第8話 マンションで

 1月4日


 年始の休みも今日まで。

明日から仕事始めだという日。

昼ごろ石川さんから電話がきて、夕方に私のマンションに行ってもいいかと聞かれた。

あまり自信はなかったけど、手料理を作って待っていた。

石川さんは、ワインを持って来てくれた。


「風見、ひとり暮らしで自炊してんの?」


「はい」


「普段から作ってるってわかる料理だな」


「どうゆう意味ですか?」


「おいしいってことだよ!」

と、誉めてくれた。


石川さんが持って来てくれたワイン とても美味しかった。

けど、普段あんまり飲み慣れてないからか、グラス1杯だけでも、だいぶクラクラした。

ご馳走さまと言って、石川さんが食べ終わった食器を片付けてくれた。


石川さんはソファに腰をおろして

「花菜」

と私を呼んで、右手をさしだした。


「あ、はい」


吸い寄せられるように、その手をつかんで、ソファに腰をおろすと、私をみつめてキスをした。

そして、ネックレスのチェーンに沿うように、首すじから胸もとへ舌を滑らせた。

こうなることが、あたりまえのように、自然な流れで重なり合った。


 

 次の朝、トーストを軽く食べ、私のマンションから2人で一緒に出勤した。

周りの人から見たら、駅でちょうど会って一緒に歩いてきた、という風にしか見えないと思う。


私たちは、今まで通りに振る舞った。


まさか、この1週間で、私たちがこうゆう関係になっているなんて、誰にも想像できないだろう。


 

仕事はじめから数日間、会社で仕事中に石川さんと話すことはなかった。

そもそも、仕事で石川さんと接することはなかったし。

同じ部署にいても、石川さんが担当している仕事は、重要な大きなプロジェクトだったから、私がかかわれる物じゃなかったし。


そんな数日後の夕方、石川さんからラインがきた。


『今夜、花菜んちに行ってもいい?

俺、我慢できない。花菜を抱きたい』


『待ってます』


と、送信した。








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