第2話 永瀬茜

 私の名前は、永瀬茜

花菜ちゃんとは同じ会社の同期だった。

同期は、20人くらいいたけど、同い年だということと、配属部署が同じフロアだったから、仕事終わりで一緒に食事に行ったり、飲みに行ったり、誰よりも仲良くしていた。


 

‘’忘れられない人がいるの‘’


‘’気持ち伝えたかった‘’


途切れ途切れの小さな声だったけど、確かに彼女はそう言った。

花菜ちゃんの最期のことば……


この3ヶ月の間、この ことばの意味をずっと考えていた。


花菜ちゃんには、諒くんという彼氏がいた。

あの日も、あの噴水広場で諒くんと待ち合わせをしてデートに行くはずだった。

花菜ちゃんは、真面目なタイプだったから、諒くんと付き合っていて、浮気や二股なんてありえない。

そんな花菜ちゃんが、死に際につぶやいた


“忘れられない人” 

“気持ち伝えたかった人”


私、その人を捜さなきゃいけないよね。

でも、その人を捜すことで、諒くんを傷つけることになっちゃうかも。

自分以外の誰かを彼女が想っていたなんて、そんな事実を知ったら……

このまま、そっとしておいた方がいいのかな?

どうしたらいいんだろう……


そんな風に考えながら、3ヶ月も経ってしまった。


どう生きていったらいいか、わからないって、

諒くん言ったけど、私だって、花菜ちゃんがこの世にいなくなって、どうしていいかわからなかった。 

花菜ちゃんは、私にとって誰よりも頼れる優しい大切な親友だったから。


とにかく、諒くんに気づかれないように調べよう。

手帳を開き、まず私が知っている範囲のことを書き出すことにした。


花菜ちゃんの年表

○○年 入社 22才

○○年 享年 28才


私が知っているのは、この5年4ヶ月間だけだ。


そのうちの直近3年間は、諒くんと付き合っていた。


諒くんと付き合う1年半前、会社の先輩と社内恋愛していた。

それは、たった3ヶ月の短い付き合いだった。



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