【秘宝】モンスターの卵を孵してバズろうとした結果、サキュバスが生まれて垢BANされる!
ルピナス・ルーナーガイスト
1、バズりたい……
俺TUEE系配信者。
これまで強かったのに捏造と思われ、ひょんなことから配信中の美少女を助けてバズるボーイミーツ系配信者。
もふもふ、圧倒的もふもふによるテイマー系配信者(ただしもふもふでなくても可)。
物作り系配信者、飯テロ系配信者。
世にバズった配信者は何人もあれど、これまでの彼の配信は鳴かず飛ばずのオクトパス。
「圧倒的っ……、圧倒的バズり不足……っ」
くぅっ……くっ、くぅっ……
と涙も出ちゃう。だって底辺配信者なんだモン。
世は大ダンジョン配信時代。
ダンジョンとは一時代前に現われた謎の存在であって、調査の結果ダンジョン内にはゲームや漫画に出て来るようなモンスターがひしめき、しかし一方ではこれまで地球には存在しなかった未知のアイテム、鉱石、植物なども発見され、それがとても有用であることも発見された。
その機構は不明であったが、必ずしも同じ場所に同じ物がというワケではなかったが、一定期間を過ぎればモンスターもアイテムも、鉱石なども復活し、再採取が可能であることも認められた。
持続利用が可能な資源。
これまで人類が求めて止まなかった夢の資源採取が可能になったのだ。ただし、数多いるモンスターを越えて獲得しなければならない、と言う条件は付くのだが。
ダンジョンが現われた当初は手探りで潜っていたこともあり、多数の死者が出たが、現在ではノウハウが蓄積され、ダンジョンごとのランク分け、探索者制度も策定されて、ダンジョンから得られたもので有効な装備品、そして魔法やスキルが使える者たちも現われて――当初ほどの死者は出ないようになっていた。尤も、危険自体は変わりないのだが。
それでもダンジョンが現われた当初の混乱が落ち着き、昔よりも安全性のノウハウが得られたのならばエンターテイメントにも走るのが人類と言うものだ。
社会で認知度を上げてきていた配信者たちは新たな配信ネタとして、そして探索一本では食っていけない者たちが副業的に配信を行うようにもなってダンジョン配信は今や注目のエンターテイメントと化していた。
今年で十九歳になる金多もその一人であって、だが、輝かしい栄光を手に入れるのは一握りであって、金多は多数いる鳴かず飛ばずの底辺配信者の一人。
これまでにアクセス数を稼ぐために様々なことをしてきたが、
たいして強さがあるワケでもない。
見た目や戦い方に華があるワケでもない。
女の子との出逢いは、ない!
魔物からはこれまでのところは敵対されるばかり。魔物ではない動物からも好かれない。
物作りや料理の才能、魅せる才能はなし!
そしてコミュニケーション能力、なし!
どうして配信なんてやろうと思ったの? 底辺だけどひとまず一般のフリーターくらいは採取で稼いでるんだから配信はしなくても良くない?
「承認されてぇんだよぉ……。後チヤホヤされたい、楽してもっと金が欲しい……」
そっか(生温かい目)。
彼は、なるべくして底辺配信者であった。
◇◇◇
「くっくっく、くぅっ、くっくっく……」
その彼は、見るからに怪しげな笑みで部屋で胡座を組んでいた。畳敷きの男所帯の一間である。その彼の前には一つの黒くて丸い卵形の物体が置かれていた。否、卵形なのではなく、まさしく卵であるのだった。
「これで俺もバズって一躍有名配信者だ。くぅっ、くっくっく……」
それは先日の探索でのことだった。
いつも通りに配信をはじめ、いつも通りに視聴者がいない中、金多は『精神耐性』スキル持ちではないのかと思えるほどの様子で配信探索を行っていた。
その際に見つけたのである。
洞窟の壁に人一人分がようやく通り抜けられるほどの穴を見つけ、そっと潜り込んでみれば奧は少し広がった空洞となっており、その中心には一つの黒い卵が鎮座しているのであった。
:すっげ、これモンスターの卵じゃね?
:まさかここからこのチャンネルがヒットしてしまうのか!?
:そんな、俺よりも底辺がいるって思える癒やし系チャンネルだったのに……
この野郎コメント拒否してやろうか、と思いつつ、
『くくく、ようやく俺にも運が向いてきたぜ、くぅっ、くっくっく……』
:すげぇ、弱い悪役みたいな笑い声だ!
:KA・MA・SE! KA・MA・SE!
『コメント欄どもはシャラップ!』
:おん? 良いのか? このチャンネルの登録外すぞ?
:俺らが抜けたら登録者数はいくつだろうなぁ?
:ほら、数字が欲しいんだろう? 数字がぁ?
『くそぉ、こいつら、足下見やがってぇ……』
底辺配信者の辛いところである。
が、
:で、どうすんの? 売るの?
:お前テイマーになろうとして失敗しただろ?
:卵から孵したら懐いてもらえるとか思ってるんじゃねぇぞ? お前テイマー初心者御用達のモンスターたちに悉く拒否されただろうが
:モンスターたちの全力の拒否、正直萌えました。ハァハァ……
:アカンのが湧いとるw
『うちのリスナーが厳しい……』
と、心を折られそうにはなったものの、
『俺は決めた、この卵を孵して、有名配信者に俺はなる!』
:あっそ
:無理無理
:ふぅーん、がんばって(鼻ホジホジ)
:w
『クッソがぁ……』
そうして卵を持ち帰って――ダンジョンで入手したものは様々な制約が課されているが、持ち出しは可能であった。モンスターの卵はアイテム扱いであって、珍しいアイテムではあるが取引もされているのである。基本的に卵から孵したモンスターは孵した者を主人として認めるため、手っ取り早くテイマーとなる手段でもあった――リスナーたちはああ言っていたが、モンスターの卵を手に入れたのならばテイマーにはなれる。だからこそ高額で取引されているのであって、金多は金と承認欲求を比べ、承認欲求を取ったのであった。――バズれば金になると言う目算も込みではあったのだが。
「だけどこの卵、なんの卵なんだろう? 調べても黒い卵なんて見つからなかったし……。くくく、レアか。レアなんだな、おい!」
そう思い、これからのことを考えればテンションがバグっていた。
モンスターの卵は入手したものが使用すると願えば、そこで卵が割れてモンスターが現われてくる。「使う」ことによって生まれるとは、確かにこれはアイテムであったに違いない。
そこで金多は前回の配信に加え、SNSでも告知し、
『ダンジョンで見つけた謎の黒い卵を孵してみた。これで今日から俺もレアモンテイマー!』
集客には微妙なセンスだと思われた。
が、数少ないチャンネル登録者たちが面白がって拡散してくれたこともあってか、普段とは比べものにならないほどの手応えもあった。何せ今までに確認されていない黒い卵であったのだ。俺ならもっとうまく出来るから卵を売れ、と言う者や(うっせぇわ)、ダンジョン研究者が譲ってくれ、と言うこともあった(値段には惹かれたが)。
そのために金多はほくそ笑みながら、その時を待っているのであった。
「くっくっく、これで俺も有名配信者、有名配信者、くぅっ、くっくっく……」
やがてその時は訪れた。
◇◇◇
『ダンジョンで見つけた謎の黒い卵を孵してみた。これで今日から俺もレアモンテイマー!』配信開始。宙に浮かぶドローンカメラが撮影を開始した。
「どぉーもぉー、金多のダンジョンチャンネルでぇーす」
:うっわ、ウザい系の挨拶
:ウケ狙いが伝わって来て最悪です
:フツメンが媚びて誰得なん?
:こりゃあ登録者数も伸びねぇわ
――くそがッ!
思わず吐き捨てたくなったがここで吐いては登録者数は伸びぬ。ニコニコと引き攣った笑みを浮かべて金多は我慢をするのである。
「はい、今回はですね、先日の探索で見つけました黒い卵をですね、孵してみたいと思うのですね!」
:ちょっと、見てるこっちが恥ずかしくなってきた……
:ち、違うんだ、俺はプレゼンであんな風に空回りなんてしていなががが……
:すげぇな、一言喋る度にSAN恥チェックが入るじゃねぇか
:誤字ではないw
:これじゃあ登録者数も伸びねぇわ
くっそがぁあ……っ!
ピクピクとこめかみが動くも、引き攣った笑みを絶やさずに金多は進行するのである。
「はいっ! これが例のモンスターの卵です!」
じゃじゃんっ!
とばかりにカメラに黒い卵を大写しにした。
:凄く、大きいです……
:黒くてテカテカしてるじゃねぇか!
:今からでも遅くないから売りません?
:1000円!
:1010円!
:オークションはじまってるのに10円刻みw
――くくく、良いじゃあねぇか、皆羨ましがってるぜぇ。
金多はポジティブであった。
「ではでは、引き伸ばすのもなんなのですが、皆さんは何が生まれると思いますか? 俺はきっとフェンリルとか――」
:スライム
:ゾンビ
:腐った死体
:石ころ
:フェw ンw リルw
:現実見ようよw
ギリギリギリぃっ……
金多は、笑顔で歯を噛み締めて怒っていた。
金多は激怒した。必ず、かの無礼なリスナーどもを分からせてやらねばならぬと決意した。金多にも何が生まれるのかはわからぬ。だが、きっと、万が一、レアで強いモンスターが出たのなら!
「では、孵していきますね」
:なんてもったいない!
:売ってくれ!
:いーしっころっ、いーしっころっ
「じゃかぁしぃわぁっ! 目にもの見せてくれる! フェンリル出ておいでー!」
とうとう金多は本音を叫びながら黒光りするモンスターの卵を「使っ」たのだった。
ピシッ、ピシピシッ……
リスナーたちの見守る前で卵にヒビが入り始めた。
:うぉお……、ロクなものは出て来ないとは思うけれどなんかドキドキするな
:くくく、もうすでに俺は全裸待機だ
:モンスターに? 特殊性癖者を発見しました
金多も、リスナーたちも固唾を呑んで見守る前で、とうとう〝彼女〟はその姿を現すのである。
「――え?」
:あ
:へ?
:まさか
:全裸待機が正しかった?
:……ふぅ
全裸待機をしていたリスナーが意味深な書き込みをしているその前で、
「んぅーっ、…………パパ?」
どうしたことでしょう。
黒光りする卵から生まれてきたのは、
艶々と卵と同じ――否、卵よりも生々しく色っぽく濡れ光る漆黒のショートカット。その頭からはちょこんと申し訳程度に二本の角が生えていた。クリクリとした黒目がちの瞳は愛らしく、思わず魅入られてしまいそう。ほっぺたはぷにっぷにで、その唇は女児にしては紅く色っぽい。
もう、俺ロリコンでいいや……。
男女問わずにそう言ってしまいそうな、あどけなく可愛らしい見た目ながら妖しげな色気まで醸し出す。
その彼女は女児――まるで漫画やゲームに出て来るような現実にはいない魅惑のロリらしくぷにっとしたつるぺたイカ腹ボディであって、そして、胸と局部だけを、むしろ着ている方がエロいと思えるキワドイ布で覆うだけだった。そしてお尻から伸びる先がハートマークになった尻尾に、背中から伸びたコウモリの翼。……
つまりは人が想像するサキュバスのロリであって、と言うことはあまりにも性的であって、……
「あわ、あわわわわ……」
「んぅ?」
彼女は可愛らしく首を傾げ、
「ニヒっ♪」
:ズキュゥウウウンッ!
:俺、もうロリコンでいいや
:みーとぅー
:みーとぅー
:ごめん、俺全裸待機するべきだったわ
リスナーたちが心を奪われる前で彼女は、そのキワドイ姿のつるぷにロリぼでぃを魅せつけるように立ち上がると、当然その姿がドローンカメラに映し出されて――、
≪不適切な内容を検知しましたのでこのアカウントを一時的に停止します≫
:あ
:あ
“:あぁああああーーーーーーッ!”
リスナーたちと、金多の叫びが重なったのだった。
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