第30話 上海プロジェクトチームリーダー

 11月


 出勤したら、部長に呼ばれた。


「永瀬さん、ちょっとだけ時間もらえるかな。

会議室で、石川 上海プロジェクトチームリーダーがお待ちだ」


「上海プロジェクトチームリーダーって誰ですか?」


行けばわかるよと言われて、失礼しますと会議室に入った。

そこにいたのは、あの!石川さんだった。


「あはははは!露骨にイヤな顔されちゃったな。

ってことは、聞いてるんだよな?俺のこと」


「なんのことですか?」


「花菜とのこと」


「花菜なんて呼ばないで下さい!!」


「知ってんなら、話は早いな。

まぁ、座ってよ。

そこに立たれてると、話しづらいから」


そう言われて、仕方なく椅子に座った。


「永瀬茜さん。話をするのは、初めてだよね。

一応、自己紹介させてもらうけど、上海プロジェクトチームリーダーの石川和哉です。

単刀直入に言わせてもらうけど、花菜、風見さんのお墓参りをしたくて、場所を教えて欲しいんだ」


「は?なんであなたが花菜ちゃんのお墓参りなんか!!

お墓参りして、せめてもの罪滅ぼしとかって思ってるんですか?

そんなの、求めてませんから!!

あなたとのことなんて、綺麗サッパリ忘れてましたから!花菜ちゃんは!!」


まくしたてるように言った。


「そうだよね。それでいいよ。

そう言って貰えて良かったよ。

だけどね、花菜は、綺麗サッパリだったかもだけど……

俺の方がね……全然、綺麗サッパリじゃなくてさ……

とにかく、お墓の場所教えてくれないかな?」


「さっきから お墓お墓ってなんなんですか?」


「知らないの?」


「は?知ってますよ!何回も行ってますから!」


「じゃ、教えてよ!!」


意味不明なやり取りに頭にきた。

勢いで わかった!連れてってあげる!なんて、約束をしてしまった。


上海プロジェクトチームリーダーの力は絶大な様で、その日の昼には、明日チームリーダーに同行で視察に行くようにと部長に言われた。

仕事ができるわけでもない私が視察に同行って、絶対怪しい感じじゃん!!

ってか、何の視察ってことになってるんだろうか?

視察の為に、上海から帰国していると言うし、本当になにかしらの視察があって、それのついでのお墓参りなのかな。

体面的には、お墓参りは内緒だろう。

そもそも、花菜ちゃんと付き合ってたことが秘密だったんだから。

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