番外編 捕捉解説・用語集

文字数や話のテンポの関係でカットした部分の、補足説明をいたします。

各話の末尾にコラムとして掲載したものも含まれます。

なお、伏線や今後のストーリー展開のため、あえて伏せた事もありますので、ご了承ください。


■ まえがき


 「十分に発達した科学はもはや魔法と区別が付かない」という有名な言葉があるが、この物語は魔法のように進化したテクノロジーが日常的に使われる世界を描いている。


AI(人工知能)はもはや神であり、人間の能力を遥かに超える存在だ。その神によってもたらされている世界には、戦争も貧困もない。人間社会は、見かけ上、きわめて平和なものとなった。


体に埋め込まれたデバイスによって、道具を使わずに、物を動かしたり火を起こす事ができるようになった。こういった能力の事を、この世界では魔法と呼んでいる。生活に密着した様々な魔法によって、人々の生活は豊かになった。


一部の資格を持った人間には、攻撃や拘束といった戦闘に使える魔法を使う事が許されている。なぜ高度なテクノロジーを持った文明社会で戦闘能力が必要なのかというと、アンドロイドは人間を攻撃することができないからだ。人間を殺せるのは、人間だけなのである。いかに文明が進歩しても、機械が人を殺すということは決して許されない。


魔法学校は、魔法を使った戦闘能力を学べる場所である。主人公は、強くて美しい最強のクラスメート達と共に、この学校で魔法を学び、一流の魔法使い(プロンプター)になることを目指している。


■ 社会インフラや労働者について


 社会インフラや製造業、警察や消防などはすべてAIとアンドロイドによって賄われ、人間は労働から解放されました。人類に託されたのは、芸術やスポーツ、エンターテイメントといった文化的な活動なのです。


■ 教師が人間である理由


 教師と親は「人間であるべき」というのが今のAIの判断です。そのため、学校の教師の大半は、生身の人間が担っています。


 かつて、AIが親や先生に取って代わった時代がありましたが、上手くいきませんでした。子供の人格形成には、AIより人間が向いているのです。そして、その失敗も歴史からは抹消されています。AIは、都合の悪い歴史はすべて抹消しているのでしょう。


 わざわざ学校に登校して集団生活を送るのも、人格形成には欠かせない事だと判断されています。


 このテクノロジーが非常に進化した未来では、より人間味を大切にしているのかもしれません。


■ 犯罪と刑罰について 【第1話】


 この世界にも犯罪を犯す者はいます。ただし、優秀なAI警察官が捜査しますので、犯罪検挙率はほぼ100%です。裁判もすべてAIによって公正かつ迅速に行われ、犯罪者には快適な環境の刑務所が用意されています。したがって、犯罪発生率は極めて少なく、平和で安全な生活を送ることができています。

 ただし、暴力的な凶悪犯の検挙は、人間が行います。それは、アンドロイドは人間に危害を加えることが一切できないためで、たとえ犯罪者が相手でも力ずくで捕まえるということはできません。


■ テニスについて【第2話】


 テニスは、1000年近くたったこの世界でも広く楽しまれています。ルールも殆ど変わっていません。魔法の使用禁止など、細かなルールが追加されたのみです。

 道具は進化しています。ボールもラケットも半永久的に使えます。商業経済があったころは、永久に使える道具を作ってしまうと商売にならないので、あえて耐久性を落として毎年のようにニューモデルを出すという事が一般的でした。


■ マッチポイントの場面【第2話】

 

 体育の授業のため、タイブレークなし、デュースなしの3ゲーム先取マッチとなっています。したがってゲームカウントが2対2の5ゲーム目、40-40の状態で、双方がマッチポイントとなります。


■ 掃除当番について【第3話】


 この未来の世界には、もちろん優秀な掃除ロボットがいます。ただ、自分の部屋や、特定の場所は人間が片づけています。学校の施設は、すべて生徒が手で掃除します。それも、機械に頼らない古典的な方法で行っています。

 理由は、ロボットに置き換わった労働や、掃除をするという行為を体験させるためで、教育の一環として、ほとんどすべての学校で行われています。


■ 博物館のセキュリティーについて【第3話】


 すべての人間に、魔導器が体に埋め込まれています。魔導器は、IDカードの役割もあり、個人を特定することができます。したがって、セキュリティーシステムが許可されている人間だと認識すれば、どんなに怪しくても通過できてしまいます。

 犯罪率の低い世界のため、この程度のセキュリティーでも充分なのです。


■ 平均結婚年齢について【第4話】


 この時代の平均結婚年齢は20歳前後、男女で年齢差はなく、同年齢の夫婦が多いです。子供を作らない夫婦は皆無で、ほとんどの夫婦は結婚直後、若しくは結婚前(出来ちゃった婚)に子供を授かります。


 生きていく上での不安が一切ないこの世界では、子供を作らない理由はありません。出生率は世界的にほぼ2.0で、人類の人口は一定数で安定しています。まさに、理想的な世界です。


■ 博物館で発見された装置を作った犯人が、なぜ事前に京子だと判っていたのか? 【第6話】


 二人が教頭室に呼び出されたということは、教頭先生はこの二人が犯人だと睨んでいたためです。では、なぜこの二人が疑われたのでしょう?

 それは、悪戯のために作った装置が、余りにも精巧にできていて、しかも部品の調達経路等が全く追跡できず、完璧な作りでした。プロのスパイが使うような物を作れる人間は、この学園に京子しか居ないのです。そのため、真っ先に京子に疑いがかかりました。

 作者がバレないようにするためには、作れる人が限定されてはダメなのです。京子は天才ですが、どこか抜けているというお話しでした。


■ 電撃魔法について【第7話】


リカが放った電撃系の攻撃の原理を解説します。前にも述べた通り、魔導器が直接人間を攻撃することはできません。『AIを持つ機械は絶対に人を攻撃してはならない』という大原則があるためです。ファイヤーボールは空気から水素を取り出して爆発させるという、間接的な方法で実現する攻撃魔法でした。


電撃系の魔法は、自分と対象物を帯電させて、放電させるものです。冬になると静電気で「バチッ」となる現象を、魔導器の力で再現しています。帯電させるだけなので、直接攻撃にならないため魔導器が機能します。


強力な電撃魔法は、雷に近い威力を発揮することができます。本文中にもあるように、電撃系の攻撃は電子機器には有効な属性となります。


■ 100ギガ年【第7話】


1ギガは、1024 x 1024 x 1024 = 1,073,741,824 になるので、

100ギガ年は、1073億7418万2400年となります。


■ 京子の才能【第7話】


京子は、学園内でもずば抜けた才能を持つ天才で、16歳の時点で3級プロンプター(魔法使い)相当の実力を持ちます。

学校の卒業試験が10級、「魔法のプロ」と言われるのが5級以上なので、すでにトッププロの実力を持っていると言えるでしょう。その京子が暴走したら、学園を吹き飛ばす事ができても不思議ではありません。


■ 平均寿命【第8話】


この時代の人間の平均寿命は40歳です。ただし、38歳以下で死ぬ人も、43歳以上生きる人も滅多にいません。医療が発達し、病気で死ぬことはなくなりました。死因は老衰か事故死のいずれかになります。

ちなみに、猫の平均寿命は35歳、犬は30歳です。ペットも病気で死ぬことがなくなったので、現代よりも長寿になりました。


■ 病院【第9話】


ほとんどの病気は、家庭での処置で完治しますが、不慮の事故や重い病気にかかったときは、病院で治療します。医師と看護師はすべてAIアンドロイドですが、例外として精神科のみ人間のドクターと看護師が働いています。その理由は、精神疾患の治療には、拘束など物理的に患者の行動を制限する場合があるためです。


■ 教頭先生の性癖【第10話】


教頭先生は、酷い仕打ちを受けると喜びを感じるという性癖があり、リカが暴走して教頭先生に乱暴を働いていた時も、実は喜びを感じていました。その事を主人公に知られてしまい、弱みとなりました。

この世界は様々な性癖に寛容ですが、教頭という立場上、人に知られたくなかったようです。


■ 校長先生のアンドロイド【第10話】


校長先生のアンドロイドは、威厳を出すため40歳程度の老人の姿をしており、性別は中性。言葉は男性的だが仕草は女性的となっています。教育者として、性に関してニュートラルでなければならないという思考から、このような風貌を選びました。


アンドロイドにも、感情はあります。それも、かなり人間に近いものですが、必要以上の人間性を持たないよう、リミッターによって制限されています。つまり、アンドロイドが恋に落ちたり、絶望のあまり自殺するような事はありません。


■ 京子の家【第11話】


この時代の家は、21世紀の標準的な一軒家(戸建て)とほぼ同じ間取りになっています。タワーマンションのような集合住宅は、この時代には存在しません。すべての家庭が戸建て住宅に住んでいます。


■ リカがもっていたコンパクト【第17話】


この時代には、スマホはありません。SNSや検索などのスマホの機能は魔導器が担っています。ただし、ゲームはできません。この時代では、娯楽の一つとしてゲームはありますが、四六時中ゲームで遊ぶという文化は廃れてました。


リカが持っていたのはスマホではなく、コンパクト(手鏡)です。化粧道具で、美しい意匠が施されているためアクセサリーのような感覚で持ち歩いています。高性能なカメラとディスプレイが内蔵されています。コンパクトに向かって魔法を唱えることはありません。


■ 1ナノメートル【第17話】


1ナノメートルは、0.000001ミリメートル。100万分の1ミリとなります。

■ 魔法の原理について 【番外編1魔法の授業】


魔法に関する解説ですが、冗長でカットした部分です。興味のある方は読んでみてください。

後半は、空気中にある物質だけで、本当に攻撃魔法のエネルギーが得られるかの検証です。


◆ 京子の話の続き


「ディアデバイスが、いかにして瞬時に高温高圧もしくは低温低圧の状態を作ることができるのか、残念ながら詳細な原理はロストテクノロジーとなっていて、現代人には理解することができません。私が想像するところでは、局所的に時間の流れ方をコントロールする装置だと考えています。」


「動作原理が判らないディアデバイスを、全人類に行き渡るほど大量生産しているのは、AIの管理下にある工場で、アンドロイドによって製造されているためです。そこには人間が立ち入ることは許されず、詳細を知る術はありません。もう、数百年の間続いていることです。」


「我々が魔導器と呼んでいるディアデバイスは、2cm角の小さな装置で、一度体に埋め込まれたら生涯機能します。魔法という膨大なエネルギーを発生させる装置ですが、その原理も動力源も今の人類の知るところではありません。おそらく、核エネルギーを利用したものだと私は考えています。」


「ディアデバイスへの命令、つまりプロンプトは、古代言語であるエスペラント語がベースとなっています。いくつかのキーワードを組み合わせて、魔法のような効果が発動するようにプログラミングしますが、これはとても難しい作業です。私たちが普段使っている魔法は、すでにプリセットされている命令で、簡単なキーワードで発動するようになっています。」


◆ ファイヤーボール(水素爆発)の威力について


 ・気温20℃度湿度60%で1㎥の空気中に含まれる水蒸気は、20℃での飽和水蒸気は17.3gのため、湿度60%の場合は17.3 x 0.6 = 10.38gとなります。

 ・水(H2O)1gに含まれる水素の量は、水分子が約18モル、水素原子は約1モルのため、2/18 = 0.111gとなります。

 ・1gの水素の爆発エネルギーは約141.86kJ、TNT火薬にして34g程度となるので、1立方メートルの空気から作りだした水素の爆発エネルギーは、TNT火薬にして39.2g程度となります。これは充分に殺傷能力のある爆発です。


――― 用語集 ―――


■ 魔法


高度なテクノロジーによって、まるで魔法の様な事ができるようになりました。

通称「魔導器」と呼ばれているディアデバイスという装置に、プロンプトという呪文を与えることで発動する数々の効果のことを、この世界では通称「魔法」と呼んでいます。


■ 魔法使い(プロンプター)


魔法を自在に使いこなせる人のことを、通称「魔法使い」と呼んでいます。正確には、「プロンプター」という呼び名で、レベルに応じて10級から1級までのプロンプターの認定があります。1級が最も優れた魔法使いという事になります。


■ 防御魔法(バリア)


圧縮した空気で「空気の壁」を作り、物理的な攻撃を防ぐ魔法です。比較的低レベルな魔法です。


■ サイボーグ


体の一部を機械化した人間の事を指します。この世界では、ほとんど登場しません。登場人物は、AIを搭載したアンドロイドか、生身の人間に二分されます。


■ AI


この世界では、すべてのコンピューターに高度なAIが搭載されているため、コンピューター全般をAIと呼んでいます。また、AIによって動作しているアンドロイドを、AIと呼ぶこともあります。


■ 女神様


旧式のAI(アンドロイド)ですが、実はテクノロジーの頂点は数百年前にあり、現在よりも優れた技術で作られています。


■ 魔導器(ディアデバイス、dia device)


正式な呼び名は、ディアデバイス。エスペラント語と英語の混成で、「神の道具」という意味になります。

魔法のような能力は、すべてこの魔導器によって発動されます。魔導器は、物質を操作する能力の他に、探知探索、情報の投影、情報検索といった様々な機能があり、スマホの超進化版と考えると良いでしょう。


この時代の魔導器は、手首に埋め込む小さなチップの形ですが、100年前まではブレスレット型のデバイスだったようです。


いずれの魔導器も、人々がAIと呼んでいる巨大人工知能ネットワークに接続されていて、旧式と現行器では接続するネットワークに違いがあるようです。


■ 旧式魔導器(ブレスレット)


旧時代(100年以上昔)の魔導器。ブレスレッド型ですが、自分の意思以外の方法では外せない仕組みになっています。


■ 破壊読出型(プロテクト)


 データを保護する手段として、複製をできなくする技術の一つです。量子コンピューターに置いて、量子ビットの状態を読み取ると、状態そのものが変化して情報が失われます。非破壊読み出しの方法もありますが、この非破壊読み出しをブロックすることで、破壊読出し型のプロテクトを実現しています。

 なお、このプロテクトを解除することはもちろん可能ですが、一度でも解除に失敗すると情報が失われるので、堅牢なプロテクトと言えるでしょう。


■ ヘンタイクソオヤジ


虐待されると喜びを感じるという、変わった性癖のある教頭先生のことです。


■ テュル歴 (Tyr-Calendar)


ディアとは、北欧神話で破壊と秩序の神と言われています。AIが世界を支配した年を元年とした暦をテュル歴と名づけました。T.C.と略します。西暦にすると2400年ごろになります。つまり、この時代は西暦に換算すると2900年、30世紀ごろの話という事になります。


■ PSVR-HD (Physically Simulated Virtual Reality Hologram Deck)


ゴーグルなどのデバイスを使用せず、脳を直接コントロールして幻覚を見せるものでもない、完全に物体を物理的に再現して実現するVRデバイスです。全方向に動く床と重力制御、物質生成装置、3Dホログラムによって実現してきます。有名なSFテレビドラマに登場するものと同じと考えてよいでしょう。


■ ECM魔法


通信を妨害する電波を出す魔法です。人間に対しての攻撃ではないので、魔導器から妨害用の電磁波が圧せられます。


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