3、サキュバスちゃんのお披露目
「はぁっ、はぁっ、お前、分かってるんだろうな?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、分かってるってぇ、パパ🖤」
「ねぇ、パパって呼ぶの止めない?」
「やだぁ、パパはパパなのー。娘に手を出す鬼畜パパー♪」
「違うっ! 食われたのは俺の方だッ! ――もうお婿に行けないぃ……」
「だったらあたしが貰ってあげるから♪」
「お前はモンスターだろ、一応……」
「ニヒっ♪」
或る意味仲睦まじいやり取りを行うのは、底辺配信者である赤鐘金多と、彼が黒いモンスターの卵から孵してしまったサキュバスであるリリィであった。
リリィとは金多が名付けた。
彼に似合わない名付けであったが、
『サキュバスって言うと、強そうなところでリリス……いやっ、強すぎるな。……リリ、リリィ。それなら良いかな……ってなんだよお前その顔は。なんだ、気に入らないのか?』
『うぅん、逆。パパにしては良い名前だって思ったから。うん、あたしはリリィ、パパの娘でテイムモンスターでペットで性奴隷で肉便器の……』
『うぉおいっ! テイムモンスター以外違うからな!?』
『あ、あんなにあたしのことを弄んでたのに性奴隷にも肉便器にもしてくれないの!?』
『待って、ちょっとお互いの価値観の相違についてまずは話し合おうじゃないか』
――サキュバスと人間の。
兎に角、彼女の名前はリリィと決まって、はじめて現われた時よりも若干成長しているように見受けられた。少なくとも○学生高学年はあるだろう。金多の方はと言えば、相変わらず冴えない黒髪黒目の青年であって、探索者をしている分筋肉質よりの中肉中背。ただしその頬は若干痩けているようにも見受けられたが。
今の彼は自室ではあったものの、探索者としての服装に着替えていた。リリィの方は若干ボーイッシュにも思えるが、逆に裏返ってコケティッシュさも感じられるオレンジのフード付きパーカーに水色のホットパンツ。黒のニーハイを装備して、まだロリの見た目だと言うにも関わらず、ソックスが太股に食い込み、絶対領域の白さが得も言われぬ生々しい色気を醸し出す。
――ヤバいなぁ……。俺、ロリコンじゃなかったのになぁ……。
げにロリサキュバスの恐ろしさよ。
そして彼女の性格は、
「大船に乗ったつもりでいてよ、パパ。ぎっしぎっしと揺らしちゃうからさぁ。きゃははっ♪」
「どうやってこんなメスガキを信用しろと……」
不安感しかない金多は、今日これから行う配信のための準備をしていた。彼女にはネットリテラシーと、もしも配信に流れればアカウントが停止される不適切な内容を口を酸っぱくして教え込んだ。
『どんなことをしちゃイケナイのかなぁー? ちゃあんと、お口じゃなくって躰に教えて貰わなくっちゃ分かんないー🖤』
『くっ、このメスガキめ……』
とてもとても頑張った。
その甲斐があったのだとは信じたい。
そして彼女は生まれたばかりの状態から、様々な知識を持っていた。
『私はダンジョンの卵から産まれたモンスターだからそんなモンなの』
『そんなモンなのか……』
そんなモンらしい。
子育てのように教えていかなくて済んだのは良かったが、むしろ色々と知っていることで――そう、色々と知っていた、エロエロと。――別の意味でたいへんであった。
――だけどまあ、サキュバスだから仕方ないっつぅか仕方ないんだけど、俺の性癖がもう仕方がなくないっ!
性癖ブレイカー。
お前もロリコンにしてやろうか!
――くそぉ、もう社会で大手を振って歩けない……。有名になりたかったけど、今有名になるのは……くぅっ、ぐぐぐぐぐっ……。
恐るべきジレンマだ。
そう、念には念を入れ、念を押しているうちに予定の時間となっていた。
「じゃあ、配信を開始するから、お前、頼むぞ?」
「まっかせてー♪」
とぺったんこな胸を張る。
――心配だぁ……。
しかし前回の配信で彼女の存在が露見したからには、彼女を出演させないワケにはいかないのだ。それになんと言っても、危険は危ないものの、冴えない自分とは違って圧倒的な華!
――心配だけど有名配信者になるためには仕方がないっ! うぇへへ……。
リリィの存在は、女の子と出逢うボーイミーツ配信、テイマー配信、そして父娘配信を網羅していた。
――これはバズるのも期待して良いと思う。それに前回垢BANはされたけど、話題にはなってたもんな。
主に紳士諸兄の中で。
――よっしゃ、頑張ろうっ!
決意を強めた金多は、意気込んで配信を開始するのだった。
◇◇◇
:おっ、はじまった
:はぁはぁ、ロリサキュバスロリサキュバス
:こらこら、がっついてはなりませんよ。男は黙って服を脱ぎましょう
:なんかヤベェのが湧いてるぞw!
「どぉーもぉー、金多のダンジョンチャンネルでぇーす。ま、今日は前回に引き続きダンジョンではないですが、紹介なので良いですよねー」
配信を開始した金多はカメラの前で胡散臭いコールをかけた。相変わらず胡散臭くて鬱陶しいトーク能力よ。
:ぺっ
:チッ
:お前は映さんで良いからロリサキュバスちゃんはよ
:もうこいついらなくね?
――クソがッ!
こめかみに青筋を浮かべて笑顔を引き攣らせてしまう。が、今回はいつもとは違った。
「キャハハー♪ パパったらMC下手クソー。そんなんだから登録者数増えないんだよー」
ずぃっとカメラに割り込むようにして〝彼女〟が現われた。
「キモキモリスナーの皆ー、どぉーもぉー、パパに「使われ」た卵から生まれたロリサキュバスのリリィでぇーすっ。パパの真似してみたんだけど、似てるー? きゃははーっ」
:来たぁああアーーーーッ! ロリサキュバスちゃーんっ!
:はぁはぁ、ねぇ、その服パパに買って貰ったの? 俺もパパやってるんだけどさぁ、その服脱いでみない? 新しい服買ってあげるよぉ……(ニチャア)
:ふぅ……
:おいお前はぇえよw
:似てる。似てるのにこの圧倒的違いはなんだ?
:パパさん、娘さんを俺にくださいっ!
:パパのMCウザいだけ。娘のMCくっ、ウザいのにもっと欲しいっ
「きゃはっ、皆ヘンターイ♪」
「ちょっ、おまっ、そんなに煽ったら」
:もっと、もっとくらはい
:今の録音してループASMRにして良いですか?
:じゃ、じゃあ、次はおじさんキモーい、って言ってみようか?
:おじさんキモーい
:お前じゃねぇんだよっ!!
:やべぇ、力いっぱいだw
「おじさんキモーい♪」
“:WOOOOーーーッ!”
――こ、この変態紳士どもがぁ……。ってかこいつ、上手すぎねぇか……?
こんな時パパはどんな顔をすれば良いのか分からないの。パパじゃないけど。ははっ、と引き攣って乾いた笑みを漏らしてしまう金多である。
「とゆーワケでー、あたしもこれからパパのチャンネルに出演するから、ヨロシクーっ。ン? どうしたのパパ、変な顔で黙っちゃって。ただでさえ変な顔なのにーっ」
「誰が変な顔だよっ!」
「パパ」
「………………(ビキビキぃ)」
「あれあれぇ? パパ、傷ついちゃった? ごめぇーん、でも、リリィはパパのこと、大好きだから、許して🖤?」
:ウン、許す、許す許す
:うぅっ、こんな娘が欲しかった……
:うちの娘ときたらパパ大嫌いって……
:いやぁ、こんなチャンネル見てたらそれは当然では?
:そ・れ・DAw
「くそがぁ……」思わず金多の本音が漏れていた。が、リリィは気にせず金多のほっぺたをつんつんと突っついて、それをリスナー――キモキモリスナーの皆が羨ましがってコメントが乱舞するのである。
:ところで、ロリサキュバスちゃんのお名前はリリィってなったの?
と、一つのコメントが出たことで、それをリリィが目聡く見つけるのである。
「あーっ、そうそう、あたしの名前はリリィになったのー。パパにしては良い名前付けてくれたと思わなーい?」
:良い名前だね。ところで今日のリリィちゃんのパンツの色は?
:えっと、リリィちゃんいくら?
:おっとぉ? ラインを越えはじめた輩が出て来ているぞぉ?
「ふふっ、それはもう、パパに選んでもらったパンツ穿いてるよ? 穿かない 穿かせてもらえないことも多々あるけれど🖤」
:通報しました
:通報しました
:そうかぁ、リスナーよりもうぷ主の方がヤバかったかぁ……
:現役警察官です。現在張り込み中です
:w
「待って、お前、だからおかしなことを言うなってあれほど……」
「えぇーっ、おかしなことって何ーっ? パパがあたしに白いご飯をたくさん食べさせてくれてるのは本当のことでしょーっ? ふふっ、サキュバスが食べる、男の人の白いご・は・ん🖤」
リリィはカメラに向かって眸を細め、ぷるんと紅い唇に指を当てて嗤っていた。
「ちゅぱっ🖤」
更には指を吸って音を立てるイケナイさぁびす🖤
:おぅっふ
:おぅっふ
:パパさんそこ代われ、と言いたいけれど、サキュバスなんだよなぁ……
:リリィちゃんに弄ばれるのなら死んでもいいっ!
:ちょっと俺ダンジョンに行ってモンスターの卵を探してきます!
:俺も
:俺も
:リリィちゃん、俺もご飯あげようか?
「きゃはっ、パパが許してくれたらねー♪ だ・け・ど、あたし、パパのご飯以外食べたいと思わないのよねー。ふふっ、パパにいぃっぱい、分からせられちゃったからかなぁ🖤 あっ、パパ、もしかして照れてるー? かぁーわいいっ♪」
「て、照れてねーし」
:男の照れ顔なんて誰得でもないんですが?
:だがリリィちゃんに弄ばれてるのは羨ましい……っ
「きゃはは、大丈夫だよ、パパ。あたしはパパのこと、可愛いって思ってるからぁ。特に、あたしの下で啼いちゃうところとかぁ?」
「も、もう許してください……」
「やぁーだっ♪ きゃははぁっ」
:ふぅ、これはもう確定ですな
:くそぉ、俺のリリィちゃんなのに
:ぐぅうっ、サ、サキュバスのテイムもんすが欲しいっ……(血涙)
:ってか、こう言うのって男が糾弾される筈なのに、サキュバスの娘(テイムもんす)に弄ばれるパパご主人様。羨ましくって脳破壊じゃなくって脳が溶ける……?
:イチャイチャ配信なのに殺意を抱くのではなく全裸で正座しながら見てしまうのは何故?
:性癖ブレイカー。お前もロリコンにしてやろうか
コメント欄はすでに変態紳士が集まるのではなく製造されるようになっていた。
そうして、金多には真似できない、リスナーを煽って挑発して、金多を弄って挑発して。好き放題やるリリィのワザマエに、視聴数も登録者数も跳ね上がっていた。
――くそぉ、なのにどうして素直に喜べない? う、嬉しいのにぃっ。
「クスクス、この底辺配信者、ねぇ、今どんな気持ち? 今回の配信だけで今までの何倍かなー? わぁ🖤 もう桁が変わっちゃってるー、プークスクス」
「くっ、この、殺せっ」
「いやだよーだ。だって、殺しちゃったら犯せないじゃない?」
:今、ぞくっとしました
:今、ドクッとしました
:拙者もで候
すると、リリィはちろりとピンクの舌で紅い唇を舐めていた。
黒い眸はしらしらと妖しい光を宿して濡れ、はぁ、と零した吐息は甘かった。
「あれ? リリィ? どうした、急に……」
「……なんか、ね? あたし、熱くなって来ちゃってぇ、パパ、もっ、我慢できないからぁ……🖤」
「待って、今配信中だから、な?」――ナンデ!? だからなんで突然発情!?
と金多の抵抗も虚しく、「やだぁ、だってパパが殺せとか言うからぁ。じゃあ、生きていてもらうためにも犯さないと、ね?」
「ちょぉっ!? それ社会的に死んじゃうしせめて配信を止めてからぁっ!」
だが眸を蕩けさせたリリィは止まらない。
彼女が生まれた当初は凄かった。
どうやら空腹であったらしく、捕まって――搾られた。仮にもテイムモンスターであったから、主人を殺さないようには抑えられていたようだったが、流石はサキュバス。ロリでも凄かった。どうにかそれも落ち着き、アカウントの停止も解けたからこそ今日の配信であったのに、何故急に? しかも配信中に!?
「ちょっ、じゃ、じゃあ、配信切るからっ! なっ? せめてそこまでは待ってくれ。じゃないとまたアカウント停止に……」
「問答、無用っ!」
「あっ、
ジィッ。
リリィはそのパーカーのチャックを下ろし――、
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