最強の魔力!

『――もしもし、暇かな篠原しのはら?』

『くくっ、まあどうせ暇だろうと踏んでいるからこうして電話しているんだけど』


一ノ瀬いちのせ学長?」

「そりゃ忙しいってほどでもないですけど……どうしたんですか、急に」

「イベント中でもないのに」


『いやなに』

『元気にしているかな、と思ってね』

『くくっ、私と君の仲だろう? こまめに気遣って当然じゃないか』


「…………」

「俺、学長から気遣いなんか感じたことないですけど」


『失礼な』

『私は英明えいめいの学長として、いつ何時でも君のサポートをしようと考えているよ?』

『何しろ大事な大事な生徒はいかだからね』


「何となくですけど、変換がおかしかったような……」


『くくっ、気のせいだろう』

『ところで……篠原、これはあくまで世間話なんだけど』

『例の中学生――椎名紬しいなつむぎはどうしているかな?』


「え?」

「椎名……ですか?」


『ああ』

『さっきも言った通り、単なる雑談だけどね』

『しばらく面倒を見ていたから情が移った――というわけでは断じてない』


「……あー、なるほど」

「椎名なら今、ちょうど近くにいますけど」


『――……ほう?』

『篠原、今は何時だ?』


「えっと、午後の九時……ですね」


『ああそうだ』

『こんな時間まで年下の女子をはべらせているとは不埒ふらちなやつめ』

『くくっ……通報と個人的処罰ならどちらがお好みだ、篠原?』


「い、いやいやいやいや!」

「ただゲームしてただけですって」

「それに、もう寝ちゃってますし」


『なるほど』

『かよわい女子中学生が、すぐ近くで寝ている――と』


「う……」

「言っておきますけど、変な意味じゃないですからね」


『くくっ、どうだろうな。何しろ〝嘘〟は君の得意技だ』

『手を出していないという証拠を見せて――いや、聞かせてみろ』


「はぁ」

「えっと、じゃあ……寝息でも」


『……んむ……』

『すぅ……くぅ……にゃむ、ねむ』

『おにいちゃん、まだあそびたい……ねむくないから、もうちょっと……』

『ふぁわ……~~~』


『…………』


「――これで満足ですか、学長?」

「っていうか、そんなに気になるなら見に来たらいいじゃないですか」


『…………』


「……学長?」


『はぁああああああ~……』

『思わず取り乱してしまったが……一言だけ、本音を言おう』

『その子、ちょっと可愛すぎないか?』


「……えっと、まあ」

「そこについては、全く異論ありません」

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