第18話 残された謎 (第一章 完)

§ デートの続きをする羽目になった俺と京子だったが…


 俺と京子の二人にとっては場違いな雰囲気のカフェで、少し京子と話をした。


「リカのこと、あれでよかったのかな」


「うん、大丈夫そうだった。もし何かあったら、俺たちで全力でフォローしよう」


「そうだね。3人はこれからもずっと友達だからね」


 そう言うと、急に京子が真剣な眼差しになった。


「あれから、最近起こったことを整理してみたのよ。そうしたら、どうしても理解できない、不思議な出来事があるの」


「不思議な出来事? あの氷結魔法のことか?」


「それもあるけど、ちがうのよ。もっと不思議なことが」


「なんだろう? 俺には思い当たることないよ。PSVR-HD仮想現実には驚いたけどね」



「リカが、可愛いペットたちの名前を憶えていたよね?」


「そうだね。リカって意外と記憶力良いんだね」


「それが変なのよ。よく思い出してみて。女神様がペットの名前を呼んだとき、あの場所にリカは居なかったわ」


「え? あ、たしかに。あの時はリカは発狂していて、それを止める方法を女神様に聞きに行った。あの時だったよね」


「ペットの名前、誰かに話した?」


「誰にも話していない。リカが、ペットの名前を知っているのは、変だな」


「でしょ。それに、私でも手に負えない膨大なデータを、簡単に検索して必要な情報を取り出していたのも、私からすると、すごく不思議なんだよ」


「そうだね。京子より優れた技能って、ちょっと考えにくいよね」


「それを考えると、夜も眠れないの。リカは本当に良い子でしょ」


「それは紛れもない事実だ」


「だとしたら、私たちの知らない、何か秘密があるのかしら?」


「うーん、判らないね。でも今は平穏だし、リカも気持ちを持ち直しているから、いまはそっとしておこうよ」


「そうだね。今、アレコレ詮索するのはやめておこう」


 それから俺たちは、不慣れなデートの続きをして、家に帰った。


---


 リカは、二人と別れた後、ひとり夕日を眺めながついぶやいた。


「京子も、あと20年ちょっとで寿命がくる。あっという間だね...」


 手には、女神様からの秘密のデータに添付されていた、240年前の集合写真の画像があった。

女神様の後ろにひっそりと映っているリカに似た女性は、余りにもリカにそっくりだった。


 その事には、俺も京子もまだ気がついていない。


--- 第一章 完 ---


一章あとがき


ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございます。


ようやく一章が終わりました。最初の原稿よりも、倍ぐらいに膨らんでしまったため、長くなりすぎました。ここまで読んでいただいた皆様の、忍耐力に感謝いたします。


王道のとても楽しいストーリーが多い中、空想科学的な要素の強い世界設定ですが、皆様の気分転換になっていただければ嬉しいです。


第二章は、これから推敲に入ります。皆様のご意見、評価など、フィードバックをより良い作品に生かしたいと思っております。


この物語は、全8章程度のボリュームを想定しております。今後は、さらに楽しく、読んでいてストレスの無い展開で、それでいて含蓄のある、読者の皆様の心に響く作品にしていきたいと思っております。


もちろん、書籍化、アニメ化、ゲーム化など、商用への展開も、将来的にはあると嬉しいです。まだまだ力不足ですが、今後も精進していく所存です。


何卒、これからも、本作品をよろしくお願いします。


2024年5月5日 千代 煌(ちとせ ひかり)


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