47、その間の彼らは

 時は金多たちが転移魔法陣で飛ばされた時に遡る――、


「はぁっ、はぁっ、ンぅっ……パパぁ……、あぁんっ」

「うっ、くぅう……、ン、リリィ? って、うぉおッ!?」

「ふふっ、おはよぅ♪」


 目を覚ました金多の上には、成長したリリィが跨がっていた。そして――、


「いやっ、ちょっ、待っ!?」

「まずは一回スッキリしとこ? ほらぁ♪」

「うっ、おぉおッ!?」


 大人版サキュバスはさらに凄かったよ。

 と、実はいつもとそう変わらない目覚めではあったのだが、


「あっ、そうだ、俺は……、他の皆は!?」

「大丈夫、直に眼を覚ますから」

「ああ、それなら良かった……」


 金多が一足先に淫らなモーニングコールをされたと言うことだった。


「ってかリリィ、成長、したんだな」

「うぅん、一時的にこっちになってるだけで、普段のあたしは小さいままよ。あ、パパ、今すっごい悦んだぁ♪」

「違う! 俺はロリコンじゃない! ロリコンじゃ、なかった筈なんだ……」


 思わず、諦めたらそこでロリコン認定ですよ、と言いたくなるほどの尻すぼみ具合であった。


「……えっと、まずは退いてくれると助かるんだが……って、小さくなっておっぱじめるんじゃあねぇよッ!?」

「あっ、パパぁ、さっきよりもすっごいのぉおっ」


 とヤっているうちに皆起きてきた。ものすっごいジト目で。


「金ちゃん……」

「旦那様……」

「待ってくれ! 不可抗力だ!」

「そうそう、あたしの魅力に負けた不可抗力ー♪」

「リリィは場を掻き混ぜない!」

「そうそう掻き混ぜて良いのはあたしのー――」

「わぁあッ!」


 とかなんとかワチャワチャとやりつつ、リリィは彼女の存在について話してくれたのだった。


「「種子」……「魔王」……」

「ダンジョンって……、そのためにダンジョンが生まれたのか?」

「うぅん、それはダンジョンが成長するにつれて出て来た機能だったから、ニワトリが先か卵が先かみたいな? どうしてダンジョンが生まれたのかは分からないけれど、ダンジョンにはそう言う機能があったの」

「そうなのか……」


 金多と陽香が聞けば、リリィはそのように返してくれた。驚きではあったが、すでにリリィというイレギュラーと相対しているため、思ったよりも衝撃は少なかった。むしろ『そーなのかー』と半分思考停止で受け止めるしかなかったのもあったけど。

 リリィが知っているのも、「種子」である彼女はそういうものらしいのだ。

 そーなのかー。


「で、ここは?」

「ここはね、ママのお腹の一番深いところ」

「ッ、最下層!?」

「もーっ、ちゃんとツッコんでくれないと悲しいわ」

「ここがダンジョンの最下層……、このダンジョンはまだ誰も制覇できていない筈だ……」

「パパもお姉ちゃんもシリアスになってる……、頑張って、エロス、シリアスに勝つのよ!」


 リリィが小っちゃなお手々を振って健闘していたが、残念ながら今はシリアスさんに軍配が上がった。


「だけどなんで最下層に……」

「くっ、エロスは負けないわ、何度でも蘇るのよ!」とリリィは言っておいてから、「転移魔方陣でここに飛ばされたの。私が願い、ダンジョンがそう望まれたから」

「リリィが願って、ダンジョンがそう望んだ……」

「そう、言ったでしょ、ダンジョンは魔王の孵卵器だって。「魔王」を育てるために、ある程度の忖度が働くのよ」

「ダンジョンが忖度……」


 いかがわしく聞こえてしまう単語である。

 ちなみにリリィがその姿であるのはダンジョンの忖度ではなく、当時の金多がその程度の力しかなく、尚且つ今の金多はリリィに染められているためにこの姿となっていた。

 金多のロリ忖度。

 いかがわしいのは金多であった。


「え、だけどリリィが願ったって、何をだ?」

「それはもちろん、あたしたちが強くなるため、そしてあたしが魔王に成るためよ!」

『ッ!?』


 リリィの言葉に皆が驚いた。


「魔王って……」

「安心して。魔王と言ってもあたしはパパの妻で娘でテイムモンスターで、肉便器で性奴隷だから」

「後半ンッ!」

「ふふっ♪」


 と笑う彼女であったが、


「別にそんなことは心配してねぇよ。リリィはリリィだろ」

「………………」

「リリィ?」

『そういうところよ(です)(だ)!』

「うぉっ!?」


 何故か彼女たち三人から責められた。


「で? オレたちはここで修行でもするってぇのか? まるで少年漫画だな」


 陽香お姉ちゃん好きそう。


「ええそうよ、」とリリィは頷いて、

「あたしは「色欲」の魔王候補でここはそのための揺籃。「色欲」の修行をするわよ!」


 どぉおおんッ!


 と。


「待て、今余計な言葉が入らなかったか?」

「もう、候補じゃないって、パパったら娘のことを過大評価し過ぎ♪」

「そこじゃないッ!」


 だが、力一杯に声を上げても、その言葉は消えてはくれないのだ。


「さあ、「色欲」の修行をはじめるわよッ!」


 リリィは力一杯、そしてノリノリに言っていた。


「押忍ッ、お願いしますッ!」

「破廉恥何処行ったよ姫織……」


 そうして「色欲」の修行とやらははじめられたのであった。

 男女和合、陰陽交差、房中術。

 いったいナニのことをイっているのだろうか?

 ここで夜想曲は詠えない。


 これから四人は、「色欲」の揺籃ダンジョンの最下層で、二ヶ月間、四人だけで過ごし、みっちりと修行をすることになるのであった。

 ダンジョン最下層、最も魔力の満ち、そして重いこの場所で――。

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