第39話

審査会とライブ前日。

 何をしていても落ち着かない。もうすぐ日付が変わりそうだっていうのに、全く眠気が来ない。眠れるようにホットミルクを飲んでスマホを見ないようにしてるのに。そんな付け焼刃を、緊張が全て跳ねのけてしまう。明日は二つの意味で自分の命運が決まる日だ。できるなら一刻も早く眠りたいのだけれど……。

 ボーっと天井を眺めていると、スマホの通知音が聞こえてきた。どうせ眠れないならと手に取ってみると、送り主はリオさんだった。

『まだ起きてる?』

『起きてますよ』

『ちょっと話さないか? 公園で待ってる』

 このまま無駄に時間が過ぎるくらいならいいか。了承の返事を送り、俺は簡単に着替えを済ませる。

公園。彼女と出会ったばかりのころもこんなことがあったなぁ……。まぁ、あの時は偶然鉢合わせたんだけど。あれがきっかけでリオさんに憧れるようになったんだっけ。ほんの数か月前の出来事だっていうのに、とても懐かしく感じてしまう。それだけ濃密な毎日を過ごしてきたっていう証拠だろう。本当に感謝しかない。

思い出したらコーヒーが飲みたくなってきた。リオさんにも買っていこう。あのときに奢ってもらった分を返すいい機会だ。

忘れないように財布をポケットに入れて、俺はゆっくりと部屋を出た。

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