第29話 似てる

 2週間後


 諒くんの職場のスポーツジム近くの、オシャレなイタリアンのお店で、美鈴さんと諒くんの職場復帰のお祝い会をした。


諒くんは、花菜ちゃんが亡くなる前みたいな感じだった。

明るく元気な男の子、1個下なだけだけど。


私も美鈴さんも、諒くんも、花菜ちゃんのことには触れなかった。

みんな心の中では思ってるけど、それぞれ気を遣っていたのだろう。

久々にバカ話をして、笑って、楽しく飲んだ。


 美鈴さんは、ホテルに泊まるよなんて言ってたけど、家に来てもらうことにした。


「え~悪いじゃん!実家でしょう?」


「いいよ、いいよ!

美鈴さん、新幹線代もかかってるんだし。

ホテル代もったいないよ!」


「う~ん、じゃ、お言葉に甘えさせてもらっちゃおうかな!」


「うん!!甘えて、甘えて!」



電話をして母に伝えておいたから、家に帰って私の部屋に入ると、私のベッドの横の下にお客さん用の布団が敷いてあった。


「わっ!ガチ目にお布団敷いてくれてんじゃん。申し訳ないなぁ。

私、ざこ寝で十分だったんだけど」


「ううん、遠慮しないで、脚伸ばして寝てね!

美鈴さん脚長いんだから!」


「あはははは!脚長いんだからって!

言い方!!おっかしい!!

考えてみたら、茜ちゃんとお酒飲んだの初めてだったね」


「あっ!そうだよね!

美鈴さんとは、一緒に長野行ったり、ランチしたりお茶したりしてたけど、お酒は飲んでなかったね~!!」


「ね……似てるね!!」


「うん?何が?」


「普段は感じなかったけど……

茜ちゃん、花菜に似てる」


「えっ?」


「酔っぱらった時の感じが、花菜っぽい。

花菜は、すぐ酔っぱらっちゃってたけど」


「あっ……自分じゃわからないけど……

前に諒くんにも言われたことあるよ……

声とか、喋り方とか、テンションとか似てるって。

お酒飲んで2人喋ってると、どっちがどっちか わかんないって言われた」


「そっかぁ……

私も、今日、花菜がいるみたいって思っちゃった……

諒くんの前では言えなかったけど。

諒くんも、そう思ってたかもね……」


「……そうかな……」


「礼儀正しくて、人に優しくて、都会の人なのに、田舎者を馬鹿にすることもなくて。

行動力あるのに、引っ込み思案で。

でも、一途で一生懸命な人って、花菜、茜ちゃんのことそう言ってたよ」


「花菜ちゃん、そんな風に誉めてくれてたの?

私なんて、一人じゃなんにも出来なくて、いつも花菜ちゃんに頼りっぱなしで……」


「花菜は、ひとりっ子だったけど、しっかりした性格だったから、同い年だけど、茜ちゃんのこと妹みたいに面倒みて、大好きだったんだと思うよ!」


その晩、美鈴さんと2人で、花菜ちゃんとの思い出話を、朝方までしゃべりまくった。


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