第5話 ドライブ

 その日の夜、石川さんから電話がきた。


「明日、なんか用事ある?」


「特になにもないです」


「じゃ、ドライブに付き合えよ!」


そんな強引な誘いも、全然イヤな気がしなかった。


 次の日、待ち合わせの場所に車で迎えにきてくれた。


「ランクル、意外ですね」


「えっ?なんで?意外かな?」


「あっ、なんとなくスポーツカーみたいなタイプなのかと思ったので」


「そっかぁ?あはは!

意外にアウトドア派なんだよ」


そう言えば、ドライブって言われたけど、どこへ行くのか聞いてなかった。

年末だから、都内は道もすいていた。

高速にのり、3、40分くらい走ったのか。

私の左側に海が見えた。


「わ~~!!海!!海!!海見えましたよ!!」


「あはははは! 

風見!おまえの出身地 当ててやろうか!」

笑いながら、そうだな~、う~~んと考えて


「長野だろ!!」

と言った。


「えっ!!なんでわかったんですか?」


「あはははは!1発目で当たったか!

俺の中じゃ3択だったんだけどな。

海見えただけで感動するのって、海ナシ県の人だから。

近畿でもないし、関東じゃないとすれば、

長野、山梨、岐阜のどれかかな~ってさ」


「なんか、馬鹿にされてます?」


「あはは!馬鹿になんかしてないよ。

今日のドライブ、海にして正解だったなって思っただけだよ」


石川さんに的中されても仕方ないくらい、海を見るとテンション上がる。

それが、海ナシ県の特徴なのかは わからない。

ただ、長野の友達は、

「うみ~~~~!!!!」

って、みんな絶叫してたな。

しかも、馴染みがあるのは新潟のザ・日本海!って感じの海だ。

荒々しい波が岩に打ち寄せる。

12月の海なんて、どんよりと曇っていて、荒れてるイメージしかない。

だけど ここは 太平洋の海。

この辺りのことを湘南エリアって言うのかな~?

真冬の海だとは思えない光景。

サーフィンをしてる人が大勢いて、海岸の砂浜を犬の散歩をしている人がやたらいる。

その砂浜では、キャンプ用みたいなタープを張って、テーブルとイスを置いて、ビールを飲んでいたりする。

一言で言うと “”オシャレな光景“” だった。



「風見、おまえ上京したてか?」

 

「あ、いえ、大学は都内の大学なので、上京したてではないのですが。

考えてみたら、こっちでドライブしたのって初めてです。

いつも電車か、バス移動なので」


「へ~可愛いな~!」


「どうゆう意味ですか?馬鹿にしてます?」


「あはははは!怒るなよ!

だから、馬鹿になんてしてないって」


車を停めて、海岸通りのカフェのオープンテラスで食事をした。

ここが日本だと言うことも、年末だということも忘れさせられるような感じだった。



4月に入社してから、石川さんと同じ部署にいたけど、仕事以外の話をしたこともなかったし。

ってゆうか、石川さんは超仕事の出来る人だったから、仕事の話すら私みたいな新人が出来るような人ではなかった。

石川さんの私服姿も初めて見たな。

普段は、スーツをピシっと着こなしている。

髪もいつもは、ワックスか何かであげてるってゆうのか、流してるっていうのか、おでこを出してる感じだけど、今日はナチュラルに前髪をおろしている。

割りと、よく話すし、私の話も聞いてくれる。

あはははは!って楽しそうに笑う。


なんだか、すべてがキラキラとしていて、新鮮だった。



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