第42話 花菜ちゃんの3回忌

 1年6ヶ月後

花菜ちゃんの3回忌


美鈴さんと諒くんと3人で、花菜ちゃんのお墓に行った。

今日は、平日でそれぞれ仕事が忙しかったから、

霊園に到着したのは、夕暮れ間近な時間だった。

夕焼けが綺麗だった。


「茜って、朝 生まれたの?」


ずっと前に花菜ちゃんに聞かれた光景が、フッと頭に浮かんだ。


「そう!早朝だって!なんで?」


「やっぱな! “あかねさす” の茜なんだね?」


私は、自分のことなのに、よくわかっていなかった。

お父さんがあかね色が好きだとかなんとかって、聞いていたくらい。


「万葉集とかで言うと、“あかねさす” は 朝日が映えるみたいな感じ。

朝日のあのオレンジ色をあかね色ってゆうのかなって思ってて。

希望にあふれる色ってゆうか、みんなに元気を与えられる色だよね!

あ、でも、夕焼けもあかね色ってゆうよね。

夕焼けのあかね色も優しくて温かくて、どっちの感じも茜にぴったりだよ!! 

かわいくて、ステキな いい名前!!」

 

ミルクティーを飲みながら、アハハって花菜ちゃんは笑った。



風にそよぐ木々も、緑濃いのだろうけど、夕焼けに染まり、あたり一面 あかね色に包まれた。



花菜ちゃん!!力を貸して!!


 

私の背中を押すように、一迅の風が吹いた。



「諒くん!!

諒くんのこと、初めて会った時から好きでした!

私と、付き合ってください!!」


諒くんは、ハッとしたように私の顔を見つめた。


その顔は、あかね色に染まっていた。


私の顔も、あかね色に染まっているだろう。




             

                   完

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あかね色に染まる頃 彼方希弓 @kiyumikanata

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