浅宮七瀬

着せ替え生徒会長

「――悪くないかも!」

「やっぱりウチの目に間違いはない、ってカンジ」

「んじゃ進司しんじ、次はこれ! こっちの服も試してみて!」


「……七瀬ななせ


「ほら、早く~! まだまだお試し候補がいっぱいあるんだから」

「夜ご飯遅くなっちゃうじゃん!」


「…………」

「横暴なのか単なる馬鹿なのか判断に困る要求だな、七瀬」

「僕の私服を選ぶと宣言して試着室ここへ連れ込んでから数十分あまり……」

「遅くなるとしたら、それは100%七瀬が原因だと思うが?」


「イギあり!」

「そもそも進司が制服以外の服をゼンゼン持ってないからウチが頑張って選んであげてるんじゃん」

「つまり、悪いのはカンペキに進司の方だから!」


「やれやれ……」

「どうやら〝横暴〟の方が正解だったようだ」

「言っているだろう? 僕は服に興味がない。着られれば何でもいい」

「温度の調節機能があればさらに言うことがないな」


「テキトーすぎだし!」

「進司、背も高いし割とスタイルだっていいんだから、ちゃんとした服着ればめっちゃカッコよく――じゃ、なくて!」

「えと、えっと……」

「う、ウチのカレシなんだから、まともな格好してほしいんですケド!」


「……ふむ、そうか」

「つまり僕は、着飾らなければ七瀬に見合う男ではない――と」


「うっ」


「残念だ、そこまで低く見られていたとは」

「思わず泣いてしまいそうだな」


「うにゃ」


「これまで七瀬に〝ダサい格好の男と仕方なく付き合ってやってる〟と憐れまれていたのかと思うと、この世の全てを呪いたくなって――」


「――うぅううう、もう!」

「い、イジめないでよ、バカ進司!」

「理由とかないから!」

「ただ……ウチの大事な人がカッコよくなったら、もっと嬉しいってだけ」


「…………」

「七瀬」

「そういうことを外で言うな。……反応に、困る」


「え?」

「何、進司? 耳のとこ赤くなってるけど……」

「もしかして、今ので照れ――はぷっ!」


「調子に乗るな」

「……それと、さっさと次の服を持ってこい」

「七瀬の希望通り、今日だけは着せ替え人形になってやる」

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