第35話 諒くんからの電話
その日の夜、諒くんから電話がきた。
「茜ちゃん、忙しいの?」
「えっ?別に忙しくないよ」
「じゃ、なんでジムに全然こないの?」
「なんでって……」
「先月、職場復帰のお祝い会してくれたけどさ、ジムにも来ないし、電話もくれないじゃん?」
「だって……」
「冷たいじゃん!!
リハビリしてた時は、毎日付き合ってくれたのに、職場復帰した途端に無視なんてさ!」
「無視してるつもりじゃないけど、私からの電話なんて迷惑でしょ?」
「迷惑?なんで?
俺、花菜の友達で面識あるの、茜ちゃんと美鈴さんだけだから。
2人に無視されたら、花菜の話しをする相手がいなくなっちゃうんだけど。
あっ!ってゆうか、茜ちゃん彼氏できたとか?」
「えっ!!彼氏なんていないよ!!」
「実は今朝、東京駅で茜ちゃん見かけたんだ」
「えっ?今朝って?」
「こんな偶然ある?って、声かけようかと思ったけど、お連れ様がいたからさ。
遠慮したんだけど」
「あっ、全然そんなんじゃないから!会社の人だよ!!
会社の人と、仕事で!」
「あはは!良かった!!会社の人なんだ?
ってゆうか、茜ちゃん、なんかすっごい厳しい顔してたよ。
仕事の時は、あぁゆう顔してんの?
初めて見たって顔だった!あはは!
じゃ、近々ジムに来てね!
会費引き落とされてるんだから、もったいないよ!!
じゃ、待ってるからね~」
諒くんに、石川さんと一緒のところを見られてたなんて……
声かけられなくて良かったな。
声かけられてたら、動揺して、花菜ちゃんの彼氏って、石川さんに言っちゃうところだった……
そもそも、私と諒くんは友達ではない。
親友の彼氏
諒くんからしたら、私は彼女の友達
花菜ちゃんが亡くなった今は、私が諒くんに連絡をとるなんて、もうしない方がいいのだろうと思っていた。
一周忌法要の時に、花菜ちゃんのお母さんが諒くんに言っていたけど、あなたは花菜のことは、
もう過去の人くらいに思ってくれていいんだから、って。
花菜ちゃんに縛られなくていいってことを、お母さんは言っていた。
それならば、私が諒くんに連絡をとることは、いつまでも花菜ちゃんから離れられなくさせてしまうのではないだろうか……
そんな風に思って、電話もできないでいた。
ジムも解約とか休会とかすればいいのだろうけど、それもできずにいた。
私自身の気持ちは、諒くんに会いたいと思っていたから。
ジムに行けば、会えるのだから、行けばいい。
でも、いつも一緒に行っていた花菜ちゃんが、今は もう いない。
花菜ちゃんがいないのに、ジムに行くのは、なんだか卑怯な気がしていた。
一緒にリハビリしたり、なんだかんだと口実を作って、諒くんに会うことは、私の中では花菜ちゃんに対して、罪悪感があった。
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