第23話 内緒の想い

 なんの進展もないまま3ヶ月が過ぎてしまった。

 

その間 私は毎日仕事終わりに、諒くんのリハビリに付き合っていた。


「諒くん!スゴいじゃん!

こんなに歩けるようになって!!」


諒くんは、振り返り とびっきりの笑顔で、


「茜ちゃんのお陰だよ!ありがとう!

花菜の一周忌には間に合わせたいし!」

と言った。


「そっか、そうだね。 頑張ろう!」


花菜ちゃん……

わたし、花菜ちゃんに隠してたことがある……

わたし……

諒くんのこと、好きなんだ……

初めて会った時、ビビってきたの。

だけど、そのあとすぐに花菜ちゃんと諒くんは

付き合い始めて。

諒くんは、花菜ちゃんに夢中で。

わたしが、諒くんを好きだなんて言える感じじゃなかった。

これ以上、好きにならないようにしようって思ってた。

諦めてたけど……諦めきれないでいた……

親友の彼氏を好きなんて、誰にも言えないし。

花菜ちゃん誘ってくれて、諒くんと3人で遊びに行ったり、飲みに行ったり。

どんどん好きになっちゃってた……

一緒に遊んだりしないで、距離をとって、離れていれば諦められるのかな……なんて考えたり。


花菜ちゃん死んじゃって、諒くんと毎日リハビリ一緒にするようになって、やっぱり私……

諒くんのこと大好きだ!

だけど、諒くんが好きなのは、きっと いつまで経っても、花菜ちゃんなんだと思う。

だから、やっぱり……諦めなきゃいけないんだろうな。

ごめんね、花菜ちゃん。

ずっと 内緒にしてて……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 花菜ちゃんの、一周忌法要


 私は、東京駅で諒くんと待ち合わせて一緒に行った。

高崎から、美鈴さんも新幹線に乗ってきて、合流した。


大勢の人が、集まった。

花菜ちゃんの人柄からだろう。

諒くんは、花菜ちゃんの家の前から、ずっと泣き続けていた。


「諒くん!ダメ!ダメ!せっかくのイイ男が台無しでしょ!

花菜にいい顔見せてあげてよ~!

はい!はい!もう泣かないの!!」


花菜ちゃんのお母さんにそう言われたけど、諒くんは法要の間も、泣き続けていた。


「諒くん、あなたが花菜のことを大事に思ってくれてたこと感謝してるわ。ありがとう。

でも、いつまでも立ち止まってないで、もう前に踏み出さなきゃダメよ。

花菜は、あなたが幸せになってくれることを願ってるはずだから。

あなたは、花菜のことは、もう過去の人ってくらいに思って、前に進めばいいのよ。

花菜の分も、幸せになってちょうだい」


お母さんにそう言われても、諒くんが泣き止むことはなく、泣きながらタクシーに乗って帰って行った。

あんな状態の諒くんを1人で帰らせるのは、心配だったけど、私は美鈴さんと帰らずに残った。

せっかく、長野に来たのだから、いろいろと調べたいと思っていたから。


1年も経ってしまったのに、私はまだ花菜ちゃんの忘れられない人を見つけることも、気持ちを伝えることも出来ずにいた。

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