第4話 風見花菜

 カーテンの隙間から漏れた光が、眩しく私の顔を照らしていた。

う~~ん……

ハッ!!

目が覚めた。


「おはようさん!」


石川さんが窓際に立って、タバコを吸っていた。

私はガバッと起き上がった。


「おはようございます!

昨夜は、大変ご迷惑をおかけしまして、申し訳ありませんでした!」

と、頭を下げた。


「ハハハ!声でけーな、おまえ!

それだけ元気なら心配ないな。

昨日は、なんかヤバかったから。

急性アルコール中毒とかで救急車呼ばなきゃなんねーかな~とか思ったくらいだったけど」


「全然記憶なくて。

本当に、すみませんでした」


「まっ、新人にとっちゃ、初めての年末でキツかっただろ。

おまえ、よく頑張ったと思うよ。

さてと、腹減ったな~!飯でも食いに行こうぜ!付き合えよ!風見!」


「あっ、はい!お供します!」



ホテルを出たのが9時。

微妙な時間。

こんな時間だし、ファミレスかファストフード店かと思いながら歩いた。

石川さんは、繁華街から路地裏の狭い道を進んで行く。

どちらかと言うと、住宅街な感じになった。

こんなところに食べ物屋さんあるの?

道 間違えてんのかな?とか思いながら、石川さんの後ろを歩いた。


お寺か神社みたいな感じの門構え。

松の木が、これ、なんてゆうんだっけ?横に長く長く曲げられている。

玉砂利の上を歩き、建物の入口に、

[料亭 加賀美]と小さく書かれていた。

支度中と看板が出ている。


石川さんは、ガラガラと格子戸を開けて中に入った。


「女将~!!おはよう!!

悪いけど、飯食わしてー!なんでもいいや!!」と声をかけた。


奥から、着物を着た40代くらいの女将さんらしき人が出てきた。

綺麗な人だった。


「時間外の割り増し料金いただかないと。

朝帰りかしら~」

と笑い、どうぞ、と部屋に通してくれた。


まだ仕込み中だから、こんなものしか出せなくて、と女将さんは言ったけど、私にしてみれば旅館の夕食並みの豪華な料理といった感じだった。


これ!アワビなの?

朝からアワビって、すごくない?

ってか、柔らかい!!硬くないんだ!!美味しい!!

ホタテと数の子の、この松前漬けみたいなやつも美味しい!!

はまぐりのお吸い物なんて、なにかのお祝いですか?

石の上でジュージューいってる状態のお肉。

なんで石の上?

これ、レアでもいけるやつだから、もういいよ。と、石川さんが笑った。


ちょっと!これはいくらなの?

これが朝食ですか?

なんだか、まだ、夢の中なのかな~なんて思いながら、バクバク食べた。

昨日の夜の飲み会の時に、私は一体なにを食べただろう。

ろくに、なにも食べないで飲んでしまったから、

酔っぱらってしまったし、実際ものすごくお腹がすいていた。

そして、こんな高級な料理で美味しくて、ほんとに、がっついてバクバク食べてしまった。


「風見!いい食いっぷりだね~!」


「あっ、すみません。すごく美味しくて」


「あはは!美味しくて良かったよ。

すみませんってことはないな。

まっ、時間も気にしないで ゆっくり食べなよ」


大人だなぁと思った。

とても仕事が早くて正確。

発想力も行動力もある人。

同じ部署の尊敬できる先輩と思っていたけど。

本当に大人の男性なんだと改めて思った。


石川和哉さん

6こ年上の29歳



「おいくらお支払いすればいいですか?」


店を出て石川さんに聞くと、


「後輩は、ご馳走さまでしたって言ってりゃいいよ!

俺も散々先輩にゴチになってきたしな。

おまえも後輩が出来たら、おごってやれや」

と笑った。


「はい!ご馳走さまでした!

とても、おいしかったです!」


私も、さらっとおごれる人になろう!!


最寄りの駅で別れ、マンションへ帰ってきた。






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