意地悪な質問
「――ご主人様。少し、意地悪な質問をさせてください」
「今日のわたし、なのですが……何か、気付いたことはありますか?」
ある日のこと。
俺がリビングでくつろいでいると、住み込みの専属メイドこと
「ん……?」
椅子の近くに立つ彼女に視線を向けつつ、思考を巡らせる――今日は休日。姫路は珍しく朝から出掛けていて、少し前に帰ってきたばかりだ。さらりと揺れる銀色の髪、ひらひら多めのメイド服。
大まかにはいつも通りだが、確かに違う部分がある。
「髪、切ったのか」
「長さはそんなに変わらないけど、雰囲気がすっきりしたっていうか、ちょっと大人っぽくなったっていうか……」
「そっちも似合ってるな」
「……ふふっ」
指先で耳周りの髪を掻き上げながら、少しくすぐったそうに口元を緩める姫路。
澄んだ碧の瞳が至近距離から俺を見る。
「正解です、ご主人様」
「ただ――」
「いや、まだだ」
「目元にもラインか何か引いてる……よな? 名前が分からないけど、普段よりくっきりしてるように見える」
「っていうか、あれだ。要は、しっかりメイクしてるってことなのか」
「香水も付けてるような……」
「! ……」
ぱちくり、と驚いたように目を瞬かせる姫路。
「凄いです、ご主人様。……全て、完璧に正解です」
次いで涼やかな声が耳朶を打つ。
「実は、
「もちろん普段も最低限は整えていますが、今日は一段と気合いの入った仕上がりになっているのです」
「なるほど、そういう……」
「はい。……それにしても、よく分かりましたね?」
「美容院に行ったのも事実なので、引っ掛け問題のつもりだったのですが」
「そりゃまあ、毎日会ってるし」
「引っ掛け問題にしては簡単だったかな」
「ふむ……そうでしたか」
こく、と小さく頷く姫路。
そうして彼女は、自身の口元に――淡い桜色の口紅で彩られた唇の辺りに指先を添えると、ほんの少しだけ意地悪な顔になって言う。
「では、そんなご主人様に追加の問題です」
「今のわたしと、普段のわたし――どちらの方が、可愛いですか?」
「どっちも、は
「えっ」
さらり、と目の前で揺れる白銀の髪に視線を奪われながら露骨に言葉に詰まる俺。
何というか――それは、さすがに難問すぎる。
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