第28話 キメろ、新必殺技!

 見えている範囲の相手の数は大体二~三〇人くらいか?

 カウントするのも面倒臭い数だ。数えるのはやめた!


 それでいてどいつもこいつも皮鎧をまとった荒くれ野郎ばかり。

 まるで盗賊か山賊と言った方がしっくりくる様相だ。野盗か?

 なんにせよセリエーネとウルリーシャを攫おうとした男の仲間ってのは間違いないな。


『イエス! レッツパニッシュメーント~~~!』


 オーケーへーるぱ、お掃除の時間だ!


 ――でもなんだ? 少し様子がおかしい。


 奥側で誰かと戦っているようだ。

 そこでよく観察してみると、三人ほどの剣士が建造物を背にしながら抵抗しているように見えた。


 その三人は奴らと違って比較的綺麗な装いだ。

 どこか気品も感じるような戦い方で、多人数相手にも負けてはいない。

 いずれも兜を被って顔が見えないが、なんだか美形な気がするぞ。


 でも接近する間に一人が斬られてやられてしまった。

 これは多勢に無勢、救出対象に違いない!


「あれはリディス兵士長よ! 助けてあげて!」


「「「ッ!!?」」」


 おっと、セリエーネの声で野盗どもが勘付いてしまった。

 焦る気持ちはわかるが、少しはこっちに合わせて欲しかったよぉ!


 ま、もう関係無いがねッ!


「うおおおおおおっ!!!」


「「「な、なんだアイツは!?」」」


 集団に向けて駆け抜け、そして勢いよく跳ねる。

 レベルが上がっているおかげで今の俺の跳躍力は前世とは比較にならないほどに向上している!


 故にその跳躍力、最大で約八メートル!


 そして奴らを見下ろすその最中で新しい力を発動だッ!




「いッくぜえッ!〝エクスクラメーション〟ッッッ!!!!!」




 俺の叫びと共に顕現したのは、身の丈をゆうに超える巨大な棒状マーク。

 その名の通り、まさしく「!」マークを描いた力の象徴。


 この必要スロット数――3!

 パワーだけでなく特殊性能をふんだんに詰め込んだ俺のとっておきだッ!


 そんなマークが俺の手に「ぷにゅん」とくっつき、振り被られる。

 それでもって、驚愕する奴らのドタマにブチかましだッッッ!!!!!


 ――その瞬間、大地が揺れた。


 木々がざわめく。

 大気が震える。

 遥か上空の雲さえ弾け飛ぶ。


 そして大量の野盗どもが瞬時にして方々へと吹っ飛んでいった。


 だが、だからといって木などへの激突死は無い。

 なぜならコレに叩かれたら最後、体がまるでパチンコ球のようになっちまう。

 体は固まり、障害物とぶつかれば反発でさらに強くぶっ飛んでしまうのだ。

 しかもふんだんに力を込めてぶん殴ったからなぁ~~~


 これは隣国どころか山越えくらいは覚悟してもらおうか!


 そんな訳で一瞬にして大多数の野盗どもが場から消えた。

 残るは六人、それも俺の一撃に怯えて狼狽している。


「な、なんなんだコイツは!?」

「こ、こんなの聞いていないぞ!?」

「クッ、撤収だ、撤しゅ――ウッ!?」


 しかしそんな最中にリディスとか呼ばれていた二人組が反撃に出る。

 狼狽えた二人をあっという間に斬り捨てたのだ。やるじゃないか!


 さらに逃げようと背中を見せた男の脚に矢が刺さり、堪らず倒れ込む。

 すると残った三人が何を思ったのか俺目掛けて突っ込んできやがった。


 ただそれも揃って塞き止められることなったが。


 突然地面から氷柱が伸び、三人を串刺しにしたのだ。

 これが魔法か、なかなかにエグいな……。


「や、やった!」

「やるじゃないウルリーシャ!」


 奴らを一掃したからか、セリエーネとウルリーシャがこっちにやってくる。

 するとリディスと呼ばれた人物も二人の存在に今やっと気付いたようだ。


「まさか、セリエーネとウルリーシャか!?」


「「はい、そうです!」」


「あれほど逃げろと言ったのに、どうして戻ってきたのだ……!」


「そ、それは……」


 でも可哀そうに、二人は怒られてしまっていた。

 そうしたらバツの悪そうなセリエーネの視線が俺へと向けられていて。


「だってグリーンマンのピクトが私たちのことを助けてあげたいって!」


 おおい!? まるで俺のせいみたいに言わないでくれる!?

 ……と言いたいが、とてもそんなことを言い出せる雰囲気じゃない。


 リディスという男、さっきのウルリーシャ以上に怪しんできて凄く怖いです。


「貴殿がぐりーんまん……? ま、まぁいい。助太刀に感謝する。だが今は悠長にしている暇は無い。女王陛下が攫われたのだ!」


「女王……?」


「また一つ、御助力を願えるか?」


「……任せろ!」


 どうやら怖いと思ったのは目つきだけで、声色は落ち着きを伴ったものだった。

 深刻そうに頼まれたし乗らない訳にはいかないだろう。


「こっちだ、ついてきてくれ!」


 それに疑っている暇も無いんだろうな。

 すぐに飛び出すように森の中を駆け抜けて行ってしまった。

 彼らにとってその女王様って存在はそれほど大事だってことに違いない。


 しっかし、これはもう一時間どころじゃ済まなさそうだ。

 すまないギネス組、後で追いかけるから適当にブラブラしててくれよぉ!

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