第33話
「んーっ」
次の日。目覚めた俺は、大きく体を伸ばす。ゆっくり休んだおかげか、体調はすっかり元通りとなっていた。幸いにも今日は祝日。作業をすることには変わりないが、少しばかりは負担が減るだろう。
ふとスマホを確認する。体調を崩してから全く見ていなかったから、急用なんかが入っている可能性は……ないか。そんなに知り合いが多いわけじゃないし。イカちゃんに連絡が入っていたということは、リオさん達も知っていることだろう。軽い気持ちでメッセージアプリを開くと、リオさんから連絡が入っていた。
「ドアノブ?」
内容は『ドアノブに荷物かけておいたから。取っといて』とだけ。俺の体調を気遣ってくれてのことだろうけど、正直これだけでは何かわからない。慌てて確認すると、そこには袋に入った栄養ドリンクと一枚の紙が入っていた。
荷物を片手に部屋へと戻る。栄養ドリンクを口にしながら、俺は紙に目を通す。それはリオさんからの手紙だった。
『タカへ
事情は店長から聞いた。頑張ってくれんのは嬉しいけど、それで体調を崩しちゃ元も子もないぞ。学校のこともあるんだ。急ぐな、とは言わないけど焦るな。もし厳しいようなら頼れる人間は周りにたくさんいる。まぁ、最近は結構頼ってきてくれてるけど……。
とにかく、体が資本なんだ。休める時間を作ることも仕事のうちだからな。
P.S.シンたち、事務所から許可取れたってさ。昨日連絡があった。宣伝活動もしてくれてるみたいだ。だから集客のこととかは気にしなくていい。音合わせも、あいつらとならそんなに時間を取らなくていい。だからギリギリまで煮詰めた最高のものをくれ。頼むぜ、相棒。 リオ』
なんというか、リオさんらしさが詰まっているような手紙だった。文中の言葉が全てリオさんの声で再生される。彼女のパワーを分けてもらっているようでさらに元気が湧いてきた。
「よし」
両の頬を叩く。
作詞も審査会も大詰め。焦らずに自分の実力を全て出し切る。こっから意識することはそれだけだ。鼓舞された勢いをそのままに、俺はパソコンを起動するのだった。
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