暖房の代わりに?
『お兄ちゃん、SOS!』
――
さっそく折り返しの電話で簡単に事情を聞き、現場(普段から椎名が入り浸っている
そうして、俺は。
「い~~~~や~~~~~だ~~~~~~~!」
「お布団の中から出るなんておねーさんには絶対ムリ! このまま春が来るまで待つのが
「ヒロきゅんに襲われたって毛布だけは死守するんだからぁ!」
「……いや、いやいやいや」
何枚もの毛布やタオルケットで即席の要塞を構築し、その中に埋もれたジャージ姿の女性――加賀谷さんの前で、すっかり途方に暮れていた。
「ったく……SOSが出るのも納得だな」
「いつからこうなんだ、椎名?」
「う~んと……昨日の朝とか?」
「え」
「……飯とか、ちゃんと食ってるか?」
「えっへん、大丈夫だよお兄ちゃん! お姉ちゃんがい~っぱい出前頼んでくれるから」
「デザートも食べ放題だもん。……じゅるり、えへへぇ」
使い魔(ケルベロスのぬいぐるみ)を抱きながらふにゃりと頬を緩ませるゴスロリ中学生・椎名
「でも、お姉ちゃんがずっと遊んでくれないから……ちょっと、寂しくて」
「しゅん……」
「う!」
「ち、違うんだよん、ツムツム~! お布団の中でなら何時間でもゲームしてあげるけど、暖房が壊れちゃってるから……おねーさんに外の世界は寒すぎるの!」
「あー……なるほど、それで」
やけに寒いと思ったが、空調が切れていたらしい。だとしたらベッドの中に籠もっているのも分からないではない……が、それにも限度はある。
(とはいえ、強引に引っ張り出すのもなぁ……)
常にジャージ姿で髪がボサボサの残念美人こと加賀谷さん。ほとんど家族に近い感覚だが、とはいえ容姿だけなら抜群に綺麗なお姉さんなのだ。ベッドに乗り込んで身体に触れるのは色々と良くない。
「こういうのはどうですか、加賀谷さん」
だから俺は、物理ではなく言葉で攻めることにした。
「たとえば……暖房が利かない代わりに、めちゃくちゃ厚着して過ごすとか」
「
「おねーさんなんかあっという間に凍えちゃうんだから」
「じゃあ、布団を羽織ったまま過ごすとか」
「うぅ……もう一歩! それだと前が寒いじゃんか!」
「まあ、確かに……」
「それなら、ずっと椎名に抱き着いておくとか?」
「!」
「そ、そ……それだ~~~~!!!!!」
「ふにゃむ!?」
瞬間。
大量の布団を羽織ったままベッドから出た加賀谷さんが、近くにいた椎名に後ろからがばっと抱き着いた。いわゆる
「わ、わわ……お姉ちゃん?」
「むふ~……」
「ツムツム、お布団より温かいかも……これなら一緒にゲームできるねん」
「ほんと!?」
「やった~! お姉ちゃん、大好き!!」
加賀谷さんと一体化(?)した状態でニコニコと上機嫌になる椎名。不思議な光景ではあるが……まあ、二人が良いなら良しとしよう。
――と、その時。
「……にひひ」
不意に加賀谷さんが悪戯っぽい笑みを浮かべた。両手でぷにぷにと椎名の頬を
「ヒロきゅんヒロきゅん、寒いでしょ」
「おねーさんと一緒にツムツムのこと抱っこしてみる?」
「へ?」
「や、それは……ほら、椎名が」
「ほえ?」
「お兄ちゃんなら全然いいよ? ……はい、どーぞ!」
「っ!?」
相棒のロイドを傍らのテーブルに乗せ、両手をこちらへ伸ばしてくる椎名。……加賀谷さんに抱き締められているためか微かに上気した頬、一生懸命に手入れされた可愛らしいゴスロリドレス。
確かに温かいのかもしれないが。
「お、俺は……えっと、その」
「……ちょっと、今日は遠慮しておこうかな」
さすがに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます