第5話 教会遺跡の探索
§ 2度目の教会遺跡に挑む。チョークで書かれたメッセージの意味は。。。
教会の石の階段の前に、俺、京子、リカの3人が立っている。
前回と違って、それほどの恐怖はなかった。チョークで書かれた警告も、2度驚くことではない。
建物は風穴だらけで、今にも崩れてきそうだ。
礼拝堂と思われる場所に椅子や机はなく、ガランとしている。中央奥には、御神体と思われる裸の男性像と、その横に衣服を纏った女性の像がある。
男性像の後ろにはボロボロのステンドグラスがあり、吹き抜けから差し込む
部屋の四隅には、人間大の翼を持つ蛙の化物の石像があり、こちらを睨んでいる。
「へぇ。ここが教会という場所か。宗教の儀式を行なっていた場所だろ?」
「そんな禍々しいものじゃないよ。日常的に人が集まって、祈りを捧げていたんだ」
「何を祈ってたんだ?」
「さぁ、わからない。太古では人が殺し合いをしていたので、それをやめて欲しかったんじゃない?」
「それって、祈ると解決するのか? この像にはそんな秘められた力があるのか!? うーむ、確かにとてつもないパワーを感じる」
中央の少し段になっている場所の奥に、あまり傷んでいない大きな箱のようなものを見つけた。
京子がその箱をガチャガッチャと弄り始め、開けようとしている。
「おい、やたらなものに触らないほうがいいよ。それより、この建物の年代測定をしよう」
「じゃ、お願い」
京子は自分の手を止めようとはしない。リカは後ろの方で両手を合わせ、まるで祈りを捧げているかのようだった。
年代測定をすると、この教会は建てられてから300年ほどだった。1000年前のものではない。建物の崩れ具合から、だいたいそんなものだろう。やはり、歴史は改竄されていたのだ。
「開いたよ!」
京子が嬉しそうに叫んだ。中には、美しい女性の姿をしたアンドロイドが横たわっていた。
「これが、女神様の正体なのか?」
京子はまたもや彼方此方いじり始めている。どうやら女神様(アンドロイド)を
封印された電源のようなものを見つけた。それを京子はなんの躊躇もなく封印を解いてスイッチを入れてしまった。その時、
「きゃー!」
後ろの方でリカの悲鳴が聞こえた。
四隅にいた化物の石像が動き出したのだ。なんというお約束な展開。。。。
「あれは、ガーゴイルと言ってここを守っているロボットよ」
さすが博識な京子。あんな化物の名前まで知っているとは。
ガーゴイルは俺たちに容赦なく襲いかかる。必死で応戦するが、俺の魔法では全く歯が立たない。
ふと横を見ると、京子が3匹のガーゴイルと対峙している。奴らは誰が一番強いのかよくわかっているようだ。
俺は1匹のガーゴイルを相手にするのに手一杯で、とても京子の助けに入ることはできない。
リカは?
辺りを見回すと、両手で耳を塞いで目を閉じたまま、失神している。ガーゴイルも攻撃対象と認識していないようだ。
(そうか、死んだフリという手があったのか)
感心している場合ではない。石でできているガーゴイルにはまったく魔法が通じない。
(リカは大丈夫だが、京子があぶない)
京子のガードをかいくぐり、ガーゴイルが京子に襲い掛かる!
俺は咄嗟に京子に飛び掛かり、京子に覆い被さった。ガーゴイルは俺の背中に噛みつこうとしている。
「やめてー!」
京子が大声で叫んだ、次の瞬間。4体のガーゴイルは全てカチコチに凍り、地面に落ちて砕け散った。
(あの時と同じだ)
女教師に殺されそうになったときと同じことが起こった。
いや、あの時よりも遥かに強力な氷結魔法だった。女教師は凍って砕け散ったりはしていない。
俺は、京子に覆い被さっていたから、氷結魔法を撃ったのは京子ではないことはわかる。もちろん俺は何もしていない。
リカは?
リカは気を失って、両手で耳を塞いだままの姿勢で倒れていた。
なぜ、俺は命の危険に晒されると強烈な魔法で助けられるのか。不思議というより怖くなってきた。
京子も同じ思いだろう。普段は怖いもの知らずの京子の顔が、恐怖に包まれていた。
—-
リカを叩き起こし、眠っている女神様(アンドロイド)の側まで行った。
電源は入ったようだが、
「これ、魔道器だ。おじいちゃんにもらったのと同じ」
旧式の魔導器が、なぜ置いてあるのだろう。魔導器は原則的に1人にひとつずつ配布され、死ぬまで身に着けておくものだ。外すことは法律で禁止されている。持ち主が死なない限り、魔導器が単体で置いてあるのはおかしい。
もちろん、形見として残すのも禁止されている。速やかに返却して処分されるべきものだった筈だ。
俺たちは、この場所が存在する証拠として、旧式の魔道器をひとつ持ち帰ることにした。
腰を抜かしたリカをおんぶして。
--- 第5話 END ---
次回、重大な事を忘れていた二人は...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます