第36話 花菜ちゃんがいなくなって

 花菜ちゃんと私の思い出は、入社式で隣りの席になったあの日からの5年4ヶ月。


突然、終わりがくるなんて思ってもいなかった。


駅前に新しくオープンしたジェラート屋さんに、来週行ってみようよ!!って話した次の日に亡くなってしまうなんて……


あれから私は、そのジェラート屋さんに行っていない。

花菜ちゃんと行きたかったから。



花菜ちゃんの友だちと会って話を聞いたけど、花菜ちゃんは友だちが大勢いた。

優しいし、しっかり者で、周りに気を配れるし、人気者だった。

だけど今は、地元から離れての就職だったから、東京にいる友だちは私だけだったようだ。

私にとって、花菜ちゃんは親友と呼べる人だったし、花菜ちゃんも私のことを親友だと思ってくれていたのだと思う。


彼氏ができても、彼氏にベッタリで付き合いが悪くなる、なんてこともなかった。



私は、東京生まれ東京育ち、実家から大学も通ったし、社会人になった今も実家暮らしだ。

だから、地元に友だちもいるけれど、SNSで繋がっているだけって感じで、一緒に遊びに出かけるような人はいなかった。


花菜ちゃんが亡くなってからの1年半で変わったことと言えば、社食でお昼を中山さんと関島さんと一緒に食べるようになった。

2人が私に声をかけてくれて、泣いてばかりだった私を慰めてくれた。 

あと、お姉ちゃんと妹が買い物につきあってくれるようになった。


親友を亡くした私に、家族も同僚も優しい。


その優しさに甘えて、どうにか過ごしてきた。

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