第3話 仕事納め

 入社1年目 12月


 毎日 毎日 残業でクタクタだった。

でも、私はまだマシで、花菜ちゃんの部署は特に年末は忙しいところだった。


「風見!あれやって!」

「風見!これやって!」

「風見!まだ出来てないのか!!」


そんな怒鳴り声の中、花菜ちゃんは懸命に働いていた。



「あっ!茜!お疲れさま!」


「ね~!花菜ちゃん大丈夫?顔色悪いよ!」


「そう?寝不足だし、休憩時間もないから、化粧直しもできなくて。

私の顔 そんなにヒドい?」


「ひどいってゆうか、」


「風見!!!!」


「はい!今 行きます!茜ごめん!またね!」


大きな段ボール箱を抱えて走って行った。



そんな日が続き、仕事納めの日。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 怒とうの年末、なんとか仕事も片付いた。

今日は、仕事納めで、部署の人たち全員参加で飲みに行った。

もともと、私はお酒は強くない。

その上、過労と寝不足が重なっていたところに、仕事納めの安堵感で、いつも以上にお酒のまわりが早く、酔いつぶれてしまった、 らしい……


気づいたのは、夜中の4時を過ぎた頃。

場所は、ホテルのベッドの上だった。

隣りには裸の男の人が向こうを向いて寝ていた。


え~~~~っ!!?? 

なに~~~~!!??

ウソでしょ~~~!!


この状況がのみ込めず、動揺していると、横の男の人がこちらを向いた。


「えっ!!石川さん?」


「あのさ~、風見~なんにも覚えてないんだな?

おまえ おぶって大変だったんだぞ!

1人で帰れるって出てったと思ったら、倒れ込んでて、タクシーで家まで送ってやるかと思ったけど、いいです いいですって家の場所答えないし。

しゃーないから、ホテル入ったんだ。

酩酊状態の女抱えて、だいぶ怪しまれたわ」


「えっ!すみません!ご迷惑おかけしました!

帰ります!」


「もう、とっくに電車ないし、せっかくホテル代払ってんだから、泊まってけよ!」


「えっ、でも、その……」


「なんもしねーよ!

なんかするつもりなら、意識ないうちに脱がしとくよ!

あぁ、靴だけは脱がしたけどな。

まぁ、どっちでもいいけど。俺は寝るから」

そう言うと、また向こうを向いた。


「このベッド デカいから、そっち半分で寝てけよ。

さっきまで普通に寝てたんだし」

向こうを向いたまま小さな声で言った。


改めて自分を見てみると、石川さんが言った通り、なにかされたような形跡はなく、コートを着たままだった。

コートぐらい脱がしてもらっても良かったんだけど。

コートとジャケットを脱いでハンガーにかけて、ベッドに横たわって、また眠りについた。



 










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