小悪魔×メイドのポッキーゲーム!
――ある日のことです。
普段ならばご主人様を挟む形で座っているわたしたちですが、今の秋月様はわたしの左隣にいらっしゃいます。
と。
「~~~♪」
そんな秋月様がふと鼻歌交じりに鞄を
「……?」
「おやつですか、秋月様」
「うん、そうだよ白雪ちゃん♪」
「ポッキーの日だから購買にいっぱい並んでて、つい買ってきちゃった♡」
「ポッキーの日……なるほど、11月11日ですか」
得心します。
言われてみれば、今日の日付は11月11日。1が4つ並ぶことからポッキーの日、あるいはポッキー&プリッツの日と呼ばれています。
「えへへ♪」
ゆるふわのツインテールを揺らした秋月様はいかにも嬉しそうです。
「せっかくだし、あとで
「……ポッキーゲーム、ですか」
聞いたことがあります。
2人で――主に異性同士で1本のポッキーを両側から食べ進めていくという、ゲームというにはゲーム性のよく分からないゲーム。自然と顔は近付き、下手を打てばキスに至ってしまうことでしょう。
「相変わらず
「えぇ~、何のこと?」
「乃愛ちゃん、清楚で純粋だから分かんなぁい♡」
ポッキーの箱をすべすべの頬にぷにっと押し当て、あざとすぎる笑顔で上目遣いにこちらを見つめてくる秋月様。
「む……」
それを〝挑発〟と解釈したわたしは、反撃に出ることにしました。秋月様の手からポッキーの箱を没収し、中身を空け、手袋を取った指先でその中の1本を取り出します。
そして。
「では、清楚で純粋な秋月様に分からせて差し上げます」
「――口を開けてください、秋月様」
「え。……ん、むぐっ!?」
「ポッキーゲームを始めましょう」
「……はむ」
そっと髪を掻き上げて、秋月様とは反対側の端を口に含みます。
途端、口の中に広がるのはサラダ味特有のしょっぱさと暴力的な旨味。一般的にはパキッと折って食べるものかと思いますが、残念ながらこれはポッキーゲーム。もむもむと、擬音化するのがやや難しい所作で少しずつ食べ進めていきます。
「ん、ぅ…………」
対する秋月様は突然のゲーム開始に慌てていたようですが、やがてほんのりと顔を赤らめながら同じく口を動かし始めました。
……しばし、無言の時間が流れます。
当たり前のことですが。現在、わたしと秋月様の顔は1本のポッキーよりも近い距離感にあります。わたしの手は秋月様の肩に置かれていて、反対に、秋月様の手はわたしの腰を控えめに支えてくださっています。
「~~~っ」
真っ赤になって照れる秋月様。しかし英明の小悪魔としての意地でしょうか、ゲームを降りるような真似はしてくれそうにありません。
(……待ってください。このままでは、本当にキスしてしまうのでは?)
思わぬ接近にわたしの方もドキドキとし始めます。
――と、その時でした。
「悪い、遅れた。…………って、え」
「「!?」」
ガチャリと生徒会室のドアを開き、現れたのはご主人様でした。ご主人様はわたしたち――勘違いですが体勢としては今にも情事に
「……えっと、お邪魔しました」
「待ってください、ご主人様!」
「ち、ちち、違うよ緋呂斗くんっ!?」
慌てふためいて立ち上がり、ご主人様を追い掛けるわたしと秋月様――。
その瞬間にポッキーは折れてしまったので、勝負としては
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