第39話 花菜ちゃんの想い
キミとか、あの人って書かれているのを、酒井さんを想像して読むと、ピタッと当てはまる気がした。
あの子と言うのは、芳村さんか。
芳村さんに協力してねって言われてしまったから、言い出せなかったんだな。
架空の想い人をつくった、って、これが他校の先輩で医者の息子。
調べても わからないはずだ。
架空の人物だったのか。
そんなにしてまで、気を遣って、気持ち隠す必要あったのかな。
苦しかったね、花菜ちゃん。
これを読んで想像すると、花菜ちゃんは 酒井さんのことが好きだった。
酒井さんが走っているのを、見ていることが好きだった。
絵を描きながら、いつも酒井さんを応援していた。
酒井さんと話しをすることもなかったけど、なんとなく両思いかもって思っていた。
だけど、芳村さんが酒井さんを好きだって言って、協力してねって言われて、自分の気持ちを隠した。
言いたかったけど、友達を傷つけたくなかった。
恋のライバルになるのが嫌だから、花菜ちゃんは身を引いた。
身を引いた……
一番最後のページをめくり、裏表紙のところに、薄いシャーペンの字で何か書いてあった。
見慣れた花菜ちゃんの字。
さっきまでの中学時代の字とは明らかに違う。
最近書かれたような花菜ちゃんの字。
『恋のライバルになるのはイヤだよね。
だから、あなたは身を引いた。
そんな あなたを見ていると、中学の時の自分を見ているようで……ツライ……
私にとって、あなたはとても大切な親友だよ。
あなたに幸せになってほしい。
あなたを傷つけたくない。
でも、どうすればいいのか、私にはわからなくて。
諒くんのことも、あなたのことも、両方大切で、両方失いたくないと思ってしまっている私は、
なんてワガママなんだろう……
もしも……
もしも、私が死んだら、2人が付き合って、幸せになってくれたら、本当に本当に嬉しいな。
って、そんな例えばの話を伝えることもできないし……
ごめん……
私……あなたに何をしてあげられるだろう……
大好きな
心から大好きな 茜 』
えっ!!
えーーーーーーーっ!!
なに?
これ……
私にあてたメッセージ……
ううん、私に読ませるつもりで書いたわけじゃない、心のつぶやき……
でも、これを?
これを、私に読ませたかったの?
花菜ちゃん、私の気持ちに気づいてた……
私が諒くんを好きなこと……
それを昔の自分に重ねて悩んでたんだ。
「忘れられない人がいるの……気持ち伝えたかった……」
伝えたかった気持ちは、【私に】 伝えたかった気持ち。
花菜ちゃん!!
この手帳にたどり着いて欲しかったの?
花菜ちゃんが伝えたかった気持ちは、私に幸せになって欲しいって。
私に……私に……
花菜ちゃん!!
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