第40話 遺言

 「そうだね。そういうことだと思うよ」


電話の向こうで美鈴さんは笑った。


「茜ちゃんが、諒くんのことを好きなのは、鈍感な私だってわかってたよ。

茜ちゃんは、自分の気持ちを必死に隠してたんだと思うけど。

花菜は、そんな茜ちゃんを見る度に、昔の自分と重ねてたんだね。

諒くんの気持ちもあるから、じゃ~2人つきあえば?なんて、花菜の立場じゃ言えないし。

事故の瞬間、意識もうろうとした中で、花菜は

死を覚悟したんだよ。

たぶん、花菜のことだから、諒くんは大丈夫ってのも確認したと思うよ。

それで、病院へ真っ先に駆けつけてくれるのは、茜ちゃんだって確信した。 

意識不明になっちゃって、でも最期の最期に出た言葉は、茜ちゃんに伝えたかった気持ち。

忘れられない人を捜して、伝えたかった気持ちを求めて、その手帳にたどり着いて欲しかった。

自分の気持ち殺して、身を引いて、後悔してほしくないって。

って、まっ!そうゆうことだね!!

花菜らしい……あはははは!!

回りくどい!!

でも、良かった!!

伝わったよ~!!花菜!!

じゃ、今度は茜ちゃんが気持ちを伝える番だね!遠慮しないでいいんだよ!

それが、花菜の遺言なんだからさ」


「花菜ちゃん……

う……う、ゔえーーーーーーん!!」


「ゔえーーんって、どうゆう泣き方してんのよ!!

子供じゃないんだから!!あはは!!

ちょっと、そんな変な泣き方されると、私まで

つられちゃうじゃん!!

もーー!!う、う、うえーーーーーーん!!」



美鈴さんと2人で、泣いては笑い、笑っては泣いた。




 

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