ゲーム攻略の助っ人
「お兄ちゃん、お兄ちゃん! ねぇねぇ、ゲームの攻略手伝って!」
とある休日の昼下がり。
さらさらの黒髪を揺らしながら抱き着かんばかりの勢いで飛びついてきたのはゴスロリドレスの中学生、
漆黒と深紅のオッドアイがせがむように俺を見上げている。
「ああ、そりゃもちろん」
俺と椎名はいわゆるゲーム仲間だ。パーティーゲームからRPG、アクション、音ゲーでも何でも、暇さえあれば一緒にプレイしている。
故に、断る理由など
「で、今日は何やるんだ?」
「時間もあるし、がっつりストーリーのあるゲームとかでも大丈夫だぞ」
「ほんと!? ほんと!?」
ぱぁっと表情を輝かせる椎名。
「じゃあ、今日は――リ○グフィットアドベンチャーがやりたい!」
「……え」
基本的な構造はアクションRPGの類なのだが、敵を倒す際にただコマンドを選択するのではなく、走ったり腹筋をしたりスクワッドをしたり、はたまたリング状のコントローラーを押し込んだり引っ張ったり……と、なかなかに画期的なシステムを備えている。
……だからこそ。
「ぅにゃあ~」
プレイ開始から約1時間後。
俺と椎名は、ストレッチ用のマットを敷いたシアタールームの床に満身創痍で寝転がっていた。
「お兄ちゃん……もう、動けないよ……」
珍しく動きやすい格好に着替えた椎名は虫の息だ。ぐてん、と俺の胸元に後頭部を預けたまま「ぐむむむ……」とリングを引っ張っているものの、もはや全く力が入っていない。
「……だな、俺もだ」
噂には聞いていたが、ここまで消耗するゲームだとは思わなかった。
「多分、1日で完全クリアを目指すようなゲームじゃないんだろうな……」
「〝フィットネスソフト〟だし」
「うん……ここが魔界だったら、わたしの体力も無限大だからあっという間にクリアなんだけど」
「……
「確かに」
俺も椎名も(椎名は特に)インドア派だ、相性がいいとはとても言えない。
「誰か、運動ができる人が助っ人に入ってくれればいいんだけど――」
そんな言葉を零した、その時だった。
「ツムツム~、ヒロきゅん~」
「にひひ、
「一緒に食べ……って、何してるの?」
シアタールーム内の惨状を目撃してメガネの奥の瞳をぱちくりと瞬かせたのは、他でもない加賀谷さんだ。
図抜けた美人だがいつだって髪はぼさぼさで、生活リズムがめちゃくちゃで、そして何より――ジャージを着ている。
「わ!」
椎名がぴょんと飛び起きた。
「お姉ちゃん、もしかしてやる気満々!? すごいすごい、ヒーローみたい!!」
「ぅえ!?」
「ありがとうございます、加賀谷さん……! ちょうど人手が欲しかったところだったので」
「え、え!? だから何の話!?」
立て続けに
彼女はちらっと画面を見て、リング状のコントローラーを見て、汗だくになった俺たちの姿を見て、全てを悟ったのかぎゅっと目を
「い~や~だ~~~~~!!!」
「おねーさん、運動とかぜ~ったい無理なんだからぁ!!!」
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