ライアー・ライアー舞台裏SS

久追遥希@MF文庫J『ライアー・ライアー

ライアー・ライアー後日譚(微ネタバレあり)

どこにでもある新たな日常(C103きのこのみ無料配布SS)

【イラスト/konomi先生】

https://kakuyomu.jp/users/haruha/news/16818023211767152839


「お待たせしましたっ! 萌え萌えクマさんオムライスセット、ハルくんたちにはサービスも!」


 弾ける笑顔のメイド少女・衣織いおりが、ふわふわオムライスにお手製の旗を立ててくれる。


 七番区の駅前にあるメイド喫茶――彼女がこの店でアルバイトを始めたのは、つい数日前のことらしい。しきりに心配する越智おちに誘われ、こうして一緒に来店してみることになった。


「新人にしてはよくやってるんじゃないか? ちょっとは安心できただろ、越智」


「そうだね。……でも、制服のスカートが短すぎないかな? あれじゃ衣織がさらわれちゃうよ」


 腕組みをしながら微かに眉を顰める、意外にも過保護な越智春虎はるとら


「うーん……彼女のいる緋呂斗ひろとから見ると普通なのかな」


「え? いや、俺は――」と否定しようとした、その時。


「――失礼します、越智様」


 テーブルの横合いから唐突に人影が現れた。慣れ親しんだ涼やかな声。見ればそこには、可愛らしい私服姿の姫路白雪ひめじしらゆき彩園寺更紗さいおんじさらさが、二人並んで立っている。


「……へ? な、何で、二人がここに?」


「可愛いメイドさんに鼻の下を伸ばしてるあんたを止めに来ただけ」と頬を膨らませる彩園寺。


「そんなことより――今、気になる発言があったわ!」


「はい。わたしたちはまだ清らかな関係ですが……越智様の目から見て、ご主人様の〝彼女〟というのは一体どちらのことなのでしょうか?」


 メイド喫茶の片隅で、目に見えない迫力を醸し出しながら詰め寄ってくる二人の少女。


 からかうような視線を向けてくる越智の対面で、俺は降参のために両手を上げるのだった――。

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