第11話 山村 諒

 「もしもし諒くん?リハビリやってる?」


諒くんの携帯に電話した。


「……あぁ……あんま……してない……」


やっと聞きとれるくらいの 小さな声だった。


「諒くん、会えるかな?」


「……家にいるよ」


「行ってもいい?」


「あぁ」


諒くんは、とても明るくて快活な男の子だった。

男の子なんて言い方をしてしまうのは、年下だからだ。

って言っても、1つ下なだけだけど。

でも、なんてゆうか、人懐っこい感じでかわいいと思える人だ。

大学進学を機に和歌山県から東京に出てきて、就職も東京。

今は、職場近くの三軒茶屋のアパートでひとり暮らししている。

この諒くんのアパートには、花菜ちゃんと何回か行ったことがあった。


「諒くん、おはよー!」


「おはよ……」


「って、もう昼過ぎだけど、寝てた?」


「……寝てた……」


「ねっ、リハビリしないの?

諒くん、もう脚も肩も治ってるんだよ。

ただ、3ヶ月ほとんど寝たきりだったから、筋力が落ちちゃってるでしょ!

もともと諒くん体育会系だもん!

身体動かしてけば、どんどん元に戻せるよ!」


「……るせーよ…………うるせーよ!! 

あんたにそんなこと言われる筋合いねーよ!!

帰ってくれ……」


「……また来るね……」


はぁ……

泣きそうになっちゃった……

諒くんにとっては、4ヶ月経った今も、花菜ちゃんの死を受け入れられないでいるんだな……

そりゃ そうだけど。

そんなん私だってそうだよ!!

でも、このままじゃ 花菜ちゃん悲しいよね……

今の諒くんは、見てるのつらいよ……

もっと輝いてる人なのに……



 花菜ちゃんのお母さんに連絡して、週末 花菜ちゃんの故郷の長野に行くことにした。


新幹線で長野駅まで行き、そこから在来線に乗り換える。

ここへは、花菜ちゃんと一緒にもう何度も来ていたから、1人でも迷わずに行ける。


私は、生まれも育ちも東京で、両親も東京の人だったから、田舎のおばあちゃんちってゆうのに、すごく憧れていた。

夏休みとか、お正月に帰省する友達が羨ましかった。

そんな話を花菜ちゃんにしたら、じゃ、私が帰省する時は、茜 一緒に帰ろ!!って言ってくれた。

お正月とかお盆休みとか、いつも誘ってくれるようになった。

毎回毎回じゃ、さすがにご迷惑かと思って、2回に1回くらいな感じで一緒に花菜ちゃんちへ行った。


花菜ちゃんちへ行くのは、お葬式以来だ。


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