第11話 友達
§ 謹慎処分を食らって京子の家でデータの解析を始めた二人。そこに訪れて来たのは…
京子の家は、幼いころから俺の遊び場だった。『勝手知ったる他人の家』というやつである。もっとも、京子の親と俺の親は、血縁関係はないが遠い親戚らしい。なので、京子家と俺の家族は、生まれる前からの付き合いということになる。
「この
京子が困った顔で言う。珍しいこともあるものだ。どんなプロテクトも簡単に突破する京子が、アクセスできないなんて。
「もしかしたら壊れているのか知れないから、あなたの
そう言って、俺の
「京子、お友達が来てるわよー」
京子の母親の声だ。京子は
「おばさん、わかりましたー」
俺が代わりに返事をする。
しばらくすると、
「こんにちは。お邪魔します」
そう言いながら、リカが部屋に上がって来た。
今日は学校で審問会だったはずだ。
リカの表情はとても明るかった。昔のリカに戻った様に。俺はリカの顔を見て、少し安心した。
(退学は免れたのかな)
その淡い期待は、このあとすぐに打ち砕かれる。
「みんな、ありがとうね。教頭先生もあなたたちこの事、とても良いお友達だから大切にしなさいって」
「それで、どうだったの?」
俺は、恐る恐るリカに尋ねた。
「ああ、心配ないわ。暴力事件は、警察には告訴せずに、記録上は教頭先生と戯れていたという事になったの。
「そうなんだ。理解があってよかったね」
「うん。だから、退学だけで済んだの。刑務所にも行かなくていいし、被害者への賠償もしなくていいって」
「…」
「結局、退学は免れなかったんだ…」
悔しい… 俺の目から、涙がジワっと湧き出してきた。こんな悔しい思いは生まれて初めてだ。
「俺たちのせいで、本当にごめん」
深々とリカに謝った。
「いいのよ。気にしないで。でも、お願いがあるの」
「お願い? 何でも聞くよ」
「私が学校に行かなくなっても、ずっと友達でいてれる?」
「当たり前じゃないか。リカとはこれからも死ぬまで友達だよ」
「… ありがとう」
先程まで笑顔でいたリカが、突然涙を流し始めて言った。
「ずっと…、友達でいてね…。おねがい」
リカは同じ言葉を繰り返す。この時は、その言葉に隠された意味が判らなかった。
ただ、『友達』という単語が、どことなく、ぎこちないと感じていた。
---
「わかったー!」
突然、京子が大きな声を出した。すぐそばで、
「あ、リカきてたのね。どうだった?」
「うん、退学だけですんだよ」
呆然と立ち尽くす京子。京子もまた、ショックを受けていた。
「気にしないで。京子にもお願い。これからも、ずっと友達でいてくれる?」
「もちろんよ。リカは来世でも友達だよ!」
そう言いながら、京子はリカをしっかりとハグしていた。
(女同士はいいな)
よくわからないが、女性同士の友情が、ちょっぴり羨ましく思えた。
---
「そうそう、この
「やはり、京子のは壊れてたの?」
「違うのよ。この2つの
「すとらいぴんぐ?」
リカには意味がわからないようだ。首をかしげている。
「データをみじん切りにして、2つ以上のデバイスに分けるということ」
「つまり、2つの
ここで、女神さまが俺たちに2つの
「それに、このデータは閲覧はできるけど、他のデバイスにコピーができないのよ。強力なコピープロテクトがかかっていて、私の手には負えないわ」
「京子の手に負えないって、どんだけ強力なんだ?」
「このプロテクトは、
「ふーん、そういうものなのか。つまり、データの移動は一度だけならできるということだね」
「そう、一度だけ。でも、100%コピーに成功する確信がなければ、怖くて試せないわ」
「ただし、
「それで、
「それがね、データが膨大すぎて、生身の人間が解析したら100年かかってしまいそう。AIにデータを移せれば一発なんだけど、人間って無力ね」
「…」
「私にも見せてもらっていい?」
先ほどまで泣いていたリカが、少し元気を取り戻したようだ。
「もちろんよ。みてみて!」
魔導器には、情報を表示する機能がある。プロジェクターのようなものだ。リカは、膨大なデータから、いろいろと検索を始めた。
(勉強嫌いのリカにしては意外だな。サクサクと検索を進めている。リカにこんな才能があったのは知らなかった)
そう思ってリカを眺めていた。
「これかなぁ」
5分も経たないうちに、何か手掛かりを見つけたようだ。
--- 第11話 END ---
次回、隠された情報を見た3人は...
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