第26話 レッツ☆パニッシュメント!
悲鳴が聞こえたのはこれから進もうとしていた先の方だった。
そこで忍び足で正面の木影に隠れながら、そっと先を覗き見てみる。
すると少女を担いだ屈強な男が一人、背を見せて歩いている姿が見えた。
しかも担がれているのは二人。
一人は泣き叫んで暴れているが、もう一人は男の肩でぐったりとしている。
男は明らかに人さらいの風体。
なんだか手馴れているような犯罪臭がプンプンするな。
間違い無い、これはギルティだ!
俺はこれでも目の前で健気な少女が暴漢に襲われていたら助けたいタイプ!
力を得て調子付いた今なら躊躇なく立ち向かえるってもんだ! 行くぞ!
「――なんだッ!?」
気付いてももう遅い!
もうすでにお前の隙は捉えているッ!
「ショォーーーックッッッ!!!!!」
「うっげええええええ!!!??」
奴に振り向く暇も与えず、みぞおちへ突き上げるように力をブチ込んでやった。
これはトゲがちょい刺さる程度に力を抑えた新生ショック。
スロットは1、非常口・放と同等の力も持つため使い勝手抜群だ。
その制御は完璧、暴漢はトゲに刺されたまま空へと飛んで行ってしまった。
イエスパニッシュメント、暴漢に慈悲は無い。
「きゃあ!?」
一方の少女二人は男が飛んだ拍子に肩から振り落とされていた。
一人はそのままぐったりと、しかし助けを求めていた方はもう起き上がろうとしていて。
「いたた……はっ!?」
だが俺を見た途端、動きを止めてしまった。
ま、まさか今の男と同類と見られてしまったのだろうか……?
「あ、その、俺はピクト! 君たちを助けた男だ! 怪しくないよぉ!」
そんな誤解を避けるためにと弁明する。
手振り身振りも加えてとりあえず精一杯に。
『いやーそれは無理だってぇ! 怪し過ぎワロター!』
だって仕方ないだろぉ!
女の子と接すること自体、俺にとっては稀なんだから!
これが俺の全力なんだよぉ~~~!
「プッ」
だけど変な声が聞こえ、つい少女の方を向く。
すると変に思われるどころか、なんだかものすごく頬を赤くさせて膨らませていた。
「ブッフゥーーー! アッハハハハ! なにそれ! 面白っ! キャハハハハ!」
なんかよくわからないがツボに入ったらしい。
途端に腹を抱えて笑い出し、地面を叩くまでしてみせていて。
仕方ないので引き続きボディランゲージをとってみる。
なんだか徐々にロボットダンスになっていってる気もするが。
『人間ってほんとよくわからないナマモノですね』
俺にはお前の方がよくわからんよ。
「そ、そうだそれどころじゃないんだった! ここはもう危ない、早く逃げるんだ!」
「――ハッ、そうだったぁ!」
俺も笑いたい気分だが周囲の環境がそうさせてはくれない。
すぐ近くでも火が燃え広がっているし、下手するとこっちまで焼かれそうな熱さだ。
少女たちは泥まみれだからまだ耐えられるかもしれないが、俺は出来ればこのまま退散したい。
でも少女はすぐには立ち上がらず、傍に倒れたもう一人の少女に擦り寄っていく。
「目を覚ましてウルリーシャ! 起きるのよ!」
さらには頬を叩き、鼻を摘まみ、何とか起こそうとする。
するとウルリーシャと呼ばれた子がうっすらと目を開いた。
「うぅん……セリ、エーネ?」
「ああウルリーシャ! よかった、よかったよぉ!」
そのまま感極まったのか、セリエーネと呼ばれた子がウルリーシャに抱き着く。
ウルリーシャの方も同様にして、体を起こしては抱き合い始めていて。
「でも、なんで……」
「あのね、このピクトっていうグリーンマンが助けてくれたの!」
「ぐりーんまんって……え?」
ぐりーんまん……?
それはよくわからないが、ウルリーシャは俺を見上げ、目をパチクリ。
それでもってなんだか疑心暗鬼な眼をぶつけてきた。
ああもう、下唇まで尖らせちゃってものすっごい疑ってきてるゥ!
「や、やぁグリーンマンのピクトだよ! 二人とも助かって良かったね!」
このまま疑われるのも何なのでそれらしく手を挙げて挨拶しておこう。
とりあえず今の俺はグリーンマンということにしておく。
そもそもなんなんだグリーンマンって、ホント。
あぁそうか! このガスマスクのせいかぁ……。
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