13、メスガキ VS Mっつりちゃん

「ふんっ、私にモンスターをけしかけたのですから、これはもう斃してしまっても構わないと言うことですね」

「先に仕掛けて来たのはあんたの方でしょー? ナニ? むっつりちゃんはやっぱりヤられたがりの構ってMっつりちゃんなのぉ?」


 :おぉっとぉ? まずはメスガキの先制攻撃だぁ! 口でメスガキに勝てると思うなよぉ!?

 :って、俺ら普通に見てちゃったけど、これ、通報とかした方が良いとか?

 :ほほぅ、自首ですか、やりますね

 :違ぇよ! これ、クールプリンセスがイチャモン付けてテイムモンスターに襲いかかったってことだろ?

 :まあでも、結局は受けて立ってるし……どうなるんだってばよ?

 :さあ、分からんけど、これ、リリィたん殺されたりしないよなぁ?

 :あー……、むっつりちゃんはむっつりでもBランクだからな……リリィたんはEランクモンスターのオークを簡単にメメタァできるけど、Bランク探索者にはどうなのか……

 :くっそ、リリィたん死なないで欲しい。一応通報しておきました

 :そうだな、通報しておくべきだな……


 コメント欄がようやく心配し始めた前で、


「ふふっ、全裸土下座で私は破廉恥ですって言ったら許してあげても良いわよぉ?」

「なんて破廉恥なことを、たとえ幼女でもサキュバスは……いえ、幼女の姿だからこそ更に邪悪です。大人しく首を出しなさい、苦しまずに逝かせてあげましょう」

「えっ、亀の首をイかせる!? やっぱりむっつり……」

「ちっ、違っ……」

「あー、やっぱり意味分かってるじゃーん、このむ・っ・つ・りちゃんっ🖤」

「チェエエストォオオオーーーッ!」


 :w

 :w

 :緊迫した場面なのにw

 :かつてこれほどまでに気合いの籠もったチェストを聞いたことがあったろうかw

 :ってかむっつりちゃんは口で勝てないと手が出るのねw

 :そりゃあむっつりと黙って手を動かすから(意味深)

 :草


「リリィっ!」


 金多はむっつり女がリリィに向かって刀を振り上げれば心配そうな声を上げた。

むっつりの刀には何時しか冷気が研ぎ澄まされ、薄らと青白い光を纏っているのである。

 それを、


「――クス♪」


 リリィは徒手空拳で、


「ほらほら、鬼さんこーちらー♪」


 ツンツンと両手の人差し指で頭に角を作つつ避け、パンパンと手を叩いて彼女をおちょくった。


「くっ、素早い……」


 しゃらんと黒髪を揺らして姫織が追い縋った。


 澄(ス)ンっ……


 彼女の為人に比べてその太刀筋はいたく澄んでいた。それが躰に馴染むまで剣を振り続けた証拠である。金多は不本意ながら、まことに不本意ながらそれに見蕩れてしまうのだ。


 ――クッソ、流石はむっつりでもBランクってところか。今の俺じゃあまったく太刀打ち出来ねぇな。だけどリリィ、あいつあんな風におちょくって……スゲぇな。


「くっ、このちょこまかとぉッ」

「ふっふー、むっつりちゃんのおっぱい感度はー? つんつーんっ♪」

「ひゃあっ!?」

「あら可愛いお声」

「このぉ、殺すぅウっ!」


 :ナイトだった俺氏、リリィたんのファンにもなりますブヒ

 :悲鳴助かるブヒ

 :こう、ちっちゃな女の子が生真面目系お姉さんをおちょくることからしか得られない栄養があるよね。……ふぅ

 :栄養すぐ排出しとるやないかw


 この状況が絶賛配信中であることも知らず、姫織は研ぎ澄まされた剣技をリリィへと振るい続けた。それをリリィはひらりひらりとおちょくるように避け、姫織の躰を弄り続けるのである。


「くぅッ、ンっ、ひゃはぁんっ」

「ふふっ、あらあら感度はバツグンだ? お尻も大きいし、破廉恥が嫌いとか言わずに破廉恥になっちゃいなさいよ、YOU」

「このぉっ、アっ、戯れ言をぉッ! ひゃふぅんっ!?」


 リリィを心配していた筈が、金多はそっと前屈みになっていた。


 ――リリィの奴……いいぞ、もっとヤれ! ってか氷川の奴、リリィにされてだんだん感じる様子も声も大きくなってきているような……。


 :俺、ナイトだけど全裸視聴中

 :俺ナイト、全力で録画中

 :俺ナイト、クールプリンセスの新たな魅力に開眼中

 :おい、お前らもキモキモリスナーだってことを認めろよw

 :クールプリンセスがちっちゃい子に喘がされていると聞いて!


 いつしかこの配信は拡散され、♯調子にのったクールプリンセス、メスガキに分からせられ中、♯クールプリンセスとメスガキの分からせ合戦、♯はよ、配信してることに気付けwなど、拡散数が上がって視聴者はぐんぐんと増えていた。すでに一万人を突破し、まだまだ止まることを知らないのだ。


「はぁっ、はぁっ……」

「ふふふ、堪能させてもらっております。はふぅ🖤」

「ぐぎぎッ……」


 姫織は決して配信には載せられないような貌になっていた。対してリリィは艶っつや。


 ――あ、あれ知ってる、俺を搾った時もあんな貌してる。


 金多は姫織に親近感のようなものも抱いてしまうのである。


「さぁーって、次は何処を触ろうかなぁ、ぐへへ♪」

「くぅうっ」


 手をワキワキとさせ、明らかに胸を狙っているリリィに思わず後ずさってしまう姫織。

 コメント欄がどうなっているかはご想像の通りである。


「くっ、私は破廉恥なんかに負けません!」

「ふふふ、エロは世界を救うのよ」

「くっ、破廉恥な」


 :くっはれ!

 :くっはれ!


 コメント欄はお祭り状態。


「はぁあッ!」


 姫織は意気を持ち直すと一気呵成。

 魔力を練り直し、研ぎ澄まされた冷気が刀身を覆って、あたりの気温もひんやりと下がってゆく。

 そして、


「氷川流剣術裏伝〝氷柱舞い〟!」


 空気中の水分を凝結させ、鋭い氷柱として幾つも振り落とす。


「ちょっ、ガチの魔法じゃねぇか! 本当にリリィを殺しに……くっ、リリィっ!」


 思わず叫んだ金多に、


「ふふっ、だぁーいじょうぶよ、パパ♪」


 リリィは、まるで踊るかのように優雅に指を振ると――彼女のしなやかな指先は桃色の軌跡を描いた。それはまるで宙に踊るリボンのようで――、


「なっ!?」

「ふふっ」


 目を見開く姫織にリリィは妖艶な貌で微笑みかける。

 桃色のリボンはしゅるりしゅるりと氷柱たちを撫でるようにして、その軌道をずらしてやり過ごしてゆく。


 すべての氷柱が落とされれば、それらはまるでリリィを湛えるように、まるで女王玉座のように、咲き誇る氷の華の中心にリリィが傲岸そうに胸を張り、笑みを湛えて立っているのであった。


「……そん、な……」

「ふふっ、お遊びはこれで終わりかしら?」

「っく……」


 :ッFUUUーーーッ! ねぇ今どんな気持ち? 破廉恥なロリサキュバスたんの引き立て役にされてどんな気持ちィーーーッ!

 :気持ち、Eーーーッ!

 :リリィたそ、ふつくしす……

 :まだクールプリンセスの分からせには間に合いましたか!?

 :絶賛分からせ中だぜ!


「ふふふ、これで終わりならばぐへへ♪」

「やぁっ……」


 手をワキワキとさせてリリィが姫織に近づけば、コメント欄は固唾を呑んで黙るのだ。現実でナニを握っているのかは各自の想像にお任せしたい。


「あれ? これで本当に終わり? Bランク探索者なのに?」

「くぅっ、舐めないでくださいぃッ!」


 姫織は再び剣を構えると――、


「残念、無茶苦茶ペロペロしてあげるわっ! ――ダブルニップルディテェクションッ!」


 リリィは両手の人差し指を立てると、そのまま躊躇なく姫織の両胸へと突き立てた。

 そして、


波動ヴァイブ。――ふっ、すでにお前はイっている……」

「あぁああああアンッ!!」


 ガクガクガクっ!


 姫織は膝を震わせ盛大に仰け反りながら腰を空打った。


 ビクッ、ビクゥッ!


 白目を剥き、涎を垂らしながらのたうった。

 何故二つのボタンをヴァイブしただけでそうなったのか。それはリリィがサキュバスであったからに他ならぬ。ただのテクと魔技の合わせ技。まさしく『俺様の媚技に酔いな』であったのだ。


「うわぁ……」


 :えっ、これ、配信もうアウトじゃね……?

 :大丈夫大丈夫、ただビクンビクンして大きな声を上げただけだったから……(震え)

 :クールプリンセスよ、永遠なれ!

 :録音しました!

 :ループ画像作成しました!

 :はえーよホセ! ところでリンクを貼ってはいただけないでしょうか……(へこへこと揉み手をしながら)


 ガクンッ!


 姫織はまるで糸の切れた人形のようになって膝をつく。

 その前にリリィが妖艶な微笑みを湛えて立っていたのである。そして彼女は、


「ふふっ、それじゃあここからオ・シ・オ・キ🖤 本番イこっか?」

「ちょっ、流石にそれは……っ」


 ジィッ、と、リリィはパーカーのジッパーを下ろしてロリサキュバスとしての衣装を露わに――、


 :あ

 :あ

 :アカン

 :まだ配信続いていることも気付いてなかったのに!

 :と言うかこの後ナニが起こるのか見せてもらいたいんですけどぉおおーーーーッ!?


 コメント欄の悲痛な声を他所に。


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