第31話 石川さんと長野へ

 次の日


朝8時 東京駅で石川さんと待ち合わせた。


おはよう!と、石川さんは、にこやかに手を振ってきた。


「おはようございます」


「あはは!めっちゃ にらんでんじゃん!

お忙しいところ、すみませんが、今日はよろしくお願いします」

と頭を下げられた。


「イヤミですか?全然忙しくないので!私は!」


「あはははは! 

じゃ、行きますか!

とりあえず、新幹線で長野でいいんだよね?」


もう既に、私の分の切符も買ってくれてあった。


わっ!!グリーン車!!

初めて乗った!!

え~~!!スゴイ!!

シート全然違うんですけど~~!!

間隔 広いし!!


普通車の指定席は、混んでいるようだったが、こちらはガラガラだった。

私たち以外に、だいぶ離れて2人いただけだった。


「花菜から、君のことはいろいろ聞いていたよ。

本当に仲良しなんだなって思っていたよ。

だけど、俺とのことを聞いたのは、俺がいなくなってからだったでしょ?

ずっと、口止めしてたからな。

俺とのことは、誰にも言わないでって。

花菜は、君には言いたそうにしてたけど」


「そりゃ、口止めしますよね!!

取引先の社長の娘さんとの結婚決まってたんだから。

バレて破談になんかなったら、困りますもんね。

そんなこととは知らずに、花菜ちゃん律義に黙ってましたよ!私にも。

私が聞いたのは、5月の入社2年目研修の夜でした。

4月は、花菜ちゃん体調を崩して何日も会社休んでましたよ。 

あなたが原因だったんだ!って思いましたよ」


「……そうか……」


前を向いたまま、石川さんはそう言うと、黙り込んだ。

私も、黙ってスマホをいじっていた。

30分くらいたって、


「あれから花菜には、恋人ができたのかな?」と、私を見た。

 

カチンときた。


「あの!それ、石川さんに関係ありますか?

婚約者いたのに、それを黙ったまま二股かけて、結婚決まりました!はい!さよなら!って、犯罪ギリギリなんじゃないですか?

花菜ちゃん、考えてみたら、石川さんから、好きだって言われてもいなかったって。

貰ってばっかりで、お金とられたわけでもないし、騙されたってゆうか、自分が勝手に付き合ってるって、勘違いしちゃってただけだったのかも、って、そう言ってましたけど、別れること前提の付き合いだったから、好きだなんて うかつに言わないようにしてたってことですよね!!

本当にゲス野郎じゃないですか!!」


ちょっと、興奮して、マシンガンのように文句を言った。


「確かにな……」


そう言うと、石川さんは、また黙り込んだ。


冷静になってみると、ゲス野郎は言い過ぎだったか……

陰口ならまだしも、本人にそれをぶつけるのは、ちょっとキツかったな。


「すみません……思ってたこと、全部 口にしてしまいました。

少し言い過ぎました」


「いや、もう本人いないからね。

代わりに文句言ってもらえて良かったよ」

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