5、リリィたんのパパ、一緒にダンジョンに行く
「ここが、パパがあたしを攫った場所ね」
「人聞きの悪いことを言わないでくれないかなぁ!?」
ひそひそ、ひそひそ
――ホラ、あっちの人たちが何か話してるじゃねぇか。
金多とリリィは、彼がリリィが生まれた卵を拾ったダンジョンへと訪れていた。ダンジョンには様々な種類があるが、このダンジョンは洞窟型の、穴がくぱぁ――ぽっかりと空いているタイプとなる。
探索者協会へと行き、リリィがテイムモンスターであることを伝えれば、はじめは通報されそうになった。が、自分の配信のアーカイブを見せることによってなんとか事なきを得た。が、
『あたし、パパに首輪付けられちゃった……これで正式な性奴隷になれたのね🖤』
『違う違う、人聞きの悪いこと言うんじゃねぇよ。テイムモンスター用の首輪だから。しかもお前がこれが良いって言ったんだし……』
『だって結婚首輪じゃない?』
『怖ぇえよその単語!』
『良いじゃない結婚首輪ー。このロリボディがパパのものだって、もぉっと教え込んでよぉー🖤』
登録後の受付嬢のゴミを見るような眼は、きっと一生忘れられないと思う。
――ちょっと良いと思ってたんだけどなぁ……。
そうしてこのダンジョンにやって来れば、リリィはそう宣ったのであった。
確かに、これまでの研究でモンスターは普通の生物のように繁殖するのではなく、ダンジョン自体から産み出されることが分かっていた。するとダンジョンにあった卵から生まれたリリィは、ダンジョンの娘であって、パパと呼ばれる男は母から彼女を拐かした大罪人となるだろう。
――人聞きが悪すぎた。
「も、もう良いから、行くぞ!」
「ぅん、イくイくぅ🖤」
行為の際を思い出し、金多は少しだけポジションを直すのである。
◇◇◇
「はぁー、ここがママのお腹の中かぁ」
「リリィにとってはそうだろうけどなぁ……」
まさかダンジョンが胎内巡りになるのだとは。
「それで、パパはあたしのために魔石を稼いでくれるのよね?」
「ああそうだな。だけど……」
と、リリィのためにダンジョンに来たワケであったが、そのためには重大な懸念点があったのだ。
――そんな、リリィに食わせてやるってほど俺、魔石手に入れられないぞ? だって俺、弱いんだもん……。
それはここに来る前にリリィにも伝えてはいたのだが、
「大丈夫大丈夫、分かってるから。だからまずはあたしの力を見せるから。それで、あたしが見守りつつパパにも稼いでもらうことにするから、ね?」
「お、おう……」
「ふふん」とリリィはぺったんこな胸を張った。
――なんかなぁ、俺、もう完全に尻に敷かれてるよなぁ……、こいつテイムモンスターなのに……。
だがメスガキだ。
「…………じゃあ、お前の力を見せてもらおうじゃねぇか」
「おっけー♪」
軽い足取りのリリィと共に、金多はダンジョンを進む。
◇◇◇
「あたしの魅力に溺れて死になさい!」
「グギャ、ゲギャア……っ」
――うわぁ……、マジかよぉ……。
リリィの魅力を魅せつけられた金多は全力で引いていた。何故ならば、
――『
「ふふっ、死んだゴブリンだけが良いゴブリンよ!」
――うわぁ……、完全に悪役の台詞だよ……。
このダンジョンの一階層にはゴブリンが現われる。他に出て来るモンスターはスライムや大鼠などのFランクモンスターだ。――最低ランクのモンスター。
ダンジョンへの適性があればそう苦労しないレベルのモンスターではあるのだが、ダンジョンに入って「覚醒」していない一般人にとっては当然ながら脅威であって、それを『
『だって、あたしまだ生まれたばかりだし? そんな赤ちゃんに手を出すなんて、パパのき・ち・く🖤』
『襲われたのは俺の方なんだけどなぁ!?』
とは置いておいて、
――……だけど今はそれで十分だと思うんだけどなぁ……。だって、自殺させられないだけで、少なくとも足止めは出来るってことだろ?
流石に動かない相手を斃すことくらいは金多にも出来るのだ。何せ底辺配信者とは言え金多はEランク。少なくとも初心者は脱却し、底辺配信者でもギリギリダンジョン探索者として食っていけるくらいではあるのだから。
ちなみに探索者のランクとしてはFからはじまってE、D、C、B、A、S。その上にSSランクがあって上がっていく。Fランクはなりたてを意味し、ただしEランクはモンスターを退治しなくとも採集などでちまちまポイントを溜めても上がれるものである。つまりはEランク探索者はFランクモンスターを楽に斃せるという意味ではないし、況してやEランクモンスターに太刀打ち出来るかどうかは、Eランクでも探索者によるのである。
ちなみに金多のレベルとしてはFランクモンスター相手であれば危なげなく斃せ、数が増えると危なく、Eランクモンスターは無理、という力量であった。
「じゃあ魔石、もらっちゃうねー」
「ああ、良いぞ。今日はそのつもりだし、Fランクの魔石だからな」
とは言うものの、普段であれば決して渡さないものではあるのだが。塵も積もれば山となる。そして実際時間単価としては悪くはないのである。しかし、
「ありがとうパパ、大好きぃ🖤」
ニヒっ♪ と嬉しそうに微笑んでくれる娘の前ではパパとして見栄を張りたいものなのだし――本当はパパじゃなくてご主人様なのだけど――、何よりも、
「あぁーんっ♪ ガリッ、ガリッ、ボリィッ。――ごっくん♪ やっぱりパパの方がエネルギーとしては良いんだけどなぁ🖤」
「お、俺のためとも思って……」
「じゃあ回数は減らしてあげる🖤」
「助かるよ……」
訊けばあれだけ金多から搾るのもやはりエネルギー不足らしく――パパはご飯じゃありません! そう声高に叫びたい金多である――、魔石を与えることでそれも期待していた。
「じゃあパパのためにもたっくさんモンスターを斃してもぐもぐしーよぉっと」
「おう! ――あ、だけど出来れば採取はさせて貰いたい」
「おっけー♪」
――これからは主に採取で稼ぐことになるんだろうからな……。ま、まあ、高い魔石は売りたいけれど……、テイマーって、楽して稼げるワケじゃないんだなぁ……。
とは思うものの、これまでにサキュバス、しかもここまで流暢に喋るモンスターのテイム記録は存在しなかった。他のテイマーと一緒にも出来まい。
――ま、いくらたいへんでも、もうこいつを譲る事なんて考えられねぇよな……。
ちなみに当然リリィの希少性から、個人、企業、研究所など、様々なところから譲ってくれという打診は来ていた。が、目も眩むような大金を積まれもしたが、金多は譲る気はなかった。リリィも金多から離れたくないと言うことで、探索者協会と協議の上で、これまでに例を見ない喋るサキュバスの幼体の観察記録を報告することで、探索者協会が二人の関係を護る後ろ盾となってくれることとなっていた。
まあ、赤裸々な報告――○○し回数や○○くん回数やプレイ内容など――まではしなくても良いと免除されたのだったが、
『ふぅん、それで? 大体何回以上なのかしら? ……へぇ、金多くんって多いのね? 流石はサキュバスのテイマーになるだけあるのかしら? 素敵じゃない。……ペロ』
『パパ、鼻の下伸びすぎ。家に帰ったら、誰があたしのパパなのか思い知らせてヤるんだから!』
――支部長、エロいよ。支部長すっげぇエロかったよ……っ! だけどその後リリィに……うぅっ、もっ、もう出ねぇよぉ……。
「ねぇパパ、今別の女のこと考えてる?」
「かかかかか、考えてねぇよ!?」
「ふぅーんー……、魔石食べるの止めようかな?」
「どうぞどうぞ食べてくださいリリィ様!」
「じゃあ、後でパパを食べるね?」
「なん、だ、と……?」
「ニヒっ♪」
彼女の笑みは確かに可愛らしかったが、小悪魔――と言うよりはただの悪魔の笑みに見えた。
そうして、二人はダンジョンを進んでいったのである。……
◇◇◇
「あらぁ、また羽虫が一匹……ふふっ、リリィたんに悪影響があるとイケナイから、ポイしてしまわないといけないわね。ふふっ」
リリィと金多を狙う者たちは、探索者協会支部にて止められているのである……。
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