45.お見合い騒動・2



※軽めの子の場合


【今日の勤務】

 淫魔聖女リリィ・クラッシャーマン


───────


 どうも、俺は東翔太朗。

 両親の仇を討ち、ようやく穏やかな生活を取り戻した二十九歳の自称イケメンです。

 さっそくですがウチの職場の空気が妙です。

 

「どうぞ、東支部長」

「う、うん。ありがとう、白百合さん」

「いえ、なにかお手伝いすることはありますか? ボクにどしどし言ってくださいね」


 なんというか、言葉面とは裏腹に俺の様子をうかがうような視線だ。

 いつもとはあからさまに雰囲気が違う。


「と、ところで! 風の噂で聞いたんですが……お、お見合いをするとか」

「え? もう知られてるの?」


 誰にも話してなかったのに。

 白百合さんは普段とは違うおどおどとした態度で俺の返答を待っている。


「まあ、一応ね。と言っても、常務から押し付けられて、顔合わせだけでもってヤツ。基本的には断るつもりだよ」


 だって相手、玖麗さんだし。

 キレイな子だと思うし、親しくなれば性格だって味がある。

 だけど俺自身の結婚願望が薄いので、今回の件も一度会ってお流れだろう。


「そ、そうなんです……か?」

「うん。相手もいい子そうなんだけど、今は仕事が楽しいしね」


 ほっ、と白百合さんが安堵の息を吐く。

 一転、眩いばかりの笑顔を見せてくれた。


「ですよね! よかった、実は支部長が結婚して、働きやすい部署に異動まであるんじゃ、なんて考えちゃいまして」

「そんなことないって。なにせ、俺は淫魔聖女リリィをどんどん売り出していかないといけない。いまさら途中で投げ出して、他の人に任せるなんてしたくないなぁ」

「うんうん! ボクも、いきなり新しい支部長が……なんて嫌ですからねっ」


 どうやら機嫌が直ったようだ。

 そこで横から岩本くんチャチャを入れる。


「えー、いいんスか支部長? もういい歳なのに。この機会逃したら、一生独身ってのもあるかも」

「怖いこと言わないでくれよ、岩本くん」

「そうですよ、余計なこと言わないでください」


 にやにやと、完全にからかいモードだった。

 なぜか白百合さんは怒ってるし。

 

「まじめに、結婚願望とかないんスか?」

「あるっちゃあるよ。ただ、今すぐってわけでも」

「そーやって後回しにしてると、いざ周りを見たらみーんな結婚して、みたいなことになるっスよ」


 やめて、意外とダメージのデカい忠告。

 けれど岩本くんはどんどん追撃をしてくる。


「相手の子がよさそうなら、まずはお付き合いから……とかでもいいんじゃないスかね?」

「ちょ、岩本さん黙っててください! ぼ、ボクはやっぱり、そういうのはじっくり考えるべきじゃないかなーって思います。そんなに慌てて決めてもいいことないですよね、うん!」


 白百合さんがぐぐぐっ、と距離を詰めてくる。 

 それを見て「わー、アヤノちゃんこわーい」と岩本くんが囃し立てていた。


「言っても、本部の噂に“結婚できない男”がプラスされたら肩身が狭いでしょうに」

「だからってっ」

「かわいそうな支部長! せっかくのチャンスがアヤノちゃんの手によって潰されようとしてるっ」

「あー、もう!」


 そうして興奮した白百合さんは頭に血を昇らせて岩本くんを睨み付けた。


「そうなったらボクがっ!」

「はいはい、ケンカしないの。どっちにしろ俺にその気がないんだから、ちょっとお話してそれでおしまいだよ」


 イメージでは料亭でご飯食べたりするんだけど、実際にはお見合いでの食事はNGらしい。

 あんまり楽しみがなくて残念だ。


「俺のことはいいから、岩本くんこそどうなの? 例の看板娘ちゃんと」

「ぐっ、しまった。反撃が」


 そちらの方は今一つ進展していないようで、岩本くんは苦い顔だ。

 イイ感じに話題も逸れたので俺も一安心。

 白百合さんもちょっとは落ち着いたようで、ゆっくり深呼吸をしていた。

 俺のお見合いなんてその程度の、軽い雑談のネタの一つなのである。









 白百合綾乃は大きく息を吐いた。


(そうなったらボクが貰ってあげますよ! だからお見合いなんていらないですって!)


 ……やばかった。

 タイミングによっては、とんでもないことを口走っていた。

 そうならずに安心したような、そうでもないような。非常に複雑な心境だった。




 ◆




※重めの子の場合

【別の日の勤務】

改造人間ガシンギ・超星剛神アステレグルス(夜勤明け)・聖光神姫リヴィエール(なぜかいる)


───────




 三岳玖麗みたけ・くららは異災所T市支部に向かう道の途中、ぼんやりと東翔太朗について考えていた。

 まず前提条件として、別に彼に恋愛感情を抱いている訳ではない。

 そこそこ仲は良いし、上司としてはアリ寄りのアリ。なんなら戦闘レスキュアー部隊に来て部隊管理もしてくれたらいいのに、程度には好意も信頼もある。

 しかしあくまでも感情はいい感じの友達上司止まりがせいぜいだろう。


 だいたいからして初めの印象がよくなかった。

 異災機構本部、ヒーロー派の影響が色濃い戦闘レスキュアー部隊に所属する玖麗にとって、東支部長は最悪というよりも最底辺だった。

 戦わない、部下に媚びへつらう腰抜け。

 それが伯父である常務に目をかけられているのだから不満は当然だ。


 もっともそれはすぐに覆される。

 実際にはMDを虫けら扱いし、単騎で葬る規格外の戦力。ただ色々事情があるらしく、伯父は詳しく教えてくれなかったものだから、キレたらヤバい化物改造人間としか認識できなかった。

 初対面の時に改造人間ガシンギのことバカにしちゃったし、なんやかんやでMD討伐の功績奪ったし。

 あれ? これ死亡直行コース? バリヤバじゃね? 的な?


 内心ビビり散らかしていたが、T市支部に出入りするようになってからは和らいだ。

 直に接する東支部長は、甘いものも辛いものも好きな穏やかな性格であり、レスキュアーのために自ら営業をかけてタレント仕事を取ってくるいい上司でもあった。

ゆるゆるな性格はクララちゃん的にも好ポイント。

 部下にはよく慕われ、玖麗ともけっこう相性はよく、総合すれば有能かつ優しくおおらかなキレたらヤバい化物改造人間だった。


 それも部下を想ってこそ。そう考えると悪い人物ではない。

 単なる出向の玖麗にさえあれだけ情を注げるなら、パートナーになったらそりゃすごいんだろうな、とも思う

 身長や顔もそこそこイイ。仕事はできるし地位も収入も将来性も充分。

 マジメな話、優良物件であるのは間違いない。少なくとも、カレシにしたら自慢できる。

 部隊の女子連中にマウントとりたいマウント。


「ていうかー、常務の言い方からすると、東支部長さんもアタシのこと美女だって思ってるんだよねー」


 まあ、嬉しくなくはない。

 お見合いをするとなっても嫌悪感もない。

 意外とそういう場を設けたらトントン拍子に行くのでは……と、その先にある光景をふと想像した。 







【クララちゃんの脳内】


 教会で結婚式!

 白いタキシードな東支部長さんと、ウェディングドレスなアタシ!

 花の咲き乱れる場所で、みんなに祝福されながらぎゅーって抱きしめ合う!


 東支部長さん「まさか、俺が君とこんな関係になるなんて思わなかったな」


 超絶イケてるクララちゃん「そりゃアタシもだってー」


 東旦那さん(予定)「クララ、大切にするよ」


 クララ妻さん(予定)「ほんと? 幸せにしてくれる?」


 そうして二人は幸せなキスをしてしゅーりょ─────







 ─────ぴちゃん、と水の音が聞こえた。




 生温い風が肌を撫でるのに、ぞくりとするくらい空気が冷たい。

 滴る水が床を叩く。


 ぴちゃん、ぴちゃん。


 その音は少しずつ大きくなっていく。

 いや、違う。“近付いている”のだ。

 まるで足音のようだと玖麗は思う。

 逃げなきゃ。だけど、何故か足が動かない。


 ぴちゃん、ぴちゃん。


 水だ。

 粘度の高い水が足を絡めとって固定している。

 その間にも足音みずが近付く。


 ぴちゃん、ぴちゃん。


 どくりと心臓が鳴る。

 背後に、気配が。ぴちゃん。早く逃げないと。ぴちゃん、ぴちゃん。

 見るなの禁というものがある。

 洋の東西、今昔を問わず説話において「見てはいけないもの」を見た者は、恐ろしい惨劇に見舞われる。ぴちゃん。

 だから振り返ってはいけない。

 どれだけ水の音が気になっても、ぴちゃん、絶対にぴちゃん見てはいけないのだ。

 そうと分かっているのに。

 水が、静かに押し寄せて。ぴちゃん、ぴちゃんぴちゃん。





「ねえ、何を、してるの?」





 そっと伸ばされたが、玖麗の喉を捉えた。


─────




「なんか妄想なのにバリヤバいのキタぁぁぁぁぁっ⁉」


 耐えられなかった玖麗ちゃんは、朝の道端でものっそい悲鳴を上げた。


「氷川のひーちゃんえずか怖い!? ヒロインからホラーに転職しとる!? え、なんやこれ!?」


 いや、ひーちゃんが東支部長好きなのは知ってるけど。

 いくらなんでもあんなヤンデレな真似はしないはず。


「……しない、よね? おちつけ、落ち着けアタシ。もうちょっとおだやかーなイマジネーションを……」







【クララちゃんの脳内】


 柔らかい朝の日差しが差し込む部屋。

 玖麗は眩しさにふと目を覚ました。


「クララ、起きた?」


 隣には、翔太朗の姿がある。

 お互いに一糸まとわぬ姿。ああ、そういう関係になったんだなぁ、と今さらながらに恥ずかしくなる。

 よく鍛えられた彼の胸板にそっと頭を預ける。伝わる体温と鼓動が心地良い。


「ん……翔太朗さん」


 どちらからともなく口付けを交わす。

 深く、舌を絡めあう。すると彼はやんわりと玖麗の鍛えてはいるが豊かなカラダをまさぐった。


「うわぁ、えっちー。昨夜も乱暴だったし」

「仕方ないだろ。君が、魅力的すぎるのがいけない」

「もう、朝から盛っちゃってさ」


 でも悪い気はしない。

 力いっぱい求められるのは自尊心が満たされるし、ちょっとくらい激しい方が好きみたいだ。

 玖麗も翔太朗のカラダに触れようとして、





「まだまだ、彼を任せるにはテクニックが足りませんね」


 すっごい冷静な顔した高遠副支部長が当たり前のように部屋にいた。


「は、は? え、なんで?」

「翔お兄ちゃんと結婚するということは、小姑が付いてくるのも当然かと思いますが」


 いや、おかしいから。

 新婚家庭に居座る妹とかアリなの?

 

「この人のカラダを良く知っていて、面倒を見てあげられるのは私だと前に言ったでしょう? 貴女も、妻となる身なら学んでもらわないと困ります」

「ど、どゆこと?」

「私が手ほどきしてあげる、という話です」


 高遠副支部長がそんなことを言い出す。



 そして─────ぴちゃん、と水の音が聞こえた。


 ─────




「水音二度目っ!? そしてアタシはなんで当たり前のようにベッドシーン!?」


 色んな事をすっ飛ばして濡れ場を想像とかなにをやっているのか。

 そして今は朝、出社の途中なのでそこそこ人目はあります。いきなりギャル風のキレイな女性が叫び声を上げるので周囲はけっこう引いてました。


「てかいくら義妹でも夫婦の寝室には来ないでしょどう考えても!? ……こない、よね? さすがの高遠副支部長も、そんな手ほどきとかは……」


 氷川のひーちゃんと高遠良子は東支部長ガチ勢の二大巨頭。 

 結婚なんて話になったら、もしかすると本当に邪魔をしてくるかもしれない。

 いや、その前段階。お見合いさえも潰そうとしてくるやも……。


「……ない、よね? 一応は会社命令なわけだし。相手がアタシだってバレたとしても、攻撃とかは流石に、ねぇ?」


 なんだかんだいい子達だし、嫉妬心から暴走するとかはないはずだ。

 玖麗はそう自分に言い聞かせて、妄想をなかったことにして異災所に向かった。




 ◆




 玖麗が出勤した時、東支部長はいなかった。

 ちょっとホッとした。

 けれどすぐにカラダを強張らせる。

 だって事務所内だというのにレオン・マルティネスが獅子星転身していた。


「フォームチェンジ:リブラ」


 超星剛神アステレグルスは機構でも五指に入る実力者だ。

 特筆すべきは十二の正座になぞらえたフォームチェンジ。これにより遠近距離を問わず、空中戦や水中戦であっても難なくこなし、いかなる敵であっても討ち倒す。

 リブラ・フォームは天秤星。

 戦闘における武器は腕に装着された二つの鉤爪「ズベン・エル・ゲヌビ」及び「ズベン・エス・カマリ」。

 しかしその本領はリブラの有する特殊能力……“秤”にこそある。


「“魂の天秤”」


 アステレグルスの呟きにより、彼の手に黄金の天秤が出現する。

 それを出勤したばかりの玖麗は目にしてしまった。

 というか事務所内に全身甲冑の星の戦士がいるの、すっごい違和感。


「あ、あのー。マルさん?」

「クララさんか。おはよう」

「おっはっす。夜勤明けだよね? 言ったに何をなされてるのかなーとか思っちゃったりなんかしちゃったり」


 若干混乱気味の玖麗の質問に、アステレグルスは平然と答える。


「ああ、どうやら支部長にお見合い話がきているらしいんだ」

「へ、へぇ? そうなん?」

「だが、そこいらの女に渡すわけにはいかない。ここは俺が、支部長に相応しいかを入念にチェックする必要がある。なら使う機会もあるだろうと、久しぶりにリブラ・フォームに変身してみた」


 あんたの立ち位置どこ?

 ツッコみたいけどツッコめないクララちゃん。

 近くでうんうん頷いている氷川玲の姿もある。


「あれ? ひーちゃん学校は?」

「……? 支部長のお見合い話と学校。優先順位がありますから」


 アタシの知ってる優先順位と違う、なんてもちろん言わなかった。


「てか、その、お見合い相手のチェックになぜに変身を?」

「リブラ・フォームは戦闘力も高いが、一番の特徴はこの魂を測る天秤だ。変則的にだが、対象一人に“俺の問いに嘘偽りなく答えること”を強要できる。嘘を吐けば、秤は傾く。そして、完全に傾いた時……」

「傾いた時?」


 彼は無言だった。


(いや傾いたらどうなんのおおおおおおおおおおおお!?)


 それあれか?

 お見合い相手の身辺調査を天秤星の力を使ってやるってこと?

 妄想ですらイメージ出来てなかった事態になってるんですけど?


「さすがマルティネスさん」と玲が尊敬の視線を向けている。

「東支部長をして最強と言わしめるその力、伊達ではありませんね」と高遠副支部長も称賛する。

 ねえ、いいの? それでいいの管理職とアイドル魔法少女?


「す、すっごいねー、星の力って! でもお見合い相手にそれは、か、かわいそうじゃね? や、かばうわけじゃないけどね!?」

「何を言っている? 支部長は頼られると弱いタイプだ。変な女性に引っかからないようフォローするのも部下兼友達の役目。俺は将来的に支部長の家でお世話になる予定だしな。魂の天秤なら、いかなる嘘も看破できる。浮気とかネトラレとか、誤魔化しようがない」

「あ、はは……そっかぁ」


 そっちこそなに言ってんの?


「マルティネスさん、私はあなたの今後を考え二世帯住宅を建てる計画があります」

「今度詳しく聞かせてもらおうか、氷川さん。書類にまとめといてもらえるか?」

「分かりました」


 なんのアピールしてるの、ひーちゃん?

 軽く引くんだけど。


「その、みんな。お見合いに反対? てーか、潰そうとしてる?」


 お見合いっていうか、アタシのことを。

 おずおずと玖麗が聞くも、高遠副支部長から予想外の答えが返ってきた。


「いえ、そんなことはありませんよ」

「……そうなの?」


 レオンや玲もこくこくと同意して頷いている。

 

「というより、お見合いをなかったことにするのは簡単です。所属レスキュアーの誰かが、“支部長がお見合いして結婚するなんて寂しいです”と言えばそれだけで彼は取りやめます」

「あー」


 ものすごく簡単にその光景が想像できた。

 あのゆる甘支部長なら、その方法が一番効く。 


「ですが、それは彼の優しさや情につけこむ唾棄すべき行為。また、無理を通すことに慣れてしまえば、きっと私達は次第に傲慢となっていくでしょう。大切な誰かのためなら手段を選ばないと語る人はいる。けれど私は大切に想えばこそ、自らを律さねばならない時もあると考えます」


 この中で一番年上だけに副支部長はかなり冷静だった。

 それでもつまらなそうな横顔に、お見合いに対して賛成していないのが分かる。

 

「ですので、お見合い自体は止めません。それで翔お兄ちゃんとの繋がりが断たれるわけでもありませんし。結婚までいったとしても、仕方ないことではあるのでしょう」

「……そっか」


 それでも、東支部長が選ぶのならそれを受け入れるのが彼女のスタンス。

 似て非なるのが氷川玲だ。


「私も、お見合いの邪魔はしないかな。でも副支部長と理由は違って、今回の件はたぶん常務の命令だから。私が変なことをすると、部下の掌握もできないって評価になったら困るから。でも副支部長や綾乃、マルティネスさんならともかく見ず知らずの相手に渡すのはイヤ。お見合いも、ほんとはしてほしくない」


 そこは達観しているようでもまだ幼い独占欲が残っている。

 ところでマルさんがカウントされているのはどうして?


「だから、三岳常務の顔を潰さずに、結婚自体をなかったことにする。私に求められるのはそれ。最悪、既成事実という手段も辞さない。私なら出来る、いえすあいきゃん」


 逃げて、東支部長さん超逃げて。

 違うわ。これに逃げないといけないのアタシだわ。

 

「俺は、支部長を大切にしてくれて、俺を邪険にしない相手なら妻が誰でも問題ない。逆に言えば、誰であっても支部長を傷つけるなら手加減できなくなる」


 普通に怖い。

 手加減できないアステレグルスとかMDも逃げ出すと思う。

 

「その意味で、お見合い自体にはそもそも反対していないと言える。ネックなのは、相手の人間性だ。そこさえクリアできるなら、結婚はいいんじゃないか? ただ強いて言うなら中華料理が得意な氷川さん、カレー作りの上手い涼野さんならいいな、とは思う」

「マルティネスさん、私は付き合いが長いので翔お兄ちゃん好みのスイーツが作れますよ。当然あなた用も準備可能です」

「高遠副支部長も追加で」


 この彼は一番なに言ってんの?

 それに、物分かりいいように見せかけてちゃっかりいい位置確保しようとしてるじゃん高遠副支部長。

 あと、そろそろ変身解いてくれないでしょうか。


「総じて結局は彼が好きで、心配なんですよ私たち全員。変なところで抜けている人だから」


 そう言って照れ笑いをしたけど誤魔化されてやれない。

 よし、このお見合いなかったことにしよう。

 玖麗ちゃんは強くそう思った。


(言えねえ……このお見合い、俺のせいだって絶対言えねえ……)


 ついでに遠巻きに見ていたミツさんも強くそう思った。






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