人との関係がよく分かりました……やはり間違いなく、花山院家の嫡男である幽花さんと協力すれば、何か分かるのかもしれません……」
「つまり……?」
「要さん、あなたに折り入ってお願いしたいことがあります。もし協力していただければ、呪いのアザを消す方法が分かるのかもしれません」
葉山の言葉から一縷の望みが見えた要は、改めて彼からの頼み事を聞いてみた。
要は内心迷いなどもあったが、肯いて了承した。
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