第16話 花菜ちゃんのお墓

 中学校に来てみたら、あの絵を描いた場所がどこなのか、すぐにわかった。

学校の横には川が流れていて、土手になっていた。

その土手が桜の木の並木道になっていた。

校舎の1階の端が、美術室らしい。

あの位置なら、美術室からでもこの並木道は見えそうだけど。

花菜ちゃんは外に出て、暑い日も寒い日も描いていたってことか。


今日は、休日だけど部活はあるみたいで、生徒たちが集まってきた。

その中で、運動部らしいジャージの人たちが、この土手を走り始めた。


「ちょっと、ごめんね。何部?」


「陸上部です!」


陸上部……

この土手を、陸上部の人たちが走っていた……

ね、花菜ちゃん、花菜ちゃんが誰にも話してない忘れられない人は、もしかして ここを走っていたの?




 次の日


 花菜ちゃんのお墓参りに行った。

ちょっと、小高い丘にある霊園だ。


「きれい」


紅葉が、とても綺麗だった。

花菜ちゃんの絵に描かれてたのも、秋の紅葉の絵が多かったし、お墓から見えるこの景色、花菜ちゃん好きだろうな。


花菜ちゃん 来たよ。

ごめんね 遅くなっちゃって。

花菜ちゃんが伝えたかった想いを、伝えたいんだけど、まだわからなくて。

もうちょっとかかっちゃうけど、待っててね。

絶対 見つけるから。


♪〜〜〜〜〜〜

その時、携帯が鳴り、画面を見ると、諒くんだった。


「もしもし、諒くん?」


「あっ、茜ちゃん?美鈴さんに聞いたけど、花菜んちに行ってんの?」


「うん、そう。

今、花菜ちゃんのお墓に来てるよ」


「……お墓……」


その後だいぶ沈黙が続いた。


「俺、まだ、行けてなくて……

茜ちゃん、悪いんだけど、携帯お墓に置いてくれない?

花菜に話したい」


「うん、いいよ。置くね」


「……花菜……ごめんな……

俺だけ生き残っちゃって……

一緒に逝ってあげれなくて……

花菜……俺……一緒に逝きたかった……

花菜!花菜!花菜……

俺を一人にしないでくれよ……花菜…………」


離れていたけど、静かな霊園に、諒くんの嗚咽がいつまでも響いていた。






 

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