第7話 戦闘

§ 突然の襲撃に応戦する3人…


 二人の敵が現れると同時に、リカが氷結魔法フリーザスを発動。相変わらず速い! ところが、二人はすぐさま炎の壁ファイヤーウォールで氷を溶かす。


 俺と京子がファイヤーボールの連続攻撃を2人に打ち込むと、敵はそれぞれマイクロブラックホールを出してファイヤーボールを吸い込む。


 ところが、俺の放ったファイヤーボールは、京子の時と同じように、吸い込む速度が徐々に遅くなっていき、その場で大爆発を起こした。敵は爆発に巻き込まれてダメージを受けている。


 京子の攻撃をマイクロブラックホールで防いだもう一人の敵に、リカがタイミングよく氷結魔法フリーザスを浴びせる。敵が凍ったところで、再び俺が特大のファイヤーボールをお見舞いした。敵がダメージをうけてよろめいた隙に、京子が拘束魔法で縛り上げて1人を戦闘不能にした。


 しかし、マイクロブラックホールの爆発でダメージを受けていた敵が立て直し、広範囲の電撃魔法チェインライトニングを放った。咄嗟にリカが金属製のメッシュのような導電性バリアを出して、俺と京子を電撃から守ってくれたのだが、近くにいたかえでに電撃が直撃してしまう。


 店長のおじさんは、俺たちが応戦している隙を見て、ポチと奥の部屋のほうに逃げて行った。警備の男たちも、自身の防御に専念しているようで立ち尽くしているだけだった。


 電撃を放った敵が、今度は広範囲な火炎魔法メテオを放つ。頭上から無数の火の玉が降り注ぎ、リカが咄嗟にかえでを守る。そして、俺と京子が離れた場所から同時にファイヤーボールを2発ずつ計4発敵に打ち込んだ。敵はマイクロブラックホールで防御するが、俺の一発目のファイヤーボールで消滅、残りの3発を食らってダウン。すかさすリカが強烈な拘束魔法で二人目の敵を縛り上げた。


「ふう、なんとか倒したね」


「うん、リカの先制攻撃が効果的だったよ。ありがとう」


 強敵であったが、こちらは3人の連携がうまく取れていた。とくに、早いタイミングで1人目を倒せたのが大きい。後半は1対3の戦いとなり、あっさりと決着が着いた。


---


 俺たちが安堵していると、奥から店長が戻ってきた。


「やったのか! なんということだ。私はもう終わりかと思ったよ」


 そう言いながら、両手を上げて喜びと驚きの表情で俺たちを賞賛した。


「おい、こいつらの怪我の手当てをして、牢にぶち込んでおけ」


 店長は、警備の男たちに命じて、拘束魔法で動けなくなっている侵入者を施設の奥にある医務室へ連れて行った。


「驚いたよ。君らは一級プロンプター並みの魔法使いだね。奴らを容易く撃退してしまうなんて。いったいどこで魔法を鍛えたんだね?」


「えーと、僕たちは魔法学校の生徒でして… どこでと言われたら学校かな」


「今の魔法学校は凄い魔法を教えるんだな。まったく驚いたよ」


 ポチが心配そうにリカのほうに駆け寄り、顔を舐めている。すっかり懐いているようだ。


「リカさん、助けてくれてありがとう」


 かえでがリカにお礼を言っている。ただ、俺とは視線を合わせようとしない。全くもって嫌われてしまったものだ。


「疲れただろう。メンテナンスアンドロイドがエレベータを治すまでの間、奥にカフェがあるから、そこで一息つこう」


 そう行って、店長はテーブルが並んでいるだけの殺風景な部屋に案内してくれた。


---


 俺たちは、あまりおいしくない珈琲を飲みながら、店長のおじさんと話を始めた。


「君たち、京子さんが姿を消して、さぞ心配したことだろう。黙っていてすまなかった」


「私もウソをついてごめんね。店長に固く口止めされていたの」


 かえでも俺たちに謝ってくれた。でも、俺に対してはあまり悪そうな表情をしていない。(ツンツンしているのは地顔なのか?)


「この場所が当局に知れることは、何としても防ぎたかったし、京子さんの安全を最優先したかったんだ」


「わかります。京子を助けてくれてありがとうございます」


「でも、先ほどの襲撃で、いよいよここも安全ではなくなったようだ。100年間当局に知られずに済んでいたのだが、残念ながらこの施設を放棄して、別の居場所を探さなくてはならない」


「俺たちのせいで申し訳ないです。それで、他にもこのような地下深くの施設はあるのですか?」


「ああ、今から250年ぐらい前に、いまのAIと旧型のAIが争っていたころ、世界中の至る所にこのような秘密の施設が作られたんだ。ここはその中の一つというわけさ」


「では、他にもこのような施設があるのですね」


「私達の知る限りでは、当局に所在を知られていない施設はここが最後だった。これから新しい居場所を探さなくてはならない。そのためには、私達と同じような活動をしている他のグループを探す必要がある」


 この人たちにも、仲間が必要なんだ。俺や京子の家族と同じ境遇なのだと思った。


「君たちは、人並外れた能力の持ち主だ。もしや、どこかの反AIグループの関係者ではないかと思ったのだが、違うかね?」


 俺は、喉から出そうになる言葉を押し殺して、はぐらかせた。


「いや、俺たちはタダの学生で… 京子は学園トップの能力の持ち主ですが、それだけです」


「そうなのか。もし、君たちの誰かが、私達のような反AIのグループとの繋がりを持っていたら、是非コンタクトを取りたいと思っている。特に、旧時代のAIが今でもどこかで稼働しているらしい。私達は、どうしてもその旧式のAIとコンタクトを取りたいんだ」


 そういう話なら、ちょうどいい。俺たちも仲間を探していた所だし、女神様との連絡は、PSVR-HD物理VR装置を使えばどこでもできる。


「京子、PSVR-HD物理VR装置起動できるか? 店長さん達に見せてあげよう」


「ええ、ブレスレット旧式魔導器は装着しているから、いつでもできるわ。ちょっとまってね」


 そういうと、京子はPSVR-HD物理VR装置で女神様の教会のデータをロードし始めた、その時、


「ちょっと待って!」


 リカが大きな声で京子を止めた。


--- 第7話 END ---


次回、リカが見たものは?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る