31、5階層探索

「来たぞ5階層! 本当に森なんだな」

「パパったらはしゃいじゃって、可愛いんだからぁ♪」

「旦那様、ハァハァ」

「なぁ、もう姫織の歯止めが利いてないんだが?」


 あの水着を買った彼女にナニがあったのか。それは各々のご想像に任せるのである。各々方よ!


 とうとう金多たちは5階層へと到達していた。

 洞窟であった1、2階層、起伏に富んだ草原であった3、4階層を越えれば、鬱蒼とした木々が生い茂る5階層が出迎える。


 この階層でもDランクはたまに出る程度であって、主なモンスターはFランク、Eランクのものとなる。ただし、視界の悪い森の中で群れで現われたり、状態異常を引き起こす攻撃を仕掛けて来たりと、5階層の名に恥じぬいやらしさを持っている。

 恥のないいやらしさとはなんといやらしいことなのか。

 自重してもらいたいものである。


 が、そのようなことをダンジョンに言ってもはじまらぬ。

 これまで以上の慎重さ、状況に合わせた判断、そして状態異常を回復させるアイテムか仲間が必要となるのだ。

 ちなみに、


『あたしのロリボディはたいていの状態異常を弾けるわ!』

 ロリボディとはスキルであったのか。


『私は冷気で状態異常の活動を停止させます』

『オレは熱気で状態異常を焼き切るぜ』


 そっかぁ、魔法かぁ。それぞれの魔法を応用させて対処しているのかぁ。

 流石はBランクとAランク。

 Dランクになりたての『身体強化』のみのテイマーとはものが違うのだ。

 嘘、俺の状態異常耐性だけガバガバ……?


 ここに来る前に彼女たちが装備の更新を勧めたのも無理のない話であった。


「じゃあ金ちゃんが先頭で、5階層探索行ってみようか」

「イくイくー♪」


 陽香にリリィがのんきな声で合わせて、金多は先頭に立って森に足を勧めることになったのだ。



   ◇◇◇



「せいっ! やぁっ!」

「ふふっ、パパ流石ー。やっぱりこの程度じゃ、もうパパの敵にはならないわね♪」


 寄って来たソルジャーアントを切り捨てて行く金多に、リリィが黄色い声を上げていた。Eランクの蟻型モンスターだ。

Dランクモンスターのトロールを斃せたこともあって、この程度なら容易く斃していけるほど、金多のレベルは上がっていたのである。


 ――自分でもこうサクサク斃していけるってビックリだな。良しっ、俺は5階層でも通用するぞ!


 とは思うのだが、


 ブゥウウウン……


「キラーホーネット……」


 蜂型のEランクモンスターである。同じくEランクモンスターではあったが、噛みつき主体のソルジャーアントとは違って彼らは飛べるし毒針も持っていた。修行と称して大コウモリの大群と戦わせられたのは許しがたい思い出だったが、やはり同ランクでも空を飛べる分だけ強く、尚且つ毒とは恐ろしいものなのだ。

 金多は気合いを入れ直して、


「せぇっ――」


 と斬りかかろうとして、キラーホーネットが素早さも兼ね備えたモンスターであると慎重に構え直す。

 そして、


 ぶぅうっ、


「おぉっ!」


 斬ッ!


 見事にキラーホーネットを両断した。が、


 ぶぅうううん、

 ぶぅうううん、


「チッ、こいつら群れなのかよ」

「そりゃあ、蜂だし? ほら、頑張れ金ちゃん」

「おう!」


 金多は蜂の群れにも臆せず向かっていくのである。


 :パパも成長した……ホロリ

 :うむうむ、パパを育てたのはワシだ

 :後方父親面してる奴らが出てるぞw

 :つまりはリリィたんのおじいちゃん!? おじいちゃん、お孫さんをぼくにください!

 :いやいやちゃんとパパに言いなよ、ほら、めっちゃ蜂切ってるやろ?

 :パパもついに怖れられるようにw


「はぁあああッ!」


 金多は今、十全に輝いていたのだった。



   ◇◇◇



 森という視界の悪いフィールドで、状態異常持ちのモンスターが群れで襲いかかってくる5階層。金多は慎重に歩みを進め、その危なげのなさはむしろ慎重すぎるのでは、と思うほどだったが、陽香や姫織からは評価された。


「良いぞ、金ちゃんの慎重さはちょうど良いくらいの感じだからな。それを維持して行こう」

「流石です、旦那様」

「ありがとう、ほら、リリィ、魔石だぞ」

「あぁーんっ、うん、ありがとうパパぁ♪」


 和気藹々。

 ただしサツバツと緊張感は持って。


 :ってかよくよく考えなくても贅沢なパーティメンバーだよなw

 :Aランク相当モンスター、Aランク探索者、Bランク探索者

 :それだけいて教えてもらえれば俺ももっと上に!

 :じゃあお前はパパみたいに立ち向かえるのかよ

 :ごめんなさい

 :速っw


 ひゅんっ!


「うぉっ!?」

「おっ、キラープラントだな」

「見ての通り、蔓を鞭のようにして襲いかかってくる植物型モンスターです。ですが旦那様、よく避けましたね」

「あ、ああ、なんか躰が反応したわ」

「流石です」

「俺を叩いて良いのはリリィだけだぞってことよね♪」

「それなら私も叩きましょう」

「お前ら止めろよ!?」


 と声を上げつつも、金多はキラープラントの鞭の合間を見つけて、


 斬ッ!


「ひゅーっ、鮮やか♪」

「あ、ありがとう」

「ま、Dランクとしてはだけどな」

「分かってるよ、フンっ」

「ははっ、金ちゃんそういうとこ可愛いよなー」


 :お?

 :ぬ?

 :まさか姉御にも春が?

 :ただし相手は子持ちの上に娘を含んで二股男です

 :姉御、そんな男選んじゃ駄目だ!


「お前ら何言ってンだよ!」


 陽香が声を荒げる。


「と、また次のが来るな。受けて立ってやるぜ」

「………………」

「ねえ今ちょっとお姉ちゃんキュンとしなかった?」

「べっ、別にそんなことねーし?」

「これは、そろそろですか?」

「姫織もそう言うこと言うんじゃねぇよ!」


 と、5階層は順調に進むことが出来たのであった。

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