第10話 校長(AI)の説得
§ リカの罪を許してもらうため、AIの校長に直談判することになったのだが…
翌日、何事も無かったかのように、リカも教室にいた。
「おはよう。今日も仲良く一緒に登校だね」
リカが俺たちを
「今日の午後に、
京子がそう言っても、リカは微笑んでいるだけだった。
クラスメイトのリカの下僕と化していた男共がやってきた。
「リカさん、俺たち、なにも気にしてないよ」
「俺たちリカさんのファンだから、冷たくあしらわれても、全然平気だったよ」
「俺たちからも、許してもらうよう教頭先生に頼んでおいたから。どうか元気出してください」
苛められていた男共も、リカが退学になると知って優しい言葉をかけてきてくれた。酷い目にあわされていたくせに、これもリカの人徳なのか。
「ありがとうみんな。それと、本当にごめんね。私、どうかしてたの。ごめんなさい」
そう言いながら、リカは男共の手をひとりひとり握って謝った。
リカって、本当に良い子だ。外見も性格も、非の打ちどころがない。こんなに良い子が、なぜ退学になろうとしているのだろう。
その原因を作ったのは、紛れもなく俺と京子だ。ちょっとした悪戯心から、とんでもない事件に発展してしまった。まさに、後悔と自責の念である。何としてでも、リカを救わなくてはならない。それが俺たちの唯一の贖罪なのだ。
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午後になって教頭室に行くと、既に
校長から話を切り出した。
「詳細は教頭から聞いています。まず、あなたたちの犯した罪です」
・博物館への不法侵入
・セキュリティシステムへの不正アクセス
・所蔵品の窃盗
「これらの罪状があります。いずれも、加護できないレベルの校則違反です」
「わかっております。私たちへの罰は甘んじて受ける覚悟です」
「よろしい。己の罪を告白したことは認めましょう。減免の材料になります」
校長は、淡々とした口調で話した。
「それで… リカの処分なのですが…」
「その件について、入院先の
「リカ君は、ストレスによる解離性障害。つまり、ヒステリーですね。心神喪失状態ではないと診断されております」
「そうではなくて、ブレスレッド型の旧式魔導器と現代の魔導器との干渉で、精神状態がおかしくなったのですよ」
「そのような根拠も証拠も認められません」
「まず、この古代の遺物である
「もう一点、
「よって、あなたたちの主張には、根拠も証拠もなく、友達を庇うために作り話をしていると判断するのが合理的です」
「そんな… 良く調べてください。旧式魔導器の起動は、女神様によるものです」
「その、女神様というのは、3000年以上前に人類が作り出した偶像であり、現実のものではありません。あなたたちが主張する、地下の遺跡も教会も存在しません。1000年前からあの場所は更地で、100年前に博物館が建設されたのみです。それ以外のものは、あの場所には存在していません」
「明日、リカ君の審問会が開かれ、処分が決定します。彼女に謝罪と弁明の機会を与えるためです。もちろん、彼女の態度や気持ちも、減免の判断材料ではありますから、彼女にはそう伝えておいてください」
「あなた達の処分は既に決定しています。明日から、自宅謹慎1か月です。あなた達への減免事由は、自ら罪を告白したこと、嘘をついてまで友達を庇う友情。この2点を評価しました。この寛大な処分に感謝しなさい。以上」
淡々とした口調で話し終わると、
確かに、寛大な処分かもしれない。でも、取り付く島もなく、一方的な話で終わってしまった。しかも、反論の余地もほとんどない。ただ、教会や女神様の存在が認められないというのは明らかに事実と違う。確かに博物館の地下に、教会の遺跡は存在していた。また、
すでに地下への入り口は塞がれている可能性が高い。私たちが持ち出した
でも、俺たちには動かぬ証拠がある。女神様が、歴史改竄のデータをブレスレットにコピーして渡してくれたからだ。このデータを使って、なんとかAIの隠蔽を暴き、リカの退学処分を取り消してもらわなければならない。
いかに
「明日から、京子の家でデータの解析だ」
「うん」
京子がうれしそうに頷いた。
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