第8話 おばさんの秘密
おばさん(京子の母)は、なぜオプティマイザーについて詳しく知っているのか、その理由を俺たちに語ってくれた。
「それはね、私が若い頃、オプティマイザー育成機関の教官だったからよ」
「えぇ? それってAI政府の?」
「そうよ。魔法学校を歴代最高の成績で卒業した私に、AI政府から声がかかったの。もちろん、私が反政府組織だと知らずにね」
「それって…!?」
「AIはね、常に合理的な判断を下すのよ。オプティマイザーを強くするには、誰を教官に指名するのが最善か考えた結果、私が選ばれたわけ」
「敵に訓練をお願いするなんて、間抜けな話ね」
「そうなのよ。だから、バレないように私もちゃんと役割を果たしたわ」
「敵を育ててしまったのですか?」
「そうよ。そうしないと、私の素性がバレて大変なことになるからね。仕方ないのでちゃんと鍛えてあげたわ。でも、皆の得意技や弱点はすべて把握しているから、いざ戦闘になったらかなり優位に戦えるわよ。それに、彼らに対処法を教えていない魔法は幾つもあるわ。こちらの手の内は見せてないのよ」
「なるほど。そういうことだったんですね。おばさんがいる限り、オプティマイザーは敵ではないということですね」
「まぁ、そういうことになるかしら。ほほほ。(ドヤ顔)でも、トップクラスの数人はとても強いから気を付けてね。先日倒したような雑魚は私が瞬殺してあげるわ。あいつは落ちこぼれで、私がお情けで卒業させてあげたのよ」
あれが落ちこぼれか… でも、オプティマイザーの戦力や弱点を握っているのは強みだな。これからの戦略が立てやすくなる事は間違いない。
京子が、政府組織の情報について手がかりを掴んだらしい。
「施設のAIに侵入させたウイルスから有効な情報を収集できたわ。大規模な粛清を行うという話は本当みたい。いま、対象者のリストにアクセスを試みているところなの。リストが入手できたら連絡するわね」
京子のハッキング能力は頼りになる。
この後おばさんの自慢話をしばらく聞かされた後、解散して皆は帰宅した。
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翌日、魔法学校の教室でリカに声をかけられた。
「ちょっといいかな? 話があるのだけど」
俺たちは
「昨日の夜にね、お母さんからもいろいろと昔の話を聞けたの。あなたに関する事もあったから、話しておくね」
そう言って、リカが母親から聞いた話を俺に語ってくれた。
戦争が始まる前、女神様が人間社会を管理するAIだったころ、アンドロイドと人間との共存について多くの研究が行われていた。その中でも重要だったのは、人間を進化させてアンドロイドと同等の能力を持たせるという研究だったらしい。
一つは高性能な魔導器によって強い魔法能力を得ること。それであのブレスレッド型の魔導器が開発された。そしてもう一つは、半永久的に歳を取らない人間を作り出す事だった。
魔導器は完成したが、寿命についての研究はうまくいかず、多くの治験者が老化を食い止められずに死んで行く中で、一人だけ全く年を取らない人間が誕生したのだと。それがこの俺らしい。
なぜ俺だけが成功したのか、その理由については未だに解明されていない。そのため、今のAI政府は俺のことを必死で探してる。京子の母や俺の両親による完璧な隠蔽工作が功を奏して、この俺が不老の力を持つ人間だということは、現時点ではAI政府に知られていない。もしもバレてしまったら、オプティマイザーが群れを成して俺を捕らえに来るだろう。
「ありがとう。なるほど、俺が歳を取らなくなった経緯がよくわかった。たまたま成功したということか。複雑な気分だけど、自分の運命は受け入れるしかないね」
「うん、こうしてクラスメートとして出会えたのだもの。私にとっては良かったわ♡」
「それでね、私の事なんだけど、あなたに話しておきたい事があるの」
「リカの事って?」
「あなたは記憶障害で、3年以上昔のことはよく覚えていないのでしょ?」
「ああ、13歳までの記憶が断片的にあるだけで、残りの284年分の記憶はほとんど戻っていないんだ」
「実はね、私の記憶は過去1年分しかないの。この学校に編入してくる前の記憶は無いのよ」
「ええ? それって俺みたいに実は数百年生きているとか?」
「そうじゃないわ。お母さんから聞いたの」
リカが深刻な面持ちで何かを話そうとしたとき、京子が飛び込んできた。
「ここに居たー! 大変なのよ。リカのお母さんが…」
「え? お母さんがどうしたの?」
「粛清予定者のリストが手に入ったのよ。そうしたら、リストのいちばん最初にリカのお母さんの名前があったの!」
「そんな。なぜお母さんが… 今すぐ連絡してみるね」
リカが
「大変! いますぐ家に帰るね」
リカは慌てて身支度をし、学校を早退した。俺たちも後に続いてリカの家へと急いだ。
--- 第8話 END ---
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